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第二章 国王襲撃

あらすじ

 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話です。


 第二章にはいりました。

 周囲の人々から優しく時に厳しく生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。

 愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。

 毎日欠かさず森の主を訪ねては治癒魔法をかけている。

少しずつ元気が出てきているように感じる。最近は、私が森に来たことが分かるのか、森に入った瞬間から森の木たちが枝を揺らしている。


 ファビが騎士団総長を連れてアルドアルの街に到着した。手紙を読んで驚いたようだ。

リブランの騎士団とのやり取りは、役所の時点から魔道具で撮影していた。直ぐにでも見ることができる。急かす様に話をする私。報告書も渡した。


 ファビが、いつもとは違う憤りを隠さない私を見て、「エル、考えられない騎士団の行動が報告されていたね。騎士団総長にも同行をお願いしたよ。リブランの街の人からも話を聞かせてもらおう。取り敢えず先に画像を確認させてもらう。」と言った。

 騎士団総長が「非常に迷惑をかけた。証拠が揃い次第、リブラン騎士団は厳重に処罰する。」と言ってくれた。


 関係者を集めて一緒に画像を確認してもらう。

役所内の映像には、私がいない時間帯に職員を馬鹿にする言動を繰り返す副騎士団長の姿が映っていた。

迎賓館の映像では、嫌がるメイドに抱き着く光景や引きずるように廊下に連れていく姿が映し出された。廊下で覆いかぶさる団員の姿にその場にいた誰もが絶句した。


 騎士団総長が、この魔道具は証拠品として預かれるだろうか?ここまでのことを行っているとは。王都に連行し処罰を行う。厳しいものになるだろう。被害はリブランの人々にも及んでいると聞いた。余罪がたくさんありそうだ。

そう言って厳しい顔で部下に指示を出し、リブランの騎士団の駐屯地へ向かった。


 ファビにお礼を言って、災害の状況を聞いた。ここ数日は災害の報告が上がってきていない。

被害状況を確認中だが、ユンゲス辺境伯領の地震は規模も大きく甚大な被害が出ていると報告を受けている。

現地に国王が視察に行っているが、道中も危険な箇所がいくつもあるようだ。


 そうして説明を受けている時に、マチルダが「緊急連絡です。」と険しい表情で側にきた。

こんなに取り乱すマチルダを見たことがない私とファビに緊張が走る。

「国王が視察中に他国の軍隊に襲撃を受け、重体と使者から連絡がありました。」


 私は一瞬何も考えられなかった。

しかし、経験が私を現実に引き戻す。頭を働かせろ、優先順位を考えるんだ。どの行動を一番に行うのか。指示を伝えろ。

マチルダに指示を出す。ケレの遠征先に向かう。準備を行うように。使者に連絡を。馬の準備を頼む。落ち着け。慌てるな。迅速に出発できるように滞りなく準備を進めよ。

 私は今から森の主のところに行く。挨拶をして直ぐに戻る。戻り次第、出発する。


そして、私は森の主の許に急いだ。森の主へ治癒魔法を流す。

ケレが重体と報告があった。私はケレの許へ行く。暫く此処には来れない。約束が守れず、すみません。と呟く。

 森の主から、私は大丈夫だ。国王は頑張っている。お前の治癒力で助けろ。と私の頭の中に森の主からのメッセージが流れた。

森の主の元に跪いて頭を深く下げ感謝と誠意を伝えた。


 迎賓館に帰ると準備が整っていた。

私はフードを被り準備された馬に騎乗した。ファビも同行すると待機していた。

マチルダから護衛を伴うように言われたが、先を急ぎたいからと断った。

ファビが、使者から国王のいる場所を聞いて地図を預かっている、というので直ぐに出発した。

急げば明日の夕刻に到着するという。


 ファビの乗馬の腕は確かだった。戦闘で鍛えられている私に遅れることなく付いて来ている。馬もよく走ってくれる。選りすぐりの馬を準備してくれたのだろう。

領内に入ったところで陽が落ちた。一度馬を変える。走りっぱなしで疲労しているのが分かる。

 ファビに夜も走れるかと聞いた。私は夜も走ることができるが、ファビや馬はどうだろうか?灯りは魔道具を準備する。真っ暗な中では走れないだろうから。

しかし、無理をする訳にはいかない。何かあれば時間をとられる。自信がないなら此処で一泊して早朝に出発する。

 「走ってみよう」とファビがいう。頷いて夜の道を走る。馬とファビの状態を見ながら、領主館を目指した。領主館までの道は、さほど地震の影響を受けていなかったようで、走り切ることができたのだった。

 

 明け方前に領主館に到着した。伝令が届いていたらしく、直ぐに開門してくれた。

フードを脱いでや屋敷の中に入る。ユンゲス辺境伯が出迎えてくれた。

挨拶を交わした後に、国王の襲撃と現在の状態の報告を受けた。

そのまま、国王が休んでいる部屋に案内してもらう。

 

