第9章 銀河中央
第9章 銀河中央
第1話 第3周辺
「龍の翼」を持つ惑星は、衛星星域だった。
「命の泉」の主の話によると、
「銀河の中央には、巨大な文明帝国がある。
そして、それを取り巻くように、第2周辺星域、第3周辺星域がる。
「龍の翼」を持つ惑星は、その更に外側の衛星星域の1つだ。
銀河の中央には、太陽の質量の10の16乗倍を超えるブラックホールがある。
今のお前達なら、ブラックホールの問題は直ぐ解決できるだろう。
この命の泉から、命は銀河中央には飛ばない。
銀河中央は、侵され過ぎている」
イズミは、第3周辺を調査した。
この周辺でも、太陽の質量の10の8乗倍を超えるブラックホールが存在する。
イズミは、ブラックホール対策にムーに戻った。
これからは、アユミが常に同伴する事になっている。
アインの仮説は、的を射ているのだろうか?
アインに期待が集まった。
技術の進歩を願った。
そして、その検証も兼ねた銀河中央への進出が行われようとしていた。
第2話 ブラックホール対策
符号反転装置の原理が、アインによって示されていた。
未だ、仮説の段階だ。
「MIN波の2つめの性質:互いを同期させる」
が、応用された。
従来の符号反転装置は、原理の裏付け無しの特性を利用しただけのものだった。
効率が悪かった。
新符号反転装置は、3段階の照射を行う。
1段階目は、トランスットⅠを+π/2より少し小さい位相を照射させる。
充分な量を照射すると重力子は、揺らぐ。
重力子は、位相を行い、トランスットⅠに同期をし始める。
同期が始まると、性質からどんどん同期が起こる。
2段階目は、トランスットⅡを-1/4π位相させたものを送る。
重力子は、同期を始め、斥力子に近付き始める。
3段階目は、トランスットⅡを送る。
これで、符号転換が終了する。
相手が、斥力子の時は逆を行えばいい。
トランスットやトランスットになり損ねたものは、無尽蔵に自然界に存在する。
効率的な符号転換装置が完成した。
そして、ブラックホール・シールドも改良された。
画期的に性能を上げたのはアジャスターだ。
ただ、これらはアインの仮説を元にしているだけだ。
実験の成果が待たれる。
実験には危険を伴うが、現地で行うしかない。
イズミは、第3周辺に向かった。
アユミも新符号転換装置とアジャスターを搭載して、従った。
第3話 再びの第3周辺
衛星星域と同じように戦艦、宇宙空母、巡洋艦、駆逐艦、空母の搭載機が多数襲った。
数は、圧倒的に多い。
人工頭脳も世代が新しいらしい。
だが、レプトン系素粒子波の発生装置による対消滅砲は持っていなかった。
これらは、イズミとアユミによって、簡単に掃討された。
惑星から強力な斥力が発せられる。
新符号転換装置の成果が試される。
新符号転換装置もアジャスターを備えている。
いたずらに符号転換装置を使えば、空間爆発を誘発する。
新符号転換装置は威力を発揮させた。
アインの仮説の一部が立証された。
ブラックホール・シールドも張られた。
ブラックホールを太陽並みの恒星にアジャストした。
また、アインの仮説の一部が立証された。
アインは、自信を高めて行く。
惑星に降り立った鎮也達は、生命体と遭遇する。
この惑星では、「13個のクォ‐ク」の開発は、行われていない。
知性は、衛星星域の住人より高いのかもしれない。
だが、悪意はあの精神体より高い。
ミチヤは、大気圏外から援護に回った。
第4話 生命体
この惑星の住人は、身体の半分以上を人工体としていた。
筋力は、通常の人類の数億倍だ。
だが、その影響なのか精神エネルギーは、人類よりも劣っていた。
悪意だけは、相当なものだ。
幸とマリヤによって浄化が行われた。
相当な時間が必要だった。
しかし、ブラックホールをシールドしたためか?効果は加速度的に上がって行く。
この惑星を幸とマリヤに任せ、鎮也達は第2周辺へと深く入り込んだ。
この周辺に来ると、ブラックホールは更に巨大化した。
太陽の質量の10の12乗倍を超えるブラックホールが存在する。
