第二章 侍女の恋シリーズ
やっと帰宅したアデマールが、「忙しいのですが、何か用があるのでしょうか?」と前伯爵夫妻に話しかけます。
前伯爵家当主が、「このお金の流れを説明してもらおうか?」といって会計簿を見せました。
アデマールは、「あぁ、この他国の預金ですか、私が向こうの国で生活していくための当面のお金です。」
その場にいる者はアデマールが何のことを言っているのかわからなかったと思います。
前爵家当主が、「向こうの国で生活するとはどういうことだ?」と問うと、「私は王族の血を引いている。今ではずいぶん薄くなってしまったかもしれないが、この見た目はスニア様にそっくりなんだそうだ。是非、王族として迎え入れたいから来てほしいと懇願されたから断るわけにもいかない。なんせ王族に関わることなんだから。ここまで知られてしまったのなら、もうあちらの国に行ってもいいかな。迎えは来ているからね。」
淡々とそう語るアデマールに前伯爵家当主が、「お前は何を考えているんだ、そんなことが許される訳がないだろう。お前はこの国の伯爵家当主なんだぞ。何を考えてこんな馬鹿げたことをしたんだ。」と激高した。
アデマールは意に介さない様子でした。平気な顔で「王族になる私に意見しないでくれるかな。そういうことなので、これで私は失礼するよ。ここにいても不快な思いをするだけだから。」そういって立ち上がり、さっさと出ていってしまう。
前伯爵家当主と執事が慌てて引き留めに走る。
前伯爵家夫人は茫然自失な状態でした。侍女長が心配して部屋に戻りましょうと声をかけ、抱えられるようにして部屋に戻っていきました。私にもお部屋でお待ちになっていた方がよろしいですよと声をかけてくれたので、自分の部屋で待つことにしました。
私が知っているアデマールではありませんでした。
一緒にいたころのアデマールは、思いやりのある温かないつも誰かの心配をするような人でした。
私のことを尊重してくれていました。
結婚してくれてありがとう。愛しているよ。巡り合えたことに感謝している。聡明なところも、少し控えめなところも、時々僕を叱ってくれるところも大好きだ。そう言って、抱きしめてキスをする。私が恥ずかしがると、夫婦なんだから堂々としていればいいのさ。自慢の奥さんを取られないようにどんどん見せびらかそうねと言ってまたキスをする、そんな愛情表現をする人でした。
余りにも変わってしまった彼の姿を目の当たりにしても、アデマールが変わってしまったということが受け入れられませんでした。
一睡もできないまま夜が明けていきました。
ゆるゆると身支度を済ませます。実家の支払いをどうしようかと考えていたときに、アデマールが働き者の奥さんにお給料をあげないとねと言って、毎月私の通帳にお金を入れてくれていました。何かに使うことがなかったので相当な金額になっていました。今回実家の支払いは、そのお金を使わせてもらうことにしました。銀行に行って相談をして支払いを終えることができました。
実家の父親には、今後は子爵家の事は子爵家でしてほしい。詳しい話は、もう少し時間がかかると手紙を書きました。
伯爵家に帰ると侍女長から「前伯爵家当主様がお呼びになっています。」と言われました。
昨日と同じ部屋で同じ位置に座り同じメンバーで話をします。
前伯爵家当主が、「アデマールはもう帰ってこない。渋っていたが、何とか伯爵家の支払いを済まさせた。気持ちは王族の一員になっているようだ。今日中にも向こうの国に向かうそうだ。もう帰って来ないと言っていた。何を考えているのか分からないが、スニア元王女は向こうの国では悲劇の主人公と言われていて人気が高いそうだ。スニア元王女に容姿が似ているアデマールは人気者になるそうだ。王家の人気取りにでも使われるのかもしれん。
アデマールのことは諦めるしかない。しばらくの間は私が復帰して執務を行う。後継者については検討していかねばならん。」そう言って皆を見渡しました。
前伯爵家夫人は、顔色は悪かったが毅然としていた。そして考えもしないようなことを話しはじめました。
残念だけどアデマールの事は諦めるしかないわね。だけど、後継者は必要よ。伯爵家の血を引く後継者がね。
そして私を見て一言「あなた、この人の子を産みなさい」そう言ったのです。
前伯爵夫人は、私に前伯爵当主の子供を産みなさいと命令したのでした。
私が返事をしないことを肯定とみなしたようです。
明日、医者と相談して日取りを決めましょう。私が全て指示しますから、あなたは指示に従ってちょうだいと言われたのです。
翌日、伯爵家の専属医師が来て私に色々と質問をして、簡単な診察も行われました。
診察には前伯爵夫妻も同席でしていたので、専属医師が一週間後に三日間の性行為をしてみて下さい。そのように診察の結果を告げたのでした。
私に拒否権があったのでしょうか?その時の私は、何も考えることができませんでした。
夜は眠れず、起床時間がきたら起きて身支度をする。出された食事を食べれる分だけ食べて仕事をする。そんな毎日でした。ただ息をしているだけ。何も感じない。何も考えられない。ただ時間を過ごしているだけでした。
一週間後の夜に侍女たちから丁寧な湯あみが行われました。ベッドに案内され、一糸まとわぬ姿で寝かされたのです。前伯爵家当主が来て私を見つめていました。何食わぬ顔で、始めようかと言って私に触れようとしたところで、前伯爵夫人が入ってきました。
「あなた、これを使ってなさることだけして下さい。早々に終わらせなさいね。」と言って、前伯爵家当主に何かを渡しました。前伯爵家当主は、受け取ったそれを見て頷いたので前伯爵夫人は部屋を出ていきました。
私の秘所に前伯爵夫人が持ってきた潤滑油が垂らされたようです。前伯爵家当主のものが私の中に入り込みました。私は何も感じない頭と空っぽの心で、やっぱり時間が過ぎていくことだけを考えていました。その内に行為が終わったのでしょう。前伯爵家当主が私の上に倒れこみました。
アデマールとは違う臭いに、ゆっくりと前伯爵家当主の下から抜け出ました。何故だか分からないのですがその状態が耐えられなかったのです。
その日からきっちり3日間、同じことが繰り返されました。
やっと解放された私は、また以前と同じ眠れない夜を過ごし朝がくる日々を過ごしました。外出することは禁じられていました。どんなことで伯爵家の醜聞になるか分からないから出産までは外に出ないように前伯爵夫人から命令されていたのです。
従う必要などないはずなのに、そんなことも考えられなくなっていました。灰色の生活を過ごすだけでした。
行為の日から3ヶ月くらい経ったでしょうか、専属医師が「おめでとうございます。懐妊です。」と告げました。私、妊娠したんだ。そう思った瞬間に酷い吐き気に見舞われました。




