かくして・・・。
ネーデルラントの王でシグムントは、非常に男っぷりがよく、ニーベルンゲン族の大将にふさわしかった。
ところが、いとこのシゲイルが、シグムントをねたみ始め、戦争で殺してしまおうとする。
いきなり奇襲をけしかけたシゲイルの軍勢に押され、それでもシグムントは戦った。
戦って、勝とうとした。
しかし、突如あらわれたいつかのジイさん――隻眼の、いやらしげに笑う小汚い賢者は、この世のものと思えぬほど美しい槍で、シグムントを貫いてしまった。
それは、グングニルという魔法の槍で、いかなる屈強な鎧でも貫いてしまうというものだった。
シグムントは、かわいい息子がみなしごになってしまうことを恐れ、老人に頼み込んだ。
「頼む、あの子を孤児にするわけにはいかない、助けてくれ。せめてあの子が十五になるくらいまでは、生きたいんだ」
「よかろう」
爺さんはひげを揺らして答えた。
「契約したからな」
爺さんはシグムントの傷を癒すと、代わりにシゲイルの命をいただくことにして、槍でシゲイルの心臓を貫いた。
「ぐはあ! そんな!」
シゲイルは死んだと想ったシグムントが生き返ったので、驚きながら他界していった。
「あんた、このグラムの所持者だろう。あの時どうして、俺にこいつを渡したんだ」
老人はうひょひょ、ときみの悪い笑みをしながら、
「知りたいか。え? それはな、お前には素質があるからだよ」
「素質?」
「お前の息子にもある。グラムを持つ資格がな」
シグムントは途方にくれて、美しく輝くグラムを鞘に収めた。
資格というのは、全世界をすべる力を持つ資格という意味で、いわば世界王の名にふさわしい、ということを老人は言いたかったのだろう。
だがこの剣は、ただの剣にあらず。
もともと資格があったとしても、それにふさわしくない行いをすれば、たちまち、権威ごと自滅してしまう恐れもあった。
それと、剣を持つ実力もないのに手にすると禍が起こる、とも・・・・・・。
かくしてシグルズは十四になった。
シグムントはどうせなら、もうちょっとだけ生きてみたいと想い、
「シグルズ。父さんと一緒に竜退治にいかないか」
と申し、竜の生き血を飲もうと旅に出た。
竜の生き血は不老不死の力があるという。
シグムントは、どうせならもう少し生きたいと願いつつ、フランケンの山を目指す。
どうせなら、もう少し・・・・・・いや、できれば永遠の世界を見たい、と。
お父さん欲張っちゃって。
でも親が生きてそばにいてくれるのって、やっぱりうれしいものでしょうな。
孤児の勇者よりは、こういう設定のほうがなんぼか好き。




