移動する名剣
「あはははは・・・・・・」
スキールニルはフニカル、すなわちオーディンの召使であるカラス(フギン)から連絡をもらい、
「フレイ様、いや、イングナ・フレイをこれで抹殺、ユングリングはわが国のものに」
ひとり、ほくそえんでいた。
それを聞いていたゲルズは、フレイに逃げましょう、逃げましょうと促すが、人のいいフレイはスキールニルを心底信じていて、
「だいじょうぶだよ、スキーに限って裏切ったりなどあるもんかい」
「でもあなた! あなたがトール様から授かった大事な剣を、私などのために上げてしまったじゃないの」
フレイは懐かしそうに思い出し、
「うん、そんなことあったね」
とのんきに答えた。
ゲルズとの結婚をするのに、フレイは大きな犠牲を払った。
フレイを守る魔法の剣があり、その剣は敵が近づくと自動的に敵を切り刻んだ。
その剣がほしいとスキールニルから告げられ、フレイはゲルズの愛を得られるならたやすいことだと、カンタンにゆずってしまったのだ。
「私は今、幸せです。あのころは何も知らなくて、何度もあなたを拒んだけどね」
巨人族のきれいな娘は、英雄フレイに寄り添った。
「いいんだよ、今があれば。ぼくはそのために・・・・・・君を愛するためにだけ、生まれてきたようなものだ」
「フレイ様。でも怖かったわ。スキールニルは私にあなたとの結婚を承諾しなければ、呪いの刻印を刻むと脅したのですから・・・・・・」
フレイはそれを聞いて、
「なに? それは本当か?」
と真顔でゲルズに迫る。
しかしフレイはもうひとつの事実を知らなかった。
その剣が今、シグルズの手に渡っていることを。
なにせ、オーディンが変装してスキールニルを殴り倒し、そのあとでシグムンドに剣を渡したのだから。
・・・・・・だから、いわくつきなんだよな・・・・・・。
グラムさん、いそがしいですなぁ。
まるで出張・・・・・・じゃないですか(w