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第二章 他国の王女

あらすじ

 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話


 第二章にはいりました。

 周囲の人々から優しく時に厳しく生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。

 愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。

 ユンゲス辺境伯領の復興が順調に進んでいるため、私とケレは一旦王宮に帰ることにした。

執務も溜まっていることだろうし、他の災害地の状況も報告がきていることだろう。

ケレは順調に回復し、肩の傷も傷跡が残っているが動かすことに問題がない様子なので安心した。


 王宮に到着すると宰相がお待ちしていましたと、私とケレをそれぞれの執務室へと案内する。

沢山の報告書と共にオーレンスト国のレッティ王妃から手紙が届いていた。

体調は問題ないことと妊娠したということが喜びの言葉と共に書き綴られていた。

『妊娠か…王妃の使命』スワツール国に嫁いできて色々なことが起こっていたために、すっかり抜け落ちてしまっていた。向き合わないといけない問題だ。ケレからも特に跡継ぎのことを言われたことがなかったから気にしなかった。

 これまで、私の周囲に小さな子供といえば孤児院や教会の訪問の時か、今回はユンゲス辺境伯領で子供たちと触れ合ったが時間は短かった。子供に接することがなかったので、知識もほとんどない。

 マチルダに相談してもいいかもしれないと考えていたところに、国王に他国から婚姻の打診がきたと報告があった。


 ケレに婚姻の打診をしてきたのはベラティという国で、小さいが裕福な島国の第一王女だという。

婚姻の打診がくるのか?と不思議だったが、後継者を設けなければならない国王は一夫多妻制が認められているそうだ。

 私は、自分が本当に疎い人間なのだということを感じた。問題が起きれば向き合って解決していくことができる。しかしそれは王妃の仕事なのかと問われると、他の者でも十分にできる仕事だ。

 国の後継者問題は王妃もしくは同等の立場にある者にしかできないことだ。

そんなことを考えこんでいると、ずんっとした重い気持ちになった。


 ケレから執務室に来るようにと指示があった。ケレの執務室へ行くと、ケレがソファーに資料を広げて待っていた。

 聞いたとおもうがベラティ国から婚姻の打診がきた。断りの返事を送ったのだが、ベラティ国にも譲れない事情があるようだ。エルにも知っていていて欲しい。と説明が始まった。

 

 ベラティ国の事情とは

ベラティ国は、小さいが豊かで美しい島国である。元々はフナフティ国の領土だった。数代前の国王が、自身の弟のために独立をさせて作った国だ。しかし、時代が変わり指導者が変われば考え方も変わる。

 今のフナフティ国王は、ベラティ国を自分の領土に戻そうとしているようだ。だが、ベラティ国は独立をしてから独自の文化を築いてきている。

今更、フナフティ国に返還されるなど不利益で問題しかないことだと受け入れる気持ちにならないそうだ。

 そこで、後ろ盾になってくれる大国を探していて、我が国に白羽の矢が立ったということだ。


 協力をしていきたいと思わないではないし、ベラティ国に同情もする。理不尽に振り回される民が気の毒だ。

ここまでは、おそらくほとんどの者が一致した考えだろう。

 しかし、婚姻はできない。私は何人もの妃を娶る気はない。

後継者問題は重要事項ではある。しかしそれは、大きな火種にもなる。

 後継者が何人もいれば誰を王太子にするか揉める。特に国が絡むと影響力が大きい。他国が我が国の後継者争いに関与してくることは避けられない。そんな状況を作ることに意味などないと常々思っていた。


 ただ、事情を知ってしまうと、ベラティ国をこのままにしておくこともできない。

婚姻は断ったが、フナフティ国をけん制する意味で、第一王女を受け入れることにしようと考えている。とケレから説明と決定事項が伝えられたのだった。


 ケレからの通達があってから1ヶ月後に、ベラティ国から第一王女をお迎えした。

復興途中のため大々的にはできないが、フナフティ国をけん制するために、主だった要人の方々が参加した歓迎式典が開催された。


 第一王女は、ニルマニ・ラニ・ベラティ(年齢:18歳)小柄で小さな顔に菫色の大きな目が印象的な人だった。スワツール国についても非常に学んでいることが分かるほど、要人たちと無難に会話ができている。スワツール国の言語は話しやすいとは思うが、非常に流暢に喋っている。

 数日過ごしただけで、王宮に溶け込み違和感を感じさせない。場を和ますことができる人で、誰にでも話しかけ話術に長けている。


 自国から侍女も伴ってきていたが、スワツール国でも人選された侍女が数名担当している。

マチルダが、「ニルマニ王女は人気者ですね。何というかあの雰囲気がいいのかしら。可愛らしい見た目で、利発。誰にでも分け隔てない感じで接することができるから、嫌味を感じさせない。」べた褒めだった。

