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第5章 龍の尾

第5章 龍の尾


第1話 騙された惑星


 未久は予言した。

「銀河の辺境に沿って地球方面に向かいなさい」


イズミは、辺境を地球方面に向かった。


 未久は予言した。

「彼らは騙されている。

彼らは分不相応なものを持っている。

あまりにも危険です。

時には待つ事も大事です」


 悪意を持った欠片がいた。

それは放浪の欠片だった。

この惑星は、それに騙されていた。

ペンタダイバリオンの生成方法を、それはこの惑星に教えた。


 この惑星の文明は地球の20世紀頃のものだった。

この惑星の住民は彼を神と崇めた。


 突然の技術だった。

住民は喜び、ペンタダイバリオンを活用した。

ペンタダイバリオンは不完全なものだ。

住民達はこれを正当に評価できなかった。

技術の素晴らしさにのみ喜んだ。


 イズミがこの惑星に近付くと、突然砲撃された。

弾頭には、ペンタダイバリオンが使われている。

 かろうじて、TBD8のフィールドとTBD4Cの装甲、そして新和の結界で

防いだ。

 ペンタダイバリオン弾頭は、TBD8のフィールドと新和の結界を貫いた。

かろうじて、速度を落とした弾頭をTBD4Cの装甲で弾いた。

危険過ぎる。

 イズミは、この星域から脱出した。


 住民達は神から予言を貰っていた。

「次に来る船をこれで撃ち落とせ。

彼らは敵だ」


 鎮也は未久の予言通り待つ事にした。



第2話 人類(1)


 地球の人類の人口の1.5%が覚醒した。

現在の人口は250億人だ。

彼らは、他の惑星への移住を計画していた。


 科学者の遺伝子調査チームは、遺伝子の構造に高い興味を持っていた。

21世紀の初め「サムシング・グレート」という書籍があった。

遺伝子構造を設計したのは、「何か偉大なもの」であるという結論だった。

その認識は現在でも変わりない。

 現在のムーの科学力では、遺伝子の構造を作成できない。

現在解っているのは、タンパク質の折りたたみ、DNAのコンパクト化だけだ。


 タンパク質は、20種類のアミノ酸から構成される。

線形的な構成は、DNAに記述されている。

だが、この線形的な構造は長過ぎて細胞に収まらない。

細胞に収まるように、この線形構造を折りたたむ。

一定の法則がある。

折りたたまれて内部で接触したアミノ酸は、複合エネルギーとフィールドを発生させる。

このエネルギーとフィールドが生体活動を維持する。

折りたたまれた外側は、他の有機物と反応する手を持つ。

そして、必要な微量元素などを修飾させる。

この修飾の結果、骨などが出来上がる。

修飾し器官が生成されるとエネルギーとフィールドがこの器官にも影響を及ぼす。


 DNAのコンパクト化は、内部にエネルギーもフィールドも持たない。

ただ線形的な記述だけが残る。

これは、後に「螺旋の解明」で詳細が明らかになる。


 ここでも「複雑の木」理論が活用された。

20種類のアミノ酸を用いた人工のタンパク質の合成が可能になった。

しかし、人工のタンパク質は危険だ。

人工のタンパク質は毒性を持つ事がある。

自然界では、マムシの毒などが知られている。

これは、かつて血清などで治療された。

今でも、根本原理は変わっていない。

人工のタンパク質では、血清を作るために、それを特定しなければならない。

現在の技術では、人工のタンパク質の特定が困難だ。

人工のタンパク質の生成は禁忌とされた。



第3話 人類(2)


 移住の計画は、現実味を持っていた。

候補の惑星はいくつかある。

希望者は続出した。


 人類には、フロンティア精神がある。

これは、望みに属するのだろう。

細胞リサイクル遺伝子の発現に大きな影響を与えた。

発現の条件は「精神の安定化」「望みと願いの強さ」だ。

逆は無い。

発現したとしても、「精神の安定化」「望みと願いの強さ」は得られない。

他の遺伝子は発現しない。


 第1陣が旅立った。

施設は既に完成している。

惑星改造も済んでいる。


 後は、彼らがここで何を望み、願うかだ。

人類の問題だった。


 住環境は快適だろう。

不備があれば彼らが改良するだろう。


 労働は、既に人類の手を離れている。

通常の生活の「望み、願い」は、大概のものは叶う。


 彼らは、未来にむけて何を望み、願うのだろう?



