第二章 森の主(第二話)
あらすじ
突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話
第二章にはいりました。
周囲の人々から優しく時に厳しく生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。
愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。
森から帰ると役所の中は異様な雰囲気だった。
役所の職員が、「お待ちしていました。騎士団の方が伐採者をどうしろというのかと揉めていまして」
どうしろというのかとは?どうゆうことだろうか?私は思案する。
あの森は国の管理地である。その森で勝手に伐採を行えば罪に問われるはずだ。役所の職員にも確認したが、その通りだと首肯する。
騎士団内で話ができる人を呼んでもらった。副騎士団長がきて、自己紹介もなく話し出した。
なぜ、忙しい騎士団を呼びつけたのかな?君がここの責任者?随分若いね。お坊ちゃんかな?まあいいや。あのね、教えといてあげるね。あの森は誰が管理しているかなんて表記がないんだよ。立ち入り禁止の看板もない、縄も張られていない。こんな状況で、彼らがただの森だと思って木を切ったとしても責められないでしょう。あのさぁ、騎士団に何をしてほしいわけ?国の管理が行き届いてないだけでしょ。騎士団には関係ないよね。この責任はどうやってとるの?
ねぇ、お坊ちゃん、こちらは、わざわざリブランから出向いてきているわけ。この責任はどうとってくれるのかな?
この副騎士団長は何を言っているのだろうか。確かに森には表記が見当たらなかった。見回りも不十分だったのだろう。確かにそのことは国の管理不行き届きである。しかし、騎士団の協力を仰ぐことのどこが間違っているのだろうか。
たまたま木を伐採していた彼らが横暴な人たちではなかっただけ。話を理解してくれる人達でよかったというだけのことだ。
それを、騎士団を呼びつけただの責任をとれだのどういう思考回路なのかと思う。
副騎士団長が話し出す。あのさ、坊ちゃんには分からないと思うから、こちらから提案する。
あの大きな建物に、ここにいる騎士団員を全員宿泊させるように。これは迷惑料だから。
あまりの要求に開いた口が塞がらない。要は迎賓館に泊まらせろということか。それも騎士団員全員を。
自警団の人が申し訳なさそうに私に話しかける。今更なんですが、あの騎士団の人達はやっかいな方々で有名なんです。決められた仕事はしてくれるらしいんです。ただ、それ以外のことをお願いすると報酬を要求するんです。それを聞いていたので、私たちは自分たちで自警団を結成することにしたんです。早くお話すればよかったです。
なんて酷い騎士団なんだろう。そういえば、諜報活動中にもこんな人がいた。権力を振りかざして金品を要求していた。
私が、この副団長とやりあえるだろうか、納得させてお引き取りしてもらえるのか?そんなことを思案していると、副団長が、お坊ちゃんには考えるのは無理だよね。自分らは先に行くから、ここの後始末はしっかりしなよ。おい、みんな行くぞ。と騎士団員に指示を出した。
何を勝手なことを言っているんだろう、迎賓館に泊まるとかできません。無理です。と慌てて追いかける。団員を先に迎賓館に向かわせて、副団長が私に言う。
あのね、お坊ちゃん、迷惑を掛けたら迷惑料を支払わないといけないことはわかるかな。
計画的な行動のようで、最初に出発した騎士は既に迎賓館に到着し、押し問答をしていると報告がきた。
日も暮れてきている。この人達を泊めるしかないのかと溜息がでる。責任は私が負うしかない。直ぐに指示を出す。
役所の職員には日が落ちきるまでに看板設置と縄張りをお願いした。国王の名前入りで頼んだ。
次に迎賓館にいるハインリッヒ館長に、騎士団は1階にある部屋に宿泊、2階以上の部屋は全て施錠、宿泊客には事情を説明して、騎士団と接触しないように配慮するようにと指示を送った。マチルダ達侍女も急いで迎賓館に向かう。
私は自警団の人達とアークレイリ国の6人に駅舎の宿泊施設を使用してもらう手筈を整えた。ファビに今日一日のことを連絡し、司法の判断を仰ぐことにした。
他国の人達なので、勝手な行動をすることは辞めた。6人には事情を説明した。こんなに大事になるとは考えていなかったようだ。
迎賓館に到着すると宴会の間で飲食をさせろと副騎士団長がハインリッヒ館長に詰め寄っている。