 ケレとも近しく接しているようで、寝る前のお茶の時間にはニルマニ王女の話が出ることが多かった。ニルマニ王女と私が接することは少なく、他から話を聞くばかりの状況が続いていた。


 そんな時だった。執務のことでどうしても理解できず相談したい案件があった。急いだほうがいいのかも悩んだ。ケレに執務室に行ってもよいかと伺いをたて、承諾を得たので執務室を訪れた。


 そこで、目にしてはいけないのではないかという状況を見てしまう。ニルマニ王女をケレが抱きしめていたのだった。

どうしていいか分からない私は、小さな声で「出直します」と一旦部屋をでた。

慌てて自分の執務室に帰る。マチルダが怪訝な顔で「どうされましたか?」と聞いてきたが、答えることができなかった。


 私はおそらく経験が足りないのだ。それは、特殊な状況にいたからというのもあるだろう。だから、経験したことがないことや感じたことがないことが起きると行動できない。

日常的なことでも分からないことがあると、こうして行動できないでいる。

誰でもそうなのかということが分からない。相談していいことなのか悩んだ。


 夕方、仕事が終わったディルとファビとライが久しぶりに部屋を訪ねてきた。

3人もニルマニ王女が素晴らしいと話し始めた。相槌を打つことくらいしかできない私だった。

 ディルが「悩みがあるのか?表情が暗いようだが」と言ったので驚いた。自分では気が付かなかったし、誰からも指摘されなかった。

ファビが、「そうだな、いつものエルの雰囲気じゃないな」という。ライが頷いている。


「えっ?なんで泣くんだ?」とディルが言って、自分が泣いているんだと気が付く。

これまで、涙を流すことなどなかった。

感情を持つな、出すなと教えられてきたからだ。

3人とマチルダ達侍女が心配そうに私を見ている。


 自分でもよくわからい。なぜ、涙が出ているのか。

私の些細な変化に気が付いてくれたからなのか?気遣いが嬉しかったのか?涙が流れることにも驚いた。

ディルが「何でもいいから話してみろ。考えるんじゃなくて、思いつくまま話してみろ。」と言った。


 私は、ただ言葉を紡いだ。

今日、国王に相談があり承諾をもらって執務室を訪れた。

そこで...国王とニルマニ王女が抱き合っている光景を見たんだ。

私は、どのように振舞うべきか分からなかった。

ただ、出直すと言って立ち去ることしかできなかった。そして、このことを誰かに話してもいいのかも判断ができなかった。

私は、どこか欠けているから判断に悩むのだろうか。そんなことを考えてしまう。

 何故、涙が出たのかと聞かれるとよく分からない。変化に気が付いてくれたから嬉しかったのか、気遣いが有難かったのか、悲しくて泣いたんじゃないことは分かる。

 スワツール国に嫁いできてから、ずっと走り続ける気がする。

これまでとは違う環境で、楽しかったり、嬉しかったり、悩んだり、怒ったり、自分だけど自分じゃないような感覚だけど、嫌じゃない。

 仲間がいるということが心強くて、自分一人じゃないんだと思うと強く優しく誰かのためにと考えて行動できる。そして成長させてくれることを知った。皆には感謝しかない。

 すまない。こんなことを王妃が話すこと自体あってはならないことなのだろう。


 誰もが黙って聞いてくれた。それからマチルダがそっと抱きしめてくれた。

ファビが、「国王がニルマニ王女を抱きしめていたことは確認した方がいいと思う。それよりも、エルは少し休んだ方がいいんじゃないのか?休んでいるところを見たことがない。それは、国王も同じだが。2人は自分たちの時間を持つべきだと思う。」

ディルが「そうだな。エル、少し休暇を取ってみてはどうだろうか。国王と一日でもいいから一緒に過ごしてみたらいいんじゃないか。今の時期なら、一日くらいなんとでもできる。」


 私は、「ありがとう。考えてみるよ。」と返事をした。

そして続けた。「もう一つ、私はニルマニ王女をよく知らない。皆は何だかんだと接点があるようだが、私は顔を合わせることもない。いつも皆から話を聞くだけだ。訪ねていけばいいのか?でも何のためにとも思う。ニルマニ王女は、私との接点がないだけで、他の者とは親しくしているようだから。」


 皆の表情が固まった。そして、誰彼となく視線を合わせて、そういえば、そうかもしれませんね。言われてみればなんですけど。 今、思い当たりましたと気が付いたように声に出すのだった。 



~読んでいただいている方へ~

読んでいただいてありがとうございます。

お知らせです。

明日と、明後日は投稿がありません。申し訳ありません。


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