表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/30

第一章 街 アルドアル

あらすじ

 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話

 前半は恋愛観はほとんどありません。後半からです。


第一章 変化 追加修正しました。 良ければ読んで下さい。



 何もなかった場所に鉄道が引かれ駅舎ができ、建物ができてくると人の流れが変化していく。そんな中で街が形成される過程において、農業が発展していくことは極めて重要な役割で、そこに、農作物の育成に良さそうな土地があり、広大な草原は放牧に適していそうであり、水源もある。こんな好条件を活かさなくてはと4人で協議をしていると、王宮の農政局には研究室があり新規の土地に異常な反応をみせる職員がいるらしく、「呼んでもいいけどどうなるか知らないよ。連絡したら嬉々として直ぐにでも来るだろう。」とライがちょっと困ったような顔で話すとディルもファビも「あぁ…」「でも、適任じゃないか、興奮して困るのは農政局の職員だろうし。」と少し不安になるようなことも言う。「ライの知人だろ」二人が言うと「やめてくれ、知り合いだ。」と言いながら、即連絡をしてくれることになった。

 隣街のリブランからそう遠くない距離だが、行政関係はしっかりしたいとファビとディルの意見があり、駅舎前の土地に役所を建設し騎士団の詰め所も併設された。今後、隣国との重要拠点になるなら行政と治安は真剣に取り組みたいことだったのでファビとディルが徹底してやるからと申し出てくれたので任せることになった。

 人が増えてくると商人が商会を立ち上げるために訪れるようになり、住みやすい環境と分かると各所属の職員や技術者、騎士団員などが家族を呼び寄せるようになりどんどん発展していった。


 そうなると最初の目的であるオーレンスト国との外交関連の構築に着手しなければならない。私の立場は仮にも王妃ではあるが、現況は隣国と交易開始のための外交職員のようだ。交渉を進めていくためには、鉄道と観光(温泉)とあと一つ何かほしいと考えていた。リハビリ型の療養施設はどうだろうかと3人に提案した。「すごい着眼点だな、いいんじゃないか。」賛同してくれて褒めてくれる3人に、これまでの私の生活では任務を遂行することは当たり前で、結果が全て。望まれる成果を上げることが任務であり人から認められるとか褒められるといったことがなかったので、温かな気持ちや心が豊かになるという感情に心地よさを感じた。


 私は直ぐに王宮のドクターバーナードへ手紙を送った。先生のご尽力で今の自分があること、健康に生活できていること、毎日が楽しいと感じられること、そして本題であるアルドアルで温泉を利用したリハビリ中心の病院を運営していきたいので力添えしてもらうことが可能かという内容を書き記した。ドクターバーナードからの返信は即座に届いた。そして、ドクターバーナードに返信するより先に、派遣するといわれていた医師が妻とともにアルドアルに到着した。彼の名前はヴィクトール・グーセンと妻のアリスで、ヴィクトールは2年前までドクターバーナードの下で王宮の医師だったが、結婚をする際に職を辞して、妻のアリスが薬師として働いていた診療所に転身したということだった。

 ヴィクトール・グーセンは伯爵家の4男で年齢は35歳、継ぐ爵位がないためアリスとの結婚の際に貴族籍から除籍となっている。今回は病院の立ち上げに助力してほしいと聞いているが、詳しい内容が知りたいので現地確認も含めて早々に訪れたということだった。私は病院の候補地へ案内して、建設は担当医師の意見を反映したいことや雇用の諸条件は希望を聞いてから折り合いをつけたいことなどを説明した。夫婦には3人の子供がいるらしく勉学のことも把握しておきたい懸念事項の一つのようだった。子供の教育は王都に倣い、アルドアルカレッジで初等・中等教育を5歳から18歳までの12年間を学ぶことができる、見学もできると説明すると安心したようだった。

