第一章 ディルク・アイスラー侯爵令息
あらすじ
突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話
前半は恋愛観はほとんどありません。後半からです。
ディルク・アイスラー侯爵令息は、国王の唐突な提案にも動じることなく私の返事を待っていた。先ずディルク・アイスラー侯爵令息の為人を知り、これ迄の国家間の取り組みなどを聞いてみてから判断することにした。国王は、重要課題の会議があるため返事について別日に話し合いの席を設けることになった。
私から声をかけた「ディルク・アイスラー侯爵令息、突然のことに驚かれたことと思います。私に何ができるのか考えさせていただきたいので、お話し合いをさせて下さい。私に良い感情を持っていないかもしれませんが、同僚となるべく尽力していきたいと考えております。」そして、お互いを知るために自己紹介から始め政策を含めて進捗具合も聞いておくことにした。
私から自己紹介をした。出身国はアウグスリンデ国、身分は第三王女で、確かに王族の血は流れている。色々と事情があり約一年くらいまではエミル・アーレント公爵令息として生活していた。必要なら詳しい話もできる。年齢は18歳で、アカデミーを卒業後は、公爵家の長兄と王立騎士団の戦略班に帰属しており遠征も出征もしていたと述べた。主に諜報活動をしており他国で給餌係をしながら情報を集めていた。食事の時は兵士も若干気が緩み思わぬ情報が知れる機会があると説明するとディルク・アイスラー侯爵令息は、「そんな企業秘密を教えても良かったのか?」と驚きと呆れの混ざったような顔で見てきた。私は、私がしてきた経験を話すことで、信頼している人達には情報として知ってもらって構わないと考えていると説明した。ディルク・アイスラー侯爵令息は、「信頼する者」と神妙な顔をした後に自己紹介が始まった。
ディルク・アイスラーです。とはじまり、アイスラー侯爵家の次男で年齢は22歳、宰相補佐官に20歳で任命され外交を主に担当しておりオーレンスト国とは2ヶ月前に外交官同士の交流が始まったばかりで、これから交渉を行なっていくことにしていると言われた。王妃については、これからの発言や行動を見て判断していきたい、噂などはあてにならないから自分の目で見て判断をすると言われた。私にとってはありがたいことで期待に応えられるような行動をしていくと答えた。
私は自国にいる時にオーレンスト国にも行っていたので、知識で役に立つことがあれば提供していきたいと告げた。しかし、オーレンスト国までの移動が馬車では1ヶ月近くかかるので、予算が許すならスワツール国の比類ない産業である鉄道を近くまで走らせられないだろうか、オーレンスト国は堅実派な国民性で鉄道事業はよい交渉材料になると思うと提案した。ディルク・アイスラー侯爵令息は宰相と相談すると言ってくれた。それから2人でオーレンスト国の近くに駅を作るとしたらどの場所にするかなど数時間意見交換をし、気がつけば遅い夕食の時間になり、侍女が恐る恐る声をかけてきて慌た。そんなにも時間が経っていたことを詫びて夕食は共に食べることを提案するとディルク・アイスラー侯爵令息も快諾してくれた。そして、明日からも話し合いを持ちオーレンスト国との国交を共に考えていくことになった。
目標が見えてきたことと、対等に会話ができる初めての人に出会えたことで、嬉しいとか喜ぶという感情が湧き上がるという経験を知ることができた。自国での私は、望まれたこと、命令されたことを淡々と行うだけで、感情は不要であると祖母から言われながら育てられた。身内である祖母の意見は私の将来を考えての発言なので絶対に守るものであった。国を出てから自分のやりたいようにやりなさい、それまでは忍耐しかないと言われていた。感情を持たないということはできないが、人より感情の揺れ幅が少なく保つように努めていた。喜怒哀楽は表情に出さず、声をできるだけ出さず、人との触れ合いも必要最小限にしていた。