第4話 科学の方向(1)


 科学者にはいくつかのチームが存在する。


バリオン系粒子の開発チームは、クオダイバリオンで一先ずピリオドを打った。


「空間の研究にするか?」

「レプトンの研究にするか?」

決め兼ねていた。


 現場の要求が最優先だ。


 今までムーでは、数々の成果を上げてきた。

禁忌とされたものも幾つかあった。


 遺伝子チームは画期的なものを生成していないが堅実に成果を上げている。

人工頭脳チームは次世代のものに取り組んでいる。

バリオン系粒子の開発チームは、空間とレプトンの2チームに分かれた。


 既に2つとも、バリオン系粒子の開発の過程で、基礎理論は出来上がっている。

今後のチーム編成の決定は現場からの要求次第となった。


 レンコの欠片達も「聖水」について研究していた。

魔女達も呪文と物理世界との関連について研究していた。



第5話 滅亡


 イズミは『STA』装置によって、あの惑星から生命反応が消えた事を知った。

あの惑星に行ってみた。


 地上にテレポートしたサムは惨劇を見た。

ペンタダイバリオンの影響で精神が崩壊し、この惨劇は起きたのだろう。


 この惑星の文明は滅びた。


 この前の星域の事を思い出した。

ブラックホールが辺境に存在するのは理論的に矛盾を起こす。

あれは、悪意を持った欠片の仕業ではないだろうか?


 悪意を持った欠片は高度な科学力を持っている。

何処からきたのだろうか?

そして、悪意を持った欠片はブラックホールの影響を受けているのだろうか?


 彼を放置する事はできない。

ミチヤに連絡を取った。


 ここから地球まで2,000光年だ。

『STC』装置を使えば、通信は可能だ。

この装置はほとんどリアルタイムに通信できる。

だが微妙なずれを感じるのだ。

鎮也とミチヤはテレパシーで会話した。


ミチヤはこの悪意を持った欠片を探す事にした。



第6話 過去視


 バリオン系素粒子は、数百億年をかけて崩壊していく。

この時に放出するのが、重力子か斥力子だ。


 そして、バリオン系素粒子は個体差を持っている。

同じ種類の素粒子でも1個毎に放出する量が一定ではない。

その素粒子の運動量によって放出する量が決まる。

各種の相互作用によって運動の方向は予測がつく。


 このため理論的には、素粒子の過去の座標を、求める事ができる。

しかし、空間の歪みや生命体の存在などによって、技術化はできていない。

現場が望めばこの研究開発チームが結成されるだろう。


13人の覚醒者の中に「マリヤ」がいる。

彼女は、この物質の過去を見る事ができた。

個々の素粒子の運動回数によって、どのくらいの年代を遡れるか?決定される。


彼女は、この惑星の過去を見てみた。



第7話 憶測


 過去に、この惑星から飛び出して、帰ってきた物質がある。

ペンタダイバリオンだ。

ペンタダイバリオンは精神エネルギーが抜け落ちた不完全なものだ。

方向と距離を推測すると、そこは「命の泉」だった。


 ここからは、鎮也の憶測になる。


悪意を持った欠片に騙されたここの住民達の中に幾人もいた。

「この惑星から飛び出してみたい」

と思った者は幾人もいた。

それは、衝動だったのか?興味だったのか?

