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第10章 異世界

第10章 異世界


第1話 選ばれた者(1)


 銀河を平穏に導き、他の銀河に飛び立ったイズミは、ある集団と出会った。

その集団は、艦隊だった。


 巨大なブラックホールの前で、立ち往生していた。

ミチヤらの助力で脱出に成功した。

立ち往生していたように、見えた原因が解った。

吸い込まれる事を、防ぐ事はできた。

しかし、脱出ができない。


 彼らのリーダーは、礼を言った。

「危ないところを、助けて頂き有難うございます。

我らは『選ばれし者』です。

試練を受けているのです。

貴方方は?」


 鎮也

「我々も『選ばれし者』。

我々は、試練を乗り越えました。

1つの銀河を平穏に導きました」


 この集団以外にも、困難に会っている集団をいくつか見つけた。

試練途中で、頓挫しかかっているのだ。


 やはり、多くの『選ばれし者』は存在するのだ。



第2話 選ばれた者(2)


 この頃のムーの科学力では、この宇宙の端から端までを1時間で移動できた。

アインの仮説は、次々と立証されていった。

 ムーでは、物質と空間の科学は、完成に近づきつつあった。


 ある銀河団で、1隻で航行している『選ばれし者』に会った。

『選ばれし者』は『サーラン』と名乗った。

彼は、突然変異者だった。

複数の突然変異を起こしているらしい。

全体の75%くらいの遺伝子が発現していた。


 彼は、優秀な指導者でもあり、科学者でもあった。

テレポーターでもあり、強制暗示能力者でもあった。


 しかし、彼は言う。

「私の惑星で目覚めた者は、私一人しかいません。

今は、私を認める数少ない有志と共に旅をしています。

命の泉に赴き、試練を達しました。

ですが、私の孤独感は増すばかりです。

私の惑星では、細胞リサイクル遺伝子を発現させた者が、少ないのです。

私と私の惑星の住人とでは、あまりにもギャップがあり過ぎるのです。

彼らの援護は、私には届きません。

全体の科学力は、遅々として進展しません。

精神的な成熟もいつになるか解りません」


 サーランは、鎮也達との同行を願った。

鎮也は承諾した。

サーランの船は、母星に還った。


 ミチヤも『選ばれし者』を探していた。

だが、彼の仕事は、この宇宙の平穏化だった。

ミチヤの援助で、人類は宇宙の平穏化を行っていた。


 この時、声が聞こえた。

いや、感じた。


「異世界へ」


 「命を織り成す方」のメッセージだろうか?



第3話 人類(1)


 人類の中からレア・レベルの者が78人見つかった。


62人の者が、芸術関係だった。

残りの8人は、テレポーターを含む非科学系の能力者だった。

そして、残りの7人は、科学系統に秀でた。


 ムーの科学陣は、この7人を中心に発展していく事になる。


 最後の1人は、判断能力者だった。

名前を「ターナー」という。

今後、この宇宙は、ターナーをリーダーとして運営されるだろう。


「選ばれし者」も皆、ムーを認めた。



第4話 人類(2)


 ムーは、この宇宙のメッカとなった。

「選ばれし者」など、現在のムーの科学力、精神力を凌駕する者もいた。

しかし、彼らは思う。

「ムーは無限の可能性を持っている」

「我らは、足踏みをしているようだ」


 人類は、全宇宙に連絡ネットワークを張った。

通信も移動も、短時間で行えるように計画された。


 第4世代人工知能『ルクス』が、全体工程を仕切っている。

人工知能のこれ以上の開発は、現時点で不可能に見えた。


 この宇宙での諍いは少なくなった。

ブラックホールの全てにシールドが張られようとしている。


 ミチヤらは、浄化作業など人類の後方支援に回った。

ユーラの願いは、鎮也らに託された。


鎮也らの遺伝子の発現率が98%程度になった。

残りの2%は突然変異の発現帯だ。

発現帯は、多くのコドン群で構成される。

突然変異が起こらなければ、ただのジャンクだ。

 アインだけは、発現率が89%程度だった。

やはり、突然変異が起こると全体の発現率は、落ちるようだ。



第5話 精神


 レア・レベルの科学者の1人に精神を専門にする者がいた。


彼は、仮説を立てた。

「精神は、物質であり、波であるが、

その波の関数には虚数を含んでいる。

だから、検出できないのだ」


 この仮説を立証するのは、無理だった。

虚数を検出する事は、この宇宙ではできない。


 科学者は、虚数世界を局所的に作る努力をした。

だが、それは徒労に終わった。


 確かに、傍証からその仮説は、正しいように思えた。

精神エネルギーは、瞬発的に発せられ、消滅して行く。

物理の大原則「質量の保存」に反する。

精神エネルギーは、一定の条件下で数乗倍され、この世界に影響する。

 この世界で精神エネルギーが威力を全て解放させているようには見えない。

実数化したものだけが、影響を与える。

 つまり、見掛け上の精神エネルギーの大小は、本来のものと違う事が予想される。

ダイバリオンが発生させる意識、知性の低さは、これが所以かもしれない。


 精神の仕組みが解る日がくるのは、いつだろうか?



