第6章 龍の牙
第6章 龍の牙
第1話 重量級
ここの恒星は重量級だった。
太陽の1,000倍の質量があった。
ブラックホールだった。
ここの惑星に住む人々は、攻撃的だった。
文明は、地球の20世紀後半くらいだ。
ここにも悪意の欠片の「贈り物」があった。
斥力発生装置だった。
ここの住人達は、これを使ってブラックホール内を移動できた。
攻撃兵器は、通常物質の核弾頭を搭載したミサイル程度だった。
やっかいなのは、斥力発生装置だった。
これを使って、イズミをブラックホール内へと導こうとする。
これを使って、イズミを近づけないようにする。
今のイズミは「太陽の10の4乗倍」の質量を持つブラックホールからも脱出できる。
TBD9(改)は性能アップしている。
空間を切り裂くように移動できる。
問題は、ここの惑星に近付けない事だ。
サムは惑星へリーを伴ってテレポートした。
リーは転送者だ。
斥力発生装置を1機、奪ってイズミに転送した。
これをムーに転送した。
イズミは一旦退却した。
第2話 斥力発生装置
ムーの科学者は頭を抱えた。
転送されてきた斥力発生装置を分析できないのだ。
斥力を発生させるメカニズムが解らない。
重力子も斥力子もレプトンの10のマイナス3乗倍だ。
バリオン系素粒子とレプトン系素粒子とは別の系の素粒子だ。
『余談になる。
「光子がレプトン系素粒子なのか?解っていない。」
解析がやっかいだ』
人類の目覚めたものの中に彼はいた。
彼は、他の事には大きな能力を発揮しなかった。
だが、重力や斥力の問題になると能弁になった。
彼が仮説を立てた。
「重力子も斥力子も元は同じ構造で、符号が違うだけなのだ」
「いわゆる反物質なのだ」
符号反転装置が開発された。
符号は波の周期で現わせた。
波のバンド幅を一致させた。
そして、周期の半分を位相させた時、符号は反転した。
重力子と斥力子を「スペラン系素粒子」と呼ぶ事にした。
結果として解った事があった。
それは、スペラン系素粒子の重力荷は実数で現わされる事だった。
電子や陽子の電荷が整数なのとは違っていた。
斥力発生装置が分析できない理由が解った。
ここには、ブラックホールがないのだ。
ここでは、ブラックホールに対する実験ができない。
イズミに託すしかなかった。
第3話 実験
イズミに符号反転装置が転送されてきた。
イズミはそれを使った。
斥力発生装置から発生される斥力を重力に符号転換させようとした。
その時、符号反転装置は破裂した。
イズミは、また退却した。
ムーでは、科学者が頭を悩ませた。
また彼が仮説を立てた。
稀にこのような覚醒者が現れる。
1つの事だけに異常な能力を発揮するのだ。
原因は解明できていなかった。
その仮説は、
「ブラックホールの発生させる重力=斥力発生装置のバンド幅が異常に高い」
だった。
科学者は符号反転装置を改良した。
前回製作したもののバンド幅を1万倍とした。
イズミは、また退却した。
更にその1億倍とした。
これで1回目のものの1兆倍となった。
イズミは、重力に符号転換できた。
イズミはその重力をブラックホールにくれてやった。
イズミは惑星に近付いた。
しかし、その時ブラックホールは揺らいでいた。
まるで、赤色巨星を見るようだ。
ここの住人は未だ斥力を発生させていた。
サムとリーはテレポートした。
「龍の牙」を見つけイズミに帰還した。
イズミはに逃げるようにこの星域を去った。
第4話 主の闘い
この話は、後に「命の泉」の主に聞く。
「その者達は、突然襲ってきた。
斥力発生装置を携えてきた。
我は、その装置に一時金縛りにされた。
その者達は、我の牙を折った。
我は、反撃した。
その装置は、長時間使えるものではなかった。
その者達は、去って行った」
ほどなくムーの科学者によってその装置の正体が解る。
あの星にあった装置とは、別の装置だったようだ。
その装置は「命の泉」限定の装置だった事が予測される。
そして、斥力発生とは別の機能をも持っていた事も予測される。
牙を折るためには、斥力だけではできない。
牙を折るための別の力が必要になる。
ここにも悪意が感じられる。
悪意を持った欠片の目的は何なのだろうか?
第5話 空間飽和
13人の覚醒者の一人に「アイン」がいる。
彼は科学者だ。
そして「アイン」は、ニックネームだ。
本当の名は別に持っている。
しかし、彼は「アイン」の名を気にいっている
20世紀の初め、「アインシュタイン」という偉大な科学者がいた。
彼はその末裔だという。
真実は解らない。
「アイン」は、ついさっきのブラックホールの異常現象を考察した。
「空間飽和を通り越し空間爆発が起こったのではないだろうか?」
重力子と斥力子の対消滅で空間はエネルギーで満ちる。
そして、ある一定のエネルギー密度になると空間は飽和状態になる。
エネルギーは拡散しようとするが、対消滅の起こる頻度と速度によっては間に合わない。
空間飽和を超えると空間圧縮が始まる。
空間に圧力がかかる。
更に圧力がかかると臨界点を迎え空間爆発が起こる。
空間爆発は、ブラックホールをも巻き込む。
あの現象はそれではなかったのだろうか?