悪意を持った欠片はここの住人にある座標を教えた。

「そこに行けば宇宙の宝がある」

と教えた。


 ここの住人はそこに行き、「命の泉」の主と闘った。

主を悪だと思って、闘った。

そして、「龍の尾」を断ち切った。

彼らには、そこまでが限界だった。

数百いた船が3つしか残っていなかった。

彼らはこの惑星に「龍の尾」を持ち帰った。


 これが鎮也の憶測だ。


「龍の尾」を得た鎮也達は、地球に向かう事にした。

未久の予言によると、次の場所は、ここから地球の反対側の辺境だ。


第8話 科学の方向(2)


 未久は予言した。

「眼には眼を。歯には歯を」

「これでは、問題が解決しません。

視点を換えなさい。

重力を別な視点で捉えなさい」


 ムーのバリオン系粒子の開発チームは、研究開発を「空間」にだけ絞った。

レプトンは後回しとなった。


 地球では20世紀初頭「アインシュタイン」による「一般相対性理論」が発表された。

この理論では、重力が空間を歪めるとされていた。

現在の科学は進歩している。

重力が空間を歪める事は正しい。

だが、歪めるのは重力だけではないのだ。


 斥力も影響している。

空間は場だった。

重力子と斥力子が作る場なのだ。


 空間は時間に影響を与える歪みを持っているだけではない。

空間には密度もあった。


 重力子と斥力子が対消滅した結果できる場は、密度の高低を持っていた。

密度の低い空間が破れたらどうなるのだろう?



第9話 空間


 バリオン系素粒子は、長い年月をかけて、重力子か斥力子を放出し続ける。

この重力子と斥力子は対消滅して場を作る。

但し、全ての重力子と斥力子が対消滅するのではない。

スピンが一致していなければならない。

スピンは、重力子と斥力子が波の形状を持った時の、バンド幅+周期と同義だ。

この場が空間だ。


 そのため空間は、エネルギーに満ちている。

だがエネルギー密度が一定ではない。

質量の大きい星の傍では、エネルギー密度が高くなる。

だが、斥力が足りない。

この問題は未だ解決していなかった。

ただ、重い星にダイバリオンが存在する事は、知っていた。

エネルギー密度を一定に保とうと自然は作用するが、放出に間に合わない。

「空間の密度」が高低を持つ理由がこれだ。

「密度を一定に保とうと自然は作用する」

この原理は20世紀のエントロピーの法則の拡張で説明できる。

だが、それは先の事だった。


 満ちたエネルギーは、レプトンとして物質化する。

何かに求められれば、物質化する。


 現在知られているレプトンの種類は、幾つかある。

例えば、電子やグル‐オンだ。


 TBD9の改良が始まった。

従来のTBD9は空間を移動する時、効率が悪かった。

空間の原理の基礎が解るとそれは、明らかだった。

幾何学的に考えると、板を全面に立てた状態で移動していた。

これでは、抵抗が大き過ぎる。

鋭角な先端にして移動するように改良された。


 だが空間を論じるには未知な部分が多い。

重力子を放出する物質は多く発見されている。

しかし、斥力子を放出する物質は数少ない。

これではバランスがとれない。

今、宇宙は膨張している。

このためには、斥力子の絶対量が重力子を超えなければならない。


 空間場の測定装置の開発も必要だ。

今後、空間理論の発展が人類の進歩に繋がるだろう。

未だ空間理論は基礎の段階だ。



第10話 凱旋


 その騒ぎは凱旋のようだった。

パレードまで用意されていた。

鎮也達は、それを丁重に断った。

イズミの高台から手を振るだけにした。

この様子は通信でも流された。

大騒ぎだった。

人類の喜びだった。


 鎮也達は医学研究所に行った。

遺伝子の発現率を調べた。

個人差はあったが、発現率は45%内外だった。


 一般人の覚醒者の発現率は25%だ。

それを大きく上回っている。

経験の差だろうか?

思考の方向の差だろうか?

望み、願いの大きさの違いだろうか?


 イズミはこの間に修復、改造がされた。


鎮也達は「龍の牙」を求めて旅立った。



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