第二章 ニルマニ王女(1編)
あらすじ
突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話
第二章にはいりました。
周囲の人々から優しく時に厳しく生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。
愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。
話し終えた私は、疲れていた。
マチルダが「泣いたからお疲れでしょう。少しお休みなさいませ。」と私が休みやすいように促してくれた。
素直に従うことにした。いつぶりだろうか、とても疲労感を感じた。
私が休憩に入った後に、皆が話し合いをしたようだ。この時の私はまだ知らないが、後から話を聞くことになる。
ディルが、「声を出さずに、静かに涙だけ流せるものなのか?初めて見た。しかもエルが泣くなんて。いや、それより国王の件はどうする?」
マチルダが「私も言われて気がついたけど、確かにニルマニ王女は、エルを意識して避けているのかもしれない。目的は分からないけど。国王の件も何か企みがあるのかしら?」
そして各々が考えを話しだす。
「実は少し前から頻繁に国王の執務室で、ニルマニ王女を見かけるんだ。」
「そうそう、ファビも思ってたんだ。何の相談かなと思っているんだけどね。何て言うのかなぁ、王女の人当たりがいいからかなぁ、何かあるのかな?くらいで追求もしてないんだよね。」
「ファビもライもそんなに頻繁に見かけていたのか?」
「ディルは、最近、国王の執務室にあまり行かないから知らないと思うけど、おそらく王女は毎日行っているんじゃないかと思う。」
「ねぇ、そんなに国王の執務室に用事があるのかしら?何の相談をしているのかしら?抱き合うほどのことがあるのかしら?」
「少しおかしいな。何かあるのかもしれない。エルには内緒で情報共有していくようにしよう。集合をかける。」「大事にならないといいが。」
私が目を覚ましたのは翌朝だった。夕食もお風呂も何もせずに眠ってしまった。
侍女のジュリアとディアナが「マチルダさんから、お疲れのようだから起きるまで寝かせてさしあげてと言付かっていたので、お声かけしませんでした。朝食を召し上がりますか?お風呂にしますか?」と心配そうに訊ねてきた。
食欲がなかったので、果実水を飲んでお風呂に入る。朝食は食べずに執務室に向かった。
長兄から手紙が届いていた。
実は、森の主を守るためにシールドを張ったことで魔石を全て使ってしまった。
長兄に相談をしていた返事が返ってきた。
手紙には、ムマキルの生地の需要がうなぎ上りで相当な収益が上がっている。魔石はいつでも融通できるので必要量を確保しておくと書いてあった。何かあるといけないので、魔石は常備しておきたいと思う。
ケレに相談してみよう。昨日の執務の相談も出来ていない。
本日の予定を確認して、ケレに相談があると伝えてもらう。
許可が得られたので執務室へ向かう。昨日と同じことの繰り返しをしているなと思いながら執務室のドアを叩いた。
執務室に入るとニルマニ王女がソファーに座っていた。
ケレが「執務の話なので席を外す様に」とニルマニ王女に退室を促した。
ニルマニ王女はにっこりと笑って、「それでは後ほど」と言って立ち上がった。
ニルマニ王女は、ドアを開けたところで突然大きな声で「申し訳ございません。私がいけないのです。お二人のお邪魔をするつもりなどございません。王妃様、どうか誤解のないようにお願いいたします。私と国王は相談をしていただけなのです。ごめんなさい。お許しください。」そう言って涙を流してドアを閉めた。
今、何が起こったのだろうか?私はケレを見る。
「彼女はなにか誤解をしているようだ。」とケレが言うが、何をどの様に誤解しているというのか?