理論的には、空間爆発が収まると何事も無かったように空間は飽和状態に戻る。
暫くしたら、あの場所に行って調査が必要だろう。
理論は確かめる事が必要だ。
空間の破れについても考察した。
空間にエネルギーが不足すると空間密度が低くなる。
理論的には、空間密度は無限小の極限値まで低くなる。
しかし、現実には破れる事が予測される。
これは実験する気にはなれないが。
第6話 突然変異
龍の尾を持つ惑星の時に、斥力の仮説を立てた彼もそうだった。
ムーの遺伝子研究所では、新たなる発見をした。
それは、DNAの突然変異だった。
突然変異の原因はこの時、解らない。
解明できるのは、ずっと先の事だ。
あるDNAの特定の部分が根こそぎ書き換えらている。
特殊な能力だけを開花させる人がいる。
その他の遺伝子の発現率は、10%少しだ。
これは、他の覚醒者よりはるかに少ない発現率だ。
発現にもエネルギーが必要なのだろうか?
突然変異にはもっとエネルギーが必要なのだろうか?
エネルギーの種別は何なのだろうか?
細胞リサイクル遺伝子は関係しているのだろうか?
経験は関係ないのだろうか?
思考の方向性は関係ないのだろうか?
望み、願いは関係ないのだろうか?
研究所は謎だけで一杯になった。
第7話 遺伝子
「サムシング・グレート」21世紀初めに出版された本だ。
『DNAは「何か偉大なもの」に創られた』
とする締めで終わっている本だ。
現在のムーの科学でも、それに異議を挟む者はいない。
遺伝子の構造はどれをとっても謎だらけだ。
染色体は、2重螺旋構造をとる。
波動エネルギーも2重螺旋状になる。
これは、関係あるのだろうか?
人類は染色体を13本持っている。
1本1本が2重螺旋構造をとる。
そして、染色体それぞれがコドンで暗号様のコードを持つ。
刺激が開始コドンに与えられ、そのコードが働きだす事を発現と呼ぶ。
人類は、21世紀初頭にこの全てのコドン・コードを手に入れた。
だが、その時の人類は数%のコドン・コードの意味しか解らなかった。
ムーでは、60%くらいのコドン・コードの意味が解るようになっていた。
しかし、突然変異を起こすと率は、意味を持たなくなる。
「コドン・コードは、無限の可能性を持っている」のかもしれない。
先ずは、解っているコドン・コードの解明からだ。
そしてメカニズムへと研究を進める。
遺伝子の研究は、未だ初に就いたばかりだ。
第8話 聖水
『聖徒』が研究している「聖水」の謎が少し解けた。
精神は、過重力によって侵される。
その精神の働きを元に戻す機能が「聖水」にある。
禁忌である「13個のクォ‐ク」で「聖水」を実験した。
どの禁忌でも、実験にはムーの最高決定機関『MTS』の許可を必要とする。
この許可を得て実験をした。
「13個のクォ‐ク」で作られた意識をブラックホールに持っていった。
それを、ブラックホールの地表面まで運び、そこに一定時間置いた。
意識は惑乱した。
これに「聖水」をかけると意識は平穏を取り戻した。
重力が精神に大きな影響を与える事が再確認できた。
そして、その回復に「聖水」が有効である事も確認できた。
今後の課題は、
「重力が精神に及ぶす影響のメカニズムの研究」
「過重力から精神を防御する技術の確立」
「過重力に侵された精神を取り戻す技術の確立」
と、なった。
第9話 新素粒子
新しい素粒子が発見された。
それは、符号転換装置の開発の時、気付いていた。
新しい素粒子の質量は、重力子の「10のマイナス3乗倍」だった。
『トリオン』系素粒子と名付けられた。
そして、その新しい素粒子は「トランスット」と名付けられた。
この素粒子は、重力子と斥力子に作用し、それらの周期を換えた。
スピン値を換える事ができた。
この成果は、符号転換装置の不要を意味した。
「トランスット」を操作する技術を開発すればいい。
そうすると、重力子⇔斥力子が簡単にできる。
ブラックホールの物理的な側面の対策は、目途がついた。
第10話 レプトン
現在、ムーで研究されているものの1つに、『レプトン』系素粒子がある。
確実に存在が確認されているのは、電子・タキオン・グル‐オンだ。
陽子は、直径約1.7750×10の-15m、質量約1.67×10の-27乗Kgだ。
電子は、直径は不明、質量約9.11×10の-31乗Kgだ。
だいたい、『レプトン』系素粒子は、電子と同等の質量を持つと思われる。
グル‐オンⅠは、ほぼ同じだ。
グル‐オンⅡは、1/3だ。
タキオンは、生成された時は、ほぼ同じだが、一定の条件で崩壊していく。
レプトンにとって大事なのは、質量ではない。
エネルギーだ。
電子1個は、約-1.6×10の-19乗クーロン力を持つ。
グル‐オンⅠ・Ⅱのエネルギー量の値は測定されていない。
しかし、電子の数万倍~数億倍と予測されている。
性質も電子と違う。
グル‐オンⅠは、クォ‐クを結合させ核子を作る。
グル‐オンⅡは、核子を結合させ元素を作る。
タキオンのエネルギー量の値も測定されていない。
これも性質が違う。
空間に影響を受け、光速より速く移動する。
『レプトン』系素粒子の研究開発は、ムーの科学者の必須課題だ。