第二章 ユンゲス辺境伯領
あらすじ
突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話
第二章にはいりました。
周囲の人々から優しく時に厳しく生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。
愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。
ケレが劇的な回復をみせた。浄化魔法で解毒をしたが、治癒魔法は使っていない。魔法を使うことは口外しないとケレと約束したからだ。
それに、魔法も万能ではない。自分の力で治るなら、自分の自然治癒力を補う程度の魔法にしたほうがいい。使えば身体が魔法に慣れてしまい効果が出にくくなる。
ケレは、普通の食事が取れるようになると朝から鍛錬も開始している。
元気になってきたし領地の視察に回りたいというので、付き添うことにした。
ファビはリブラン騎士団のことがあるので先に王都に帰った。
領内は家屋の崩壊が著しかった。家が壊れた領民は一時的に領主館に避難しているが、相当な人数になっている。
農作地も荒れており、崩れたり抉れているところや、大きな穴が開いているところ、斜面からの土砂に埋もれてしまったところなどがあり、暫くは農作業ができないのではないかと感じた。
人々は疲れており元気がない。狭い場所で気を使いながら生活している。
私は、アルドアルのデーメーテールにいるアドルフとアナベルに連絡をした。
緊急事態なので手を貸してほしい。食材が不足している。マルティンとアンゼリカがいるなら、家を建てに来て欲しい。資材はアルドアルの森に木材がある。アルドアルの街の人で手を貸してくれる人はユンゲス辺境伯領に来て欲しい。と手紙を書いて使者に託した。
アルドアルの街から、ユンゲス辺境伯領にたくさんの人が応援に来てくれた。
人間の力って凄いんだなぁということを、アルドアルの街の時も思ったのだが、またこのユンゲス辺境伯領でも強く感じるのだった。
マルティンとアンゼリカは沢山の職人さんを引き連れて来てくれた。住むところがないと困るだろう。いい材木を置いていてくれたから、直ぐにでも仕事にとりかかろう。そう言って着いた早々から仕事をしてくれるのだった。
多くの人が領主館で生活をしていると聞いて、家屋の状態を確かめながら修復できそうな物件から始めてくれた。自分の家に帰れると心も身体も休まるからな。1人でも早く家に帰してあげようと言って職人さん達に指示を出していた。
アドルフとアナベルはミッケルさんや他の研究員を伴って、たくさんの食材と一緒に来てくれた。
荒れた農作地を見て、遣り甲斐がありますねぇ。腕がなりますよ。と心強い言葉を言ってくれる。早速ミッケルさんが荒れた耕作地を見ながら、アナベル達に指示を始めた。
迎賓館の料理長ケビンとコックたちが食事を引き受けてくれた。迎賓館は料理長のニールスが仕切ってくれるから、こっちで精の出る料理を作るよと笑顔で言ってくれた。
ケビンは、野営の経験があるらしく外で煮炊きができるように一緒に来てくれたアルドアルの人達とテントを張ったり、竈を作ったり、薪を集めたりしている。
領主館に閉じこもってばかりだと気分が良くないだろう、天気が良ければ外で食べたほうがいい。応援の人達を見ると、きっと元気が出るさ。と自警団でお世話になった人たちも来てくれて、ユンゲス辺境伯領の人達を励ましてくれた。
領主館から少しずつ人が領内に帰ってき始めた。アルドアルから手伝いに来てくれた人達と交流も始まった。自分たちも出来ることをしていこうという思いになってきたようだ。
子供たちは元気だ。外のご飯が美味しと言ってケビン達を喜ばせてくれた。遊びの延長のようにミッケルさんやアドルフ達研究員とスコップや鍬をふるっている。明るい笑い声が聞こえてくると、大人たちも笑顔になる。
ケレは貧血になっているようで、顔色が戻っていない。動くと息切れがしたり立ち眩みがあるようだが気づかれないように振舞っている。強い精神力の持ち主だ。