しかし、ブラックホール・シールドは、何の問題も無く働いた。
ブラックホール・シールドは、質量の大きさに左右されない。
原理の問題なのだ。
トランスットは、無尽蔵に空間に存在する。
アジャスターも原理を元にフルに機能する。
この惑星の住人は、身体の80%以上を人工体としていた。
やはり、精神エネルギーは、劣っていた。
それは、第3周辺より劣っていた。
第3周辺から合流した幸とマリヤによって浄化が行われた。
鎮也達は銀河中央へと進んだ。
第5話 銀河中央
銀河中央の住人は、脳だけを残し、全て人工体だった。
精神エネルギーは、格段と落ちている。
太陽の質量の10の16乗倍~24乗倍のブラックホールが存在する。
やはり、ブラックホール・シールドは、質量の大きさに左右されない。
第2周辺からの合流は、早かった。
第2周辺の方が、第3周辺より精神エネルギーが小さい。
銀河中央で、幸とマリヤによって浄化が行われた。
あっという間に終わった。
銀河の統一は、目の前だった。
他の銀河への旅立ちが近付く。
鎮也は、浄化の定義がされていない事に、気付く。
今までは、他に対する悪意を敵とみなした。
人類には、支配欲、物質欲の放棄を求めた。
そして、望み、願いを求めた。
それ以外は、人類に何も求めなかった。
強制は、禁じられた。
禁じなくとも、人類の誰もがそれをしなかった。
果たして、方向性は正しいのだろうか?
今までの、成果は順調そうに見える。
だが、鎮也の自信は、確信を持ったものではなかった。
第6話 物質の構成(1)
アインらは、一時ムーに戻っていた。
彼らにも休養は、必要だ。
アインは、物質の構成について話した。
「スペラン系素粒子以降は、複雑さが増す。
私の推測は、できないものもあれば、外れているものもあるだろう。
修正は随時、行われなければならない」
「レプトン」系素粒子の構成は、次の通りだ。
「電子」は、「ミッダーⅡ」を3つ持つ。
そして、電荷-1となる。
「反電子」は、「ミッダーⅠ」を3つ持つ。
そして、電荷+1となる。
「タキオン」は、「ミッダーⅠ」と「ミッダーⅡ」を1個ずつ持つ。
よって、電荷は0だ。
そして、大量の重力子と斥力子を持つ。
自然界では、重力子と斥力子の初動が異なっている。
そのため、重力子と斥力子は対消滅しない。
だが、一定のエネルギーが与えられると、重力子と斥力子の対消滅が始まる。
その対消滅は、局所的に起こるため亜空間を生成する。
対消滅は加速度を増し、「ミッダーⅠ」と「ミッダーⅡ」さえ崩壊させる。
「タキオン」は、質量を失っていく。
「タキオン」は、自分自身を一定まで崩壊させて、亜空間を生成し続ける。
そして、光速を超える。
光子については、後述する。
「グル‐オンⅠ」は、「ミッダーⅤ」と「ミッダーⅥ」を6個ずつ持つ。
「グル‐オンⅡ」は、「ミッダーⅤ」と「ミッダーⅥ」を2個ずつ持つ。
よって、電荷は0だ。
グル‐オンは、質量の全てが波となり、エネルギー化されている。
理由は、未だ解らない。
観測データから、強い核力と強力を持つ事が知られている。
未確認の「レプトン」系素粒子に「質量子」がある。
この物質は、自然界で「ミッダーⅠ」と「ミッダーⅡ」を足して5個ずつで構成される。
電荷が+1/6か-1/6になる。
そして、数百億年をかけて、自身を崩壊させる。
崩壊する時、重力子か斥力子を放出させる。
自然界では、重力子の放出がほとんどだ。
「質量子」は、波となるのが困難とされる。
つまり、質量の全てをエネルギー化するのは、困難なのだ。
そして、この物質がクォ‐クの基となる。
人工的に「質量子」を作る時、「ミッダーⅠ~Ⅵ」の組み合わせは、相当数になる。
だが、現在の科学力では、人工的に作る事は、困難だ。
第7話 物質の構成(2)
光子は、「トリオン」系素粒子の異種だ。
波形が違う。
また、複数の波の複合体でもある。
様々な周波数も持つ。
分離されたり、複合化されたりする。
