第二章 護衛騎士
あらすじ
第二章にはいりました。
周囲の人々から優しく時に厳しく、時に生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。
愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。
今日は、護衛騎士を選ぶ日だ。
ジャックは、アウグスリンデ国で最初に面接をした騎士だ。
25歳男爵家の次男、誠実で礼儀正しい。剣術が得意だ。大柄だが、素早く間合いを詰めてきて、重たい一撃を与えて倒すという戦術だ。
ジャックなら十分に団長の地位が望めると思う。何故、護衛を志願したたのか分からなかった。
マチルダ達侍女は、初めは大きな男性が怖かった様だったが、礼儀正しく、優しい受け答えができるジャックに安心したようだった。
ジャックと同期で伯爵家三男のノアはジャックと同じくらいに大柄だ。
既知に富んでいて、周囲を明るくする雰囲気を持っている。高い身体能力を持ち、強力な拳や蹴りによる体術が得意だ。
彼も騎士団では高い地位を得られる人材だと考えていた。
彼らから、アウグスリンデ国の訓練が非常に印象的で、自分達を見直すいい機会だったと思います。
少し周囲と比べて、恵まれた体格と戦闘力が優れていると勘違いしていた事に気付かされました。
王妃の訓練する姿や実際に戦ってみた時に、自分達には、何一つ勝てるものがありませんでした。敗北とかそんな簡単な問題ではありませんでした。
あの衝撃を忘れることはできません。
王妃の側で自分達を磨いていきたいです。
熱く語る2人に、マチルダ達侍女も一緒になって、お互いに頑張りましょうなどと言っている。
続いて、セリオは子爵家長男23歳。実家は弟が継ぐことになっているそうだ。自身は文官に向いていないからと幼少期から騎士を目指していたようだ。
彼は、小柄で反応が早く軽やかに相手を躱わしながら急所を一撃で突く。素早い身のこなしと緻密な計算で動くタイプだ。
彼に続けて、シーロとオラシオとイノバンが来た。
23歳の3人は平民で、3人とも商人の息子だ。算術より剣術が向いていると騎士になったそうだ。
3人は弓矢が得意で、両刃の長剣が使える。両刃の長剣はアウグスリンデ国に行って初めて触った様だが、3人とも相性が良かったようでメキメキと腕をあげた。なかなか使いこなせる者がいないので、アウグスリンデ国の騎士が驚いていた。
これまでの6人はマチルダ達侍女も護衛騎士になることに賛成してくれた。
残る3人は、第三陣が帰ってきてきて決めることにした。
最近、カリーナの様子がおかしい。仕事はできているが、元気がない。
カリーナに体調が悪いのかと聞いても、どこも悪くないという。
元気がないようだが、悩みでもあるのかと聞いてみた。
カリーナは黙って俯いていた。話してみると案外考えがまとまることもあるし、解決策が見つかることもある。話す気になったら教えて欲しいと言ってみた。
カリーナの固く結ばれていた口が、ゆっくりと動いた。
兄が騎士団を退団するというのです。そう言って泣き出してしまった。
4番目の兄は、幼いころから身体を動かすことが好きでした。突出した何かがあるとは思えませんでしたが、器用だったので剣術はそこそこの腕だったようです。
騎士団に入ってからは、責任感も強い人なので、真面目に仕事をしていたと思います。
一年前くらいから班長を任されたりしていました。
そんな兄がアウグスリンデ国に行って、自分がいかに甘い考えで騎士を志したのか教えられた。
こんな考えでは騎士団を続けることはできないと言って、退団する決意を固めたと一番上の兄に手紙が届いたそうです。
兄に会って聞いてみましたが同じことを言われてしまいました。私もどうしたらいいのか分からなくなってしまって、ここまで頑張ってきた兄です。このまま騎士を辞めて後悔しないのかと思うと、兄の決断を受け入れられないのです。
カリーナの兄は、第二陣でアウグスリンデ国に来ていたと思う。早い段階で魔獣討伐に参加させられていた。
勿論、命にかかわるようなことはさせていないが、その緊迫感は尋常ではなかったはずだ。
大半の者はその経験があったから、戦える身体と頭脳を身に着けたいと真剣に訓練に取り組んでいた。
カリーナの兄も必死に訓練に参加していたと思っていた。帰国後に心境の変化でもあったのだろうか?
話を聞いてみたいと思ったので、騎士団に連絡をした。
カリーナの兄は27歳、細身だがしっかり筋肉がついていて、体幹が鍛えられているのだろう、しっかりバランスがとれた動きをしている。
単刀直入に退団する理由を教えてもらえないかと聞いてみた。
少し考えてから、アウグスリンデ国では年下の指導者でした。こんなに自分達の事を考えて行動してくれるのかと、尊敬するほど優れた人でした。
私達の班は、そこそこ活躍できていました。
ただ、指導者から「君たちは、一人一人の能力があるから同等、もしくはそれ以下の相手なら勝てる勝算が高い。これからは、強い相手と戦う。連携して対戦する。仲間の特徴や動きを見て、自分で考えて相手も自分も最大限に力を発揮できる作戦を組み立てるように」そう言われていた。
今考えると、確かに班で行動していたが、一対一の戦い方だったと思います。
翌日にいつもより森の奥に入りました。大型魔獣が出てきて、班の2人くらいは指導者の指示を理解して、仲間を意識した戦い方をしまていました。自分は、そんな戦い方を知らないから、いつもと同じ様に出来る事をするという戦い方でした。
仲間の一人が、いつもの様に簡単に倒せない事に焦りを感じていることに気がついていたのに、何もしませんでした。一言声をかけるだけで良かったのに。
焦った一人が無謀にも正面から攻撃を仕掛けて、それを庇った指導者が大きな怪我を負いました。
それなのに彼は、私達班を守り切って、無事に帰ろうという約束を守れてよかった。指導の徹底が出来ていなきてすまなかったと頭を下げたのです。
私は、今まで何をしていたのでしょうか。少し人より突出したところがあるからと、スワツールでは班長も任されたりしていました。でも、指導者のような事を考えもしませんでした。
指導者は、不出来な私達を責めることもなく、「今日の事が、皆んなの明日に繋がりますように。」と言って、途中離脱になって申し訳ない。今後は、別の指導者が引き継いでくれる。安心して最後までやり抜いて欲しいと頭を下げたのです。指導者は、治療に専念することになりました。
私達は、それ以降は話し合いを徹底して、作戦を組み立て討伐に向かうようになりました。
アウグスリンデ国を去る日に指導者にお礼を言いに行きました。ベッドの上の指導者は意識がありませんでした。あれから直ぐ急変したらしく、魔物討伐ではたまにあることだと説明を受けました。
だから、より慎重により助け合い頭と身体を使って戦うのだと新しい指導者に言われました。
後、1週間くらいで目が覚めるだろうから心配しなくてもいいと言われましたが、私は自分を許すことが出来ません。
今は先が見えないのです。と肩を震わせ拳を握りしめていた。その姿は、自分を許せず、泣くことも許さないと言っているように見えた。