第6話 フラクタル


 フラクタル関数が見直された。

オ‐トセルマトンも見直された。

地球では、21世紀初頭に、忘れ去られた理論だ。


 フラクタル関数は、複雑で、規則的な幾何模様を構成する。

それは、美しく感じられる。

フラクタル関数は、拡大しても、縮小しても同じ幾何模様を見せる。

そして、フラクタル関数は虚数を含む。

精神構造と何か関係ありそうだ。


 オ‐トセルマトンも、物質の生い立ちに関係しそうだ。

一定の法則を与えると小さな部分が成長するに従い、美しい幾何模様を見せる。

法則が的外れだと、崩壊していく。

宇宙創成の鍵を握っているように思えてならない。


 アインもムーの科学者もこれらに注目し出した。

これらの理論の復活と発展に期待が寄せられ始めた。



第7話 BMU


 「BMU」は、「f=B」である。

この世界を構成した物質の基だ。

現在、これは、空間を取り巻く包囲膜として存在する。

空間に取り込まれたものもある。

包囲膜へと移動中のものもある。


 空間の基ができた時、「BMU」は高温だった。

f=B+αのエネルギーを持った。

包囲膜が安定するに連れて+αを空間に放った。


 現在、宇宙背景放射として観測されるのは、この+αが減じたものだ。

この+αは、物質の構成を複雑化するのに1役買っているようだ。

だが、詳細は未だ不明だ。


 空間の中では、未だ重力子と斥力子の対消滅が起こり空間を膨張させている。

それに従い包囲膜も膨張する。


 包囲膜を突き破れば異世界に行けるのだろうか?



第8話 異なる世界


 アインは、異なる世界に行く方法を考察していた。

方法は、3つ考えられる。


 1つは、包囲膜を破る事だ。

しかし、問題がある。

この世界への影響と包囲膜を破る方法だ。


 1つは、空間を破る事だ。

これも、この世界へ影響を及ぼす。

実際に空間爆発に一度遭遇している。

技術的には、包囲膜を破る事より現実性がある。

空間爆発の間隙を縫って異世界に行けばよい。

だが、帰ってくる問題は、残っている。


 1つは、ワームホールを使う事だ。

これは、この世界へ影響を及ぼさない。

厳密に言うとイズミの質量分の影響を及ぼす。

「質量保存の法則」を乱すからだ。

しかし、それは大きな影響ではないだろう。

 理論上、ワームホールは存在する。

ブラックホールの中心付近に存在する事が予測される。


 イズミは、小さなブラックホールの中心に空間転移した。



第9話 妖精の世界(1)


 イズミは、突然異世界に潜りこんだ。

鎮也らはもちろんの事、アインにも現状が把握できなかった。


 『STA』装置が唸る。

この状況を走査している。

 『STC』装置は、ムーとの通信を行う。

無駄だった。

通信は、なしのつぶてだ。


 『STA』装置の結果が出た。

この世界は、地球規模の大きさらしい。

包囲膜は、地球で言えば大気圏を取り巻くように存在するらしい。

ブラックホールの質量と異世界の広さは、関係あるのだろうか?

この世界を構成する物質は、自分達の世界と同じものだ。

自然界には、植物しか存在しなかった。

静かな世界だった。


 突然、意識が割り込んで来た。



第10話 妖精の世界(2)


 それは、妖精だった。

「お前達は、我らの同類と会った事があるな。

共存していたのか?

よほど「命を織り成す方」に、気に入られたようだ。

今まで、この世界にやって来たのは、ほんの数組しかいない。

それらは、僅かだが、悪意を持っていた。

我らに悪意は、天敵なのだ。

皆、命の泉に放り込んでやった」


 この時、マリヤは覚醒した。

突然変異を起こしたのだ。

妖精に似た力を以前から持っていた。

それが、完全に覚醒した。

妖精と同化したのだ。

妖精の持つ力は、幸のものになった。


 サムも覚醒した。

ワームホールを感知できるようになった。

そして、一度通ったワームホールを記憶する。

帰り路は、サムが知っている。


後に気付くが、ここが命への出発点だった。

ここの「命の泉」が、『命の真実』への出発点だったのだ。

だが、現時点で鎮也達が、「命の泉」へ突入すれば、崩壊が待っていただろう。


 最初の異世界がここだったのは、「命を織り成す方」の配慮だったのだろうか?



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