どれも同じ光子の作用をする。
何故か理由は解らない。
そして、光子を構成する波同士の干渉は行われない。
更に、見掛け上、粒子の性質も持つ。
だが、質量は0だ。
よって、質量を持つものは、光子より速く空間を移動できない。
だが、詳細は未だ解っていない。
放射線として観測されるものがある。
これは、どの系の粒子にも、なれなかったものだ。
クォ-クは、無作為にこれを取り込む。
本当に無作為なのか検証されていない。
「無作為さ」を検証する事は、現在の科学ではできない。
ただ、法則を知らないだけなのかもしれない。
時に、放射線は何らかの特性を示す事がある。
それは、無数にある放射線の極一部だ。
第8話 物質の構成(3)
「クォ‐ク」系素粒子は、現在、自然界で6種類見つかっている。
理論上は、もっと可能性がある。
だが、現在の科学力では、人工的に作る事は、困難だ。
地球上には、2種類しかない。
「アップ・クォ‐ク」…電荷が+2/3、単位質量2。
これは、+の「質量子」6個と-の「質量子」2個から構成される。
「ダウン・クォ‐ク」…電荷が-1/3、単位質量4
これは、+の「質量子」7個と-の「質量子」9個から構成される。
この時、放射線も取り込む。
地球上では、これらから「バリオン」系素粒子である陽子や中性子が構成されて行く。
質量を持つ元素が崩壊して行くのは、放射線が原因と考えられている。
放射線は、本来なら不純物である
ミッダーも崩壊するが、観測できないほど周期が大きい。
自然界の重力の大きな星では、次の4つのクォ‐クが発見された。
チャーム・クォ‐ク(電荷+2/3)(単位質量約1,300)
ストレンジ・クォ‐ク(電荷-1/3)(単位質量約100)
トップ・クォ‐ク(電荷+2/3)(単位質量約173,000)
ボトム・クォ‐ク(電荷-1/3)(単位質量約4,200)
ダイバリオンは、これら6種類の組み合わせで構成されていく。
第9話 ダイバリオン
ダイバリオンは、精神エネルギーを放出する事がある。
意識も僅かだが持つ。
低い知性も持つ。
これらは、物質とされたが、検出できていない。
そして、どの系の粒子から混ざり込んだのか解らない。
検出できていないのだから、解らない。
現在、第4世代のダイバリオンが実用化されている。
だが、これらは、質量を最大にする事を目的とした組み合わせで、構成されている。
クォ‐クの組み合わせの数は、相当数ある。
用途を考えて、他の組み合わせも可能だ。
「13個のクォ‐ク」の組み合わせは、禁忌とされている。
巨大な精神エネルギーを放出するからだ。
衛星星域では、この実験が行われたらしい。
そして、滅亡していた。
イズミ搭載の『ケント』には、この時の巨大な精神エネルギーが融合されている。
『ケント』が、悪意に染まる日が来ない事を願う。
第10話 包囲膜
第3の爆発の直後、空間の基を取り囲むように、それは膜状になった。
それは、f=Bだ。
f=Bを「BMU」と呼ぶ。
「BMU」は、空間が成熟しても、それを包囲するように膜状になった。
「BMU」は、拡散性を持っている。
これは、性質で、エネルギーではない。
空間に取り込まれたものもいた。
この膜に未だ移動中のものもある。
「MIN波」が周波数(1/周期)を持ったため、空間には、時間ができた。
波の固有時間と物質の相対時間が存在する。
絶対時間は、存在しない。
亜空間は、内部に質量を持たない限り、時間の影響は受けない。
「BMU」とその他の物質は、速度こそ違え、この膜に向かっている。
だが向かう性質より、エネルギーの方が大きい。
物質は、膜に向かいながら集団を作って行く。
集団の個性は、爆発の時の影響の初動によって違う。
はるかな時を経て、銀河団はできた。
そして、崩壊する銀河団もいる。
しかし、この世界に精神を組み込んだ者がいる。
この世界に遺伝子を創造したものがいる。
この世界に命を送り込んだ者がいる。
そのものは、「命を織り成す方」としか解っていない。