 私が部屋に入ると、ファビが気を利かせて人払いがされた。

私は自分とファビに清浄魔法をかけた。ファビはとても驚いていたが、静かに頷いてそのままドアの前に立っていた。

ファビには、時間がかかると思うから休んでいてくれるように話した。


 私はケレの顔を確認する。ひどく険しい顔で目を閉じている。

毒の影響だろうか、顔色がどす黒くなっている。

ケレはユンゲス辺境伯領の目と鼻の先で数人の他国兵に襲撃されたようだ。

突如、毒を塗られた矢が飛んできた。避けきれなかった1本が左肩を貫いたそうだ。

 私は傷の確認を行う。左肩の矢が抜かれた部位は縫合されていたが変色しており、肉の腐った臭いがした。

毒の判別ができなかった。効果が定かではないが一般的な解毒薬は飲ませています、と説明されていた。


 私はケレの右手を握り、ゆっくりと魔力を流した。

毒は全身に回っており厳しい状況の中で、持ち前の体力で踏ん張っているという感じだった。

じんわりと毒を抜く魔法をかけていく。ここまで毒に侵されると、急激に解毒することは身体に負担がかかる。

慎重に丁寧に根気よく解毒を行っていく。時間を要する作業だ。


 どれほどの時間が経ったのだろうか。

ほぼ毒を浄化することができた。険しかったケレの表情が幾分か穏やかになっている。

荒かった呼吸が落ち着いていた。

私はファビに声をかけて、ケレの身体を拭くお湯や寝衣やシーツ類を持って来てもらう。

医師に左肩の縫合部は抜糸をしてもらった。

精聖水で毒を洗い流して数日後に再縫合してもらうことにする。毒で変色した部位を洗うのは痛みを伴うが、このままでは肩が壊死してしまう。

 眼を閉じているケレに声をかける。「今から毒に侵されている左肩を精聖水で洗い流す。ひどく痛むが我慢してくれ。」


 医師にできるだけ深く眠る薬剤を準備してもらう。暴れるようなら危険なので深い眠りに入ってもらうために準備をしておく。

 私は自分の手に浄化の魔法をかける。

洗浄を行う水にも浄化の魔法をかける。精聖水を作るためだ。

左肩に浄化をかけて作った精聖水をかけて洗い流し、傷口の中も洗っていく。

痛むのだろう眉間に深い皺が寄るが暴れることはない。時々呻き声が出る。

傷の中からドロドロと黒茶色の液が流れ出てくるので綺麗になるまで洗い流し続けた。


 相当量の精聖水を使って洗浄が終了した。変色していた創部の皮膚色が通常の色に戻ってきている。

恐らく毒は抜けきったと思う。創部には、持参していた薬剤を塗布して包帯を巻いた。

ケレの額の汗を拭い、全身を清拭して衣服とシーツ類を交換する。


 今から3時間おきに飲水と薬湯を飲んでもらう。おそらく熱が出てくるだろう。

熱が出て来てからが勝負だ。ケレの体力が持つことを信じる。

ファビには、ケレに熱が出始めたら交代してもらうかもしれないから、今の内にしっかり休養を取ってほしと指示をした。

ファビは、私に休まなくてもいいのかと気遣ってくれるが、今が重要な時だから傍にいて様子をみる。誰かには任せられないと答えた。


 3時間をむかえる前に熱が出始めた。菌を殺す薬湯と水分補給を行う。次の3時間は熱を下げる薬湯も追加で飲ませた。目を開けることはないが、薬湯と水分は飲んでくれるので安心する。

熱が高すぎると体力を消耗するので、時々熱を下げる薬を追加しながら、3時間おきに薬湯と水分補給を行う。発汗も凄いので身体を拭いて更衣も行う。

肩の傷は皮膚色が戻ってきたので縫合ができそうなので、医師にお願いしようと思う。

 

 ファビが交代できるかと聞いてきたので、少し休憩をさせてもらうことにした。ファビに負担をかけることになるが、もう暫くは協力をしてもらいたかった。

 3時間ほど隣の部屋で休養を取った。いつもソファーで過ごしていたから疲れがたまっていたようで、身体が軽くなった気がした。

ケレの様子を伺うと目が開いた。久しぶりに紺碧の瞳を見ることができた。

まだ、ぼんやりとしているが、ケレと名前を読んだら頷いてくれた。ケレの体力と忍耐力に感謝した。

 その後も、3時間おきに薬湯と水分補給を行う。少しずつ起きている時間が長くなってきたので、スープを飲んでもらう。肩の傷は縫合してもらった。医師がここまでよくなるなんてと驚いていた。

ケレのスープを飲み始めてからの回復がとても早かった。







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