プロローグ
急な思いつきによるものなので、完全な見切り発進です。温かな目で読んでください。宜しくお願いします。
騙されたと気づいたときには、もう引き返せないところまできていた。
騙した張本人はいつになく笑顔を振りまき、悪びれる様子は微塵も感じない。
ここまで堂々とされてしまえば怒る気にもなれない。
もっとも、怒ったところで反省などしないことは目に見えているのだが。
「アキラ、何固まっているの?」
と尋ねる声がいつになく高い声で、作っている声だというのがバレバレだ。
もはやわざとらしいと思えるほど、満面の笑みを顔にくっつけている。
あんまりな状況に無表情で動けなくなっている自分がいた。こうなってしまったのは当然の反応といっても差し支えないというのに、それを許さないとばかりに見つめてくる。
笑顔に圧力を感じるというのもおかしな話だろうが、今まさに目の前の顔がそうなのである。
残念なことに自分に与えられたことと言えば、余計な労力は使わず大人しく従うことだけだった。
渋々ともとれる緩慢な動作で、与えられた席に腰を掛けた。
あぁ、まさかお見合いを、自分がするなんて…考えたことなかった……。