私は、「彼女が何を言いたいのか、何を誤解しているのか全く分からない。」とケレに向かって疑問を投げる。
更に続けて「それよりも、妊娠しているのに、あんなに興奮して大丈夫なのか?」とケレに聞いてみた。
ケレが驚いたように「妊娠している?誰が?ニルマニ王女のことか?」と私に聞いてくる。
「えっ?知らなかったのですか?ニルマニ王女の国から知らせはなかったのですか?」と答える私。
ケレから「いつ気が付いた?なぜ早く言わなかったのだ?」と言われるが
「私がニルマニ王女と会うのは歓迎会と昨日と今日の3回です。昨日が会ったうちに入るかわかりませんが。妊娠が分かったのは今です。なぜ早く言わなかったかと問われても、会ってもいない人のことなど分かりませんので、報告のしようがありません。」私は一気に喋った。
落ち着きたい。そう思った。相談をしにきたのに別のことに振り回されている。なんだかおかしな気分だ。訳が分からない。
ソファーに腰かける。ケレが横に腰かけて、心配そうに顔を覗き込む。
早めに相談しておくことは執務のことなので、指示を仰ぐ。
そして、魔石を取りに行きたいが王宮を離れても問題ないかを確認した。
魔石は常備しておくに越したことはないから、アウグスリンデ国に行く許可をもらった。
ニルマニ王女については、ケレからの話によるとベラティ国が他国に婚姻の打診をしている。
決まれば自国に帰ることになるから、もう暫くの滞在だろうということだった。
妊娠の件は様子を見よう。こちら側から尋ねても、素直に認めるか分からないからという。
そしてその夜に事件が起こる。
翌朝に、「国王の寝室から、ニルマニ王女が乱れた姿で出てきた」という噂が王宮に流れた。
深夜、ケレの寝室をニルマニ王女が訪ねて行ったようで、寝衣が乱れた状態で国王の寝室から出てきたところをメイド達に見られたそうだ。
緘口令が敷かれていないということは、国王が気が付かないのか、事実を認めているのか。
私が歩いているとメイド達が私に聞こえるようにひそひそ話をしている。
執務室ではマチルダ達が私が心を痛めているのではないかと心配している。
ケレから報告も相談もないので、私も動きようがない。
マチルダが気を利かせて国王に事の真相を訪ねたいと質問状を送ったようだが、返事がなかったようだ。
私は魔石を受け取りに出発しなければいけないので、片づけないといけない執務に集中した。
何故か大臣方が入れ替わり訪ねてきて、悋気はいけませんよ。心を広く持ちましょう。ニルマニ王女に当たり散らさないように。などと言っては執務室を出ていく。
意味が分からなかった。外務大臣がきたときに、ニルマニ王女に当たり散らすどころか、顔も合わせていないのに何ができるというのですか?と聞く。
外務大臣は怪訝そうに「国王を取られそうで、ニルマニ王女に意地悪をしているのではないですか?食事に侵しな物を入れたり、罵倒したり、私物を壊したりしていると聞きましたが。」
マチルダが「誰から聞きましたか?王妃に時間がないことぐらい分るでしょう。ニルマニ王女に会ってもいないのに。」「王妃が指示して動くことができるのは私たち侍女だけです。私たちをお疑いですか?」と強い口調で大臣に詰め寄った。
外務大臣はタジタジになりながら「ニルマニ王女のメイド達が話していますよ。」と言って、真実ではないのかな?おかしいな?と言いながら部屋を出ていった。
王宮全体が噂に振り回されているようだ。ざわざわとしていて落ち着きがない。
私に対しては、女官やメイドがすれ違いざまに悪口を言ってくるようになった。
マチルダ達侍女がいる時は彼女達が注意をしてくれるが、効果などない。自分が悪いと思っていないのだから反省などしない。危害が加えられた訳ではないので、様子を見るしかない。
私はマチルダ達に名前を残しておくように指示した。噂に踊らされて不当な行為を行った者は、後々、処罰の対象になるからだ。
何か起こる可能性が高いので、私は急いでアウグスリンデ国に向かうことにした。
魔道具と魔石を持ってきた方がいい。このままでは噂が真実になってしまうかもしれない。
マチルダに説明をしたいからと、ディル達3人を呼んでもらった。
彼らも国王の噂に私が振り回されているのではないかと心配していた。私が通常運転なので拍子抜けしたようだった。
ニルマニ王女王女は妊娠している。相手が誰なのか分からないが、国王の子供ではない。
しかし、昨夜の1件が大きな噂になれば、こちら側は証拠の提示をしなければならなくなるだろう。
国王はニルマニ王女と関係は持っていないだろう。しかし、証拠を出すことは難しいと思う。
私は、魔道具と魔石を持って帰るためにアウグスリンデ国に向かう。
王宮の各所に録画ができる魔道具を配置しなければならない。
ニルマニ王女の考えで動いているレベルなら対応もできるだろうが、ベラティ国もしくはフナフティ国が絡んでいるのであれば国を揺るがす大きな問題になりかねない。
長兄に連絡してスワツール国のどこかで落ち合うことにしたので、時間はかからずに戻れるはずだ。
私が帰るまで、私が不在であるということは内緒にするように。
私の不在中に私について何か仕掛けられた場合は、クライスト公爵閣下が対応してくれる。極秘に連絡して参上してもらっている。
心を一つに!皆が私に膝をついて「御意!」と答えた。
~読んでいただいている方へ~
読んでいただいてありがとうございます。