私は、「本日1泊していただきますが、明日の早朝にお帰り下さい。明日はお客様が多く来られます。ご協力をお願い致します。」と頭を下げた。そして、副騎士団長に書類を渡し、迷惑をかけないという書類です。署名してもらいます。騎士団の方々は紳士な方が多いので、署名できますよね。と言って署名押印させた。
宴会場の準備ができるまで各部屋で待機してもらう。従業員を集めて注意事項を話した。
決して一人では行動しない。判断に困ったら私かマチルダか館長に報告する。恐らく非常に無礼な人達であろう。無理難題を押し付けてくるだろう。一人一人が細心の注意をしながら対応していくように。自己防衛に努めて下さい。単独行動は絶対にしないで下さい。お願いします。と説明した。従業員達は、緊張の面持ちで深くうなずいた。
マチルダと館長と調理を行うニールスとケビン、配膳担当のメイドたちに話をする。
騎士団員は飲酒をすると思います。相当量のお酒を飲むと思います。開始から度数の高いお酒を提供しようと思います。
暴れる人もいるかもしれません。その時は私が対処します。眠くなる薬草を摂取してもらいます。報告を怠らないようにお願いします。
メイド達以外の4人は場数を踏んでいるのか落ち着いた表情だった。不安そうにしていたメイド達にマチルダが私たちがサポートしますと言ってくれた。
そして宴会が始まった。肉料理を中心にお酒が進む味付けにしたそうだ。すごい勢いで、料理とお酒がなくなっていく。1時間もしない内に、歩き回る、大声で喋る、卑猥な話をはじめる、歌をうたう、テーブルの上はぐちゃぐちゃになっていた。
廊下で悲鳴が上がった。駆け付けると騎士の一人がメイドに伸し掛かってる。私は騎士の襟首を掴み引きはがした。メイドは震えて泣いている。マチルダに頼んで別室で介抱してもらう。
私は相当に怒っている。宴会場に戻り大声で副騎士団長を呼ぶ。私の剣幕に宴会場が静かになる。
「副騎士団長、あなたの部下が罪を犯しました。この責任はどうとっていただけますか?いや、今回のことは全てを騎士団本部に報告して処罰してもらいます。」「それから」と話を続けようとした私の言葉を遮り副騎士団長が話し出す。
「おやおや、お坊ちゃん。罪とはなんでしょうか?証拠がありますか?身内の証言とかでは困りますよ。きちんとした証拠を示せるんですか?」
非常に頭にくる男である。私は何度も深呼吸して落ち着くように心掛ける。「人の話は最後まで聞け!この騎士団はそんなこともできないのか?心配しなくても証拠ならある。魔道具で画像を撮影している。言い逃れできると思うな。言っている意味が分かるか?明日は貴様らの処分の日だ。覚悟しとくように。」戦場で戦ってきた経験のある私は、騎士団全員に向かって高圧的な態度で言い放った。
「宴会は終わりだ、部屋に帰れ。」と言うと騎士団員は無言で各自の部屋に引き上げていった。
副騎士団長が「画像が撮影されているのか?」と聞いてきたので、私は、「そうだが。ここは国家間協議を行う重要な場所である。そんな重要な場所であれば画像の撮影くらい行っていて当然だろう。知らないでは済まされないからな。」と言って威圧した。副騎士団長は、黙って自分の部屋に向かった。
夜間に何か起こるかもしれないと思ったが、魔道具の設置場所が分からないから何もできなかったようだ。早朝に副騎士団長に指示を出し、迎賓館から撤退してもらった。
とても疲れた。何とか乗り切れた。騎士団員に伸し掛かかられたメイドは落ち着いてきたようだ。暫くは注意して見ていくとマチルダが気を配ってくれるそうだ。
あとはファビの到着を待つ。急いで来ると連絡があった。騎士団総長も連れ立ってくるそうだ。
私は、森の主の許へ向かった。今日も幹に手を当てて治癒魔法を流してみる。昨日より元気そうに感じる。ただ、前に来た時に感じた雄々しさがない。明日も来ますと言葉をかける。葉がざわめいた。
森の出入り口には看板が立っており、進入禁止と書かれて杭が何本も立っている。それが縄で繋がれている。
この森は大きい。森の主を守るにはこの程度の対策では不足だろう。魔石を置いてシールドを張れるのだろうか?他に何か出来ることがあるだろうか?ケレがいてくれたらと思った。
~読んでいただいている方へ~
読んでいただいて、ありがとうございます。
今回の物語は、悪騎士団を描いてみました。よければ感想をお聞かせいただけると幸せます。
これからも、よろしくお願いいたします。