領民に声をかけ、アルドアルの応援団に感謝を伝え、領内を隈なく歩き被害状況と復興状況を確認している。
ケレを襲った他国の兵士は、その場で自害したと聞いた。何がしたかったのだろうか。
ケレがいうには、おそらくスワツール国で災害が頻繁に起こっていることを聞きつけた他国が兵を出して様子を見たのだろう。あわよくば攻め入るつもりだったのかもしれない。自分がこうして回復していることが分かれば、戦争を起こそうとまでは思わないだろう。
アウグスリンデ国やオーレンスト国との友好国に手を出すようなことはしないだろう。
自害したのは、国を選定されると困るから捕虜にされる前に自死を選択したのだろ。
貧しい国もある。スワツール国は森の主のお陰なのか豊かな国だ。何か起こればその隙を狙う国が出てくるのだろう。ケレが無理をしているのは、他国への牽制もあるのだと思った。
森の主のことはケレに話した。広大な森なので、魔石を置いてシールドが張れるなら理想的だが、そんなことができるのか?と質問された。
アウグスリンデ国では、国の保護下にある森林や鉱山など立ち入りが制限される場所には、魔石のシートを張っている。
魔石はあるから試してみてもいいかもしれないと答えた。代わりになるものがあればいいが、なければ試させてほしいと話した。
森の主が心配なので一度アルドアルの森に行ってこようと思う。早朝に出発して1泊で帰ってくるとケレに相談すると渋い顔をされた。襲撃を受けたばかりの今は、用心して動かないでほしいということらしい。
私の顔を知っている人も少ないので大丈夫と思うが、駄目だろうかと紺碧の瞳を覗く。
ケレは、私からそうされると強く言い返すことができないようだ。「エルはこの最近、私にかけ引きをすることを覚えたようだな」と困った者を見るような目で私を見て、仕方がないと折れたのだった。
翌日の朝早くにアルドアルを目指して馬を走らせた。森の主の許に陽が沈むギリギリに到着できた。
変わりない様子に安堵する。森に入ると木々が騒めいた。森の主に治癒魔法を流す。
‘‘良かった‘‘なと頭の中に森の主の言葉が流れ込む。
‘‘儂は大丈夫じゃ。守ってくれてありがとう‘‘と言ってくれた。
シールドを張ろうと思っていると告げると‘‘問題ない‘‘と返事があった。
迎賓館に行き、マチルダ達に報告を行った。国王は元気になり視察に赴いていること。アルドアルからたくさんの人が応援に来てくれて、復興が進んでいること。皆が安堵の表情で喜んでいた。
ユンゲス辺境伯領から使者が来ていて、国王から伝言ですと紙を渡された。辺境伯領は順調に復興が進んでいる。エルはこのまま王都に帰り魔石の準備をしてシールドを張ってから辺境伯領に来ると良い。と書かれていた。
私は、申し訳ないと思うが指示に従わせてもらうことにした。森の主を守りたかったからだ。
翌日、役所に寄って看板や縄張りのお礼を言った。見回りは毎日1回必ず行っていると報告された。
私は王都を目指して出発をした。マチルダ達侍女も一緒に王宮に帰る。
王宮では、国王について宰相や大臣たちから質問攻めにあった。丁寧に返事をしていたがキリがない。各々が質問してきて、それに答えることは結構しんどい。
ディルやファビ、ライにどうにかならないかと相談する。知らん顔して用事だけ済ませてアルドアルに行くと良いと言ってくれるが、知らん顔ができないから相談している。
マチルダが、国王は時期に王宮にお帰りになります。と通達を出しましょうと言ってくれたのでお願いした。
私は魔石を持って翌日にはアルドアルへ向かった。
広大な森の各所に魔石を配置する。魔石の数も相当数必要で、それを決められた位置に配置するのは時間がかかった。やり遂げて、森の入り口に配置した一番大きな魔石に魔力を流すと次々と順番に魔石に魔力が流れる。全ての魔石に魔力が流れるとそれぞれの魔石が空をめがけて魔力を打ち上げる。頂点で一つに合わさりシールドが張られる。 何度見ても感動する光景だ。
森の主から‘‘やり遂げたな、ありがとう‘‘というメッセージが流れた。