 ヴィクトールとアリス夫妻と病院の開業に向けて協議を重ねた。二人は直ぐに拠点をアルドアルに移し子供たちを呼び寄せた。住居は病院の候補地の近くに建設の職員用に試しで建てていた住居の中の1つをとても気に入ったようで移り住んだ。リハビリ型ということだが、人口も増えていることから急ぎで診察が必要な人もいるだろうと医師の派遣が可能なら2つの病院を作ることにした。今は、けが人や病人は別の街から医師に来てもらったり、王都に帰れる状態の人は王都に帰ったりしている。私は治癒魔法が使えるが、スワツール国に魔法を使える人はいないようだった。そのため、各分野で科学的知識と技術でそれ以上のことを成し遂げていた。ドクターバーナードの協力とヴィクトールとアリス夫妻の尽力で病院設立の構想が着々と進んでいった。リハビリ型病院をスラジェ病院、救急型をセキュリゼ病院としてスラジェ病院をヴィクトールとアリス夫妻が主となり、セキュリゼ病院にはドクターバーナードの門下生で王都の病院に勤務している医師を派遣してくれた。医師はハンスとアネッテという男性と女性の医師で、ハンスはハンス・タリアン伯爵家次男30歳独身、アネッテはご主人も医師で近日中に家族共々移住してくれるということだった。二人ともヴィクトール夫妻の近くの住居に転居することになった。アネッテの年齢は32歳で元は準男爵家の長女だった。その家族は、ご主人がアルフ・タッペル子爵で年齢は32歳、アネッテと同じ王都の病院で医師をしていた。子供は2人でご主人のご両親である元子爵夫妻との転居だった。

 最初に出来上がったスラジェ病院は、退役した軍人や騎士団員、冒険者や技術者や作業員の人々に大変な人気だった。温泉の効能に加え静水圧や浮力作用といった身体への負担が少なくリハビリを行い、水中運動で心肺機能の向上、リラクゼーションなど多くの効果があり、さらに薬師のアリスさんの調剤薬も効果が高いと口コミで沢山の患者さんが訪れた。アルドアルは建設ラッシュで技術者や作業員が多く怪我をする患者さんが多く、ハンス医師、アルフ医師、アネッテ医師も毎日忙しく働いてくれていた。ヴィクトール夫妻は、温厚で勤勉、冷静で丁寧なお二人だった。アルフ医師は知的で社交性もあり機知に富む人、アネッテ医師は真面目で明るく責任感の強い人。ハンス医師は革新的で好奇心旺盛、探求心の強い人だった。そして、何故かやたらと私に話しかけては肩を組んできたり頭を撫でたりするので、ディルから再三注意を受けているのに一向に改善しようとせず、「ディルクさんはお母さんか何かなの、エルとはこれからも仲良くしていかなといけないからね。あんまり口うるさく言わないでほしいなぁ」と全く応えない人だった。ディルから「エルも嫌なら嫌だとハッキリ断るように」とお叱りを受けたりした。これまでも仕事の中でやたらと絡んでくる人がいたが、ハンス医師に悪意がない分、まあスキンシップの多い人というくらいだと笑って話すと呆れた様に「そんな問題じゃあない」と怒られた。よくわからなかった。

 

 ジスルリッタワーソル迎賓館は、建物がほぼ完成した。二つの国の建築様式が融合しており、真正面から見た外観は左右で、屋根の部分が塔、尖塔、窓、円筒などが立ち並んでいる。その美しさは、湖面に反射している。窓からは美しい湖とクラエイヤ火山の山々と広大な草原が広がっており、雄大で牧歌的な景観に魅了される。マルティンとアンゼリカが「最高傑作だ。苦労したが、報われたなぁ。」と建設に携わった人たちと喜びを分かち合っていた。この素晴らしい建築物に見合う内装の品々をどうしたものかと悩むことになったのは喜ばしいことだった。マルティンは「オーレンスト国のガラス職人に腕のいいやつがいるから、シャンデリアやランプなど照明については任せてほいい。」といい、「じゃあ、家具は木工職人の私の知り合いに頼んでもいいわね。私の好みをふんだんに入れてもらうわ。楽しみ。」となった。後は、このジスルリッタワーソル迎賓館に見合う人選で一番頭が痛くなる仕事だった。最高水準のサービスに厳格な警備のためには、運営計画や予算管理を行う管理者や気配りと空間の演出ができる料理人、衛生面に配慮が行き届くことができるメイドやハウスキーパーなど様々な職種の人々を募らねばならない。ディルから「アイスラー侯爵家から当面の間、執事や家令、フットマン、メイド、コックに来てもらおう」と提案があると、ファビから「別荘ができたら公爵家の使用人が来るから、早めに来て迎賓館で働いてもらおうかな。どちらにしても皆が、準備段階から迎賓館に寝泊まりするようになるだろう。」と言ってくれた。ファビとディルで協議して人選してくれることになった。ただ、コックについてはアウグスリンデ国からも呼びたいと思っていた。

