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第一章 現地視察

あらすじ

 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話

前半は恋愛観はほとんどありません。後半からです。

 ディルク・アイスラー侯爵令息との話し合いは数日間に及び同僚のように忌憚ない意見が飛び交った。気がつけばお互いに「ディル」「エル」と呼び捨てにしていた。

 私は、オーレンスト国との隣接地はクラエイヤ火山の麓が理想的ではないかと提案したがディルは難色を示した。確かに火山しかない人も住んでいない土地だが開拓できていないだけ、だからこそ鉄道も導入しやすい。未開の地を開拓するのも国の使命と思うし、合わせて温泉を利用した施設を作りたいと説明した。ディルは「エルの考えていることが説明だけだとよく分からない、提案内容をまとめて欲しい」と言われた。確かに企画説明するなら目で見えることも必要なので、資料を作成することにした。更にずっと男性の言葉を使ってきた私に話しやすい言葉で喋っていいとも言ってくれた。確かに女性が使う言葉で話すとスローになり慣れない為に言葉選びしながらながら話すので、聞いていて違和感しかないと言われた。長兄と話す時のようにディルと話ができるようになるともっとスムーズに意見交換ができる様になった。提案内容も書面で起こし言葉で追加すると納得できることも増えてきた。長兄とは年齢も15歳離れており職場では上司と部下だったので丁寧な言葉を遣っていた。ディルにも最初の頃こそ丁寧な言葉遣いをしていたが、いつの間にか砕けた言葉でリラックスしたやり取りをしていた。

 机上では不明確なことも多いから、現地視察に出向き現状把握から始めることにした。国王にはディルからも共同作業をしていく旨を伝えてもらい承諾を得た。王妃の仕事より優先してもよいと言われ、新しいことに取り組む高揚感が湧き上がった。


 現地視察では近くの街リブランまでも馬車で1ヶ月かかり、そこから1週間かけてクラエイヤ火山の麓まで行った。火口跡に広がる拡大な緑の草原と火口跡に湧水が溜まってできた清麗な泉、所々に温泉が湧き出ているのだろう噴煙が上がっている。圧巻の景色を見ながら「ディル最適な場所だと思わないか、オーレンスト国との国境は目の前で、この景色と資源を活かさない手はない。鉄道を開通してくれないだろかなぁ。」高揚する気持ちのまま、いつもとは違う少し高い声で叫ぶ私に「気持ちは分かるが、少し落ち着こうか。護衛達が驚いている。」と気遣うようにディルから声がかかった。私はワクワクとする気持ちを経験し、逸る心に歯止めがきかず、とにかく歩き回り施設計画を語った。数日間の野宿は、昔の経験に比べれは護衛や食事係がいることから苦にはならなかった。人と交わることを極力避けていたアウグスリンデ国にいたころは、存在感を消すことに注視していたが、ここでは素の自分でいられた。ディル以外は私を男性だと思っているようで気軽に声をかけてくれるので、私もその様に振る舞った。湧き出る温泉にテントを張り入浴もしたが、流石にそこはディルが見張りをしてくれた。そうして現地を知ることで難色を示していたディルも可能性を感じたのか、直ぐに王宮に伝令を走らせ鉄道を敷く手筈を整えていった。

 国交を開始しようとしているオーレンスト国側で、ここから1番近い街は、馬車で1日間の位置にありその街はそこそこに栄えていたように記憶している。ディルに伝え確認してもらうと、随分詳しいんだなと驚かれた。「諜報活動していたから知っていることもあるが、時間も経っているし全ての話が正しいかもわからないけどね、噂話にも必要性があれば裏取もしたが、そうでなければ唯の世間話程度でしかないよ。」今回は正解だったようで良かったかな。ここまで鉄道が通るならその街に拠点を置けるように交渉したいと話し合った。

 2週間の視察を終え帰路についた。今から1ヶ月間馬車に乗らないといけないと思うと辟易するが、要所要所の街で駅を作るならと需要や立地選定をどうしていくか情報を集めながらの帰り道となった。

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