 料理は相手国へのおもてなしの心の一つだと思うから、相手国のコックに参加してもらいたいだとファビとディルに話した。私は諜報活動中に給仕係をすることが殆どだったので、各国の簡単な料理はできるんだが何せ戦争関係だと食材や料理方法は限られるし、それでも少しでも美味しい物が食べたいと思うのはどの国も同じだ。私は、料理は人の心を動かす力があると思う。料理の一つ一つはその場の空気を支配する、和むこともあれば、癒されることもある。反対に険悪になることもある。給仕係の時に経験したことだった。その時に不図、一緒に給仕係をしていた青年のことが頭を過った。彼は、寡黙に料理をしていた。何を話すわけではないが、優しいと思える食事を作っていたように思う。大工のマルティンに話すと「彼は伯爵家の次男で幼少期に体が弱かったらしく、食事制限があったり随分苦労したらしい。だから伯爵家のスペアじゃなく料理人になるといって、有名なレストランのコックになったんじゃなかったか?」「誰か知っている者がいると思うから連絡してみよう。期待はするなよ。」といってくれた。仮にこちらに来てくれても苦労させてしまうだろうと思うが、彼の優しい料理に救われたことが何度かあったことを思い出すと会ってみたい、できれば協力してほしいと思ってしまうのだった。

 2週間くらいして、マルティンが彼を伴って会いに来てくれた。彼の名前はニールス、年齢は25歳アウグスリンデ国で有名なレストラン『デファイフ』の副料理長をしていると自己紹介があった。面識がありましたか?と聞かれ、ファビやディルやライは、また変身してくれるのではないかと期待した目で見てきたが「お会いした時は、変身魔道具で見た目を変えていました。」と説明するに留めた。マルティンから大体のことは聞いていたようだが、少しでも興味があるなら詳しく説明させてほしいと話すと是非にと希望された。

 アウグスリンデ国と国交を行うにあたり会議が催される。場所はジスルリッタワーソル迎賓館で、そこで料理を作ってほしいこと、しかし、ここはスワツール国なのでスワツールのコックと協同作業をしていくことになる。料理に関して譲れなことも多いと思うので苦労するのが分かる。それでも協力してもらいたいと思っているといった内容を説明した。「申し訳ないが全てをこちらに移すことは現状では判断できない。職場に長期休みが可能か聞いてみる。3か月くらい休みが取れそうなら話を受けてみてもいい。やらせてもらって、できるかどうか判断させてほしい。」という返事は唯々有難かった。そしてコックのニールスとファビの公爵家のコックのケビンの顔合わせが行われた。

 二人にそれぞれ得意な料理を3品作ってもらい、ファビとディルとライと私が試食した。どれも洗練された料理でとても美味しい料理だった。これから私たちが目指すのは、融合と調和の料理で今回はアウグスリンデ国とスワツール国だが、今後は外交が活発になっていく。二国間が多国間になることもある。二人が主になって融合と調和の料理を作っていってほしいと説明した。

 ニールスは慎重で繊細、真面目で丁寧な性格のようで、ケビンは勝気で高貴で野心家な面があるようだった。ファビは二人は合わないんじゃないかと危惧していた。「職人さんの世界は想像以上に交わりが難しそうだ、マルティンとアンゼリカは特殊な例だったんじゃないか。今回は年齢も一緒だしライバル心が強くないといいんだけどね。」と言われたが、二人には乗り越えていってほしいと願うばかりだった。そして心配した通りに二人がぶつかり合った。ケビンが捲し立て、ニールスが冷静に反撃をするといった具合だったが、お互いに口も利かなくなってしまった。困り果てたが、私は二人の前で再度今回の目的を説明して二人の前で料理を作ることにした。自国であるアウグスリンデの伝統的な煮込み料理に隣国のマプト国のジャガイモチーズを一口大にして入れてみた料理で、スープを作ることが多かった野営では人気の料理だった。こんな簡単な思い付きの拙い料理でも人を喜ばせることができるのなら、二人は私たちにどんな喜びの料理を作ってくれますか?と問うた。これから他国との交流が広がっていくとお話したのですが。お二人は他国へ出たことがないのでしょう、他国との交流がどういうことなのか理解できない部分があるかもしれません。想像してみてください、他国の料理を知ることは、これからのお二人のコックの器が大きくなっていくと考えることができませんか?ジャガイモチーズ入りスープを食べた二人は、誰に食べてもらう料理を作るかということを忘れていたような気がします。といって翌日に2品の新しい料理を作成して試食させてくれた。ぶつかることもあるけど、今度はいい方向にぶつかるように努力します。目標は一つだから協力してやっていきます。と言ってくれた。二人を料理長に迎えそれぞれの国から協力してくれる料理人を揃えることができた。


 こうしてオーレンスト国との国交に向けて鉄道・観光(温泉)・療養施設と体制作りが出来上がった。ディルがオーレンスト国の外交官と日程調整を行い、外交官4名と急遽医師が2名、視察に訪れることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