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第二章 帰国

あらすじ


 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話




 第二章にはいりました。


 周囲の人々から優しく時に厳しく生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。


 愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。

 ムマキルの皮の鞣し作業工程が一通り終わった。

 20種類の生地が出来上がった。漬け込んだ薬液によって、特長・特質・特性が異なる。

 今後は、ここにある20種類をそれぞれの目的に合った場所で活用してもらうことになるだろう。

 見本の生地を3組作成する。一つは研究員が持ち帰る。あとは、長兄に渡す見本が一つと、私がスワツール国に持って帰る見本が一つ。

 今後は村の女性陣が同じ様に生地を作ることになる。見本が必要な人たちには彼女達にお願いしてもらうことになる。


 私が選ぶ生地は、耐久性と通気性、伸縮性があり、しっかり水を弾くということを選択することにした。戦闘に参加する訳ではないので丈夫さより、着心地の良さを優先する。

 研究員は、一度見本品を研究班に届け出を行うということで騎士団に帰っていった。


 私は女性陣に私が希望する生地の作成をお願いした。長兄からは、丈夫で撥水効果の高い生地を依頼されたのでそれもお願いした。

 試作品の時は1枚の皮を小さく切ったが、次からは大きな皮で同じ工程を行わないといけない。

 女性たちには重労働になるだろ。心配したのだが彼女たちは「農作業も重労働、同じ重労働なら遣り甲斐があって、みんなで協力して頑張れる仕事の方がいい。」と言ってくれた。勿論、農作業精を出しますけどねという彼女達は、本当に働き者だ。


 女性陣と話し合ってムマキルの皮は大きいので、布地になるなら裁断できるように長方形が好ましいと結論が出た。

 長さを揃えた長方形にカットすれば薬液に漬けるのも条件が同じになると考えて、長い長方形の皮を折りたたんで大きな樽に入れて薬液に漬けこんだ。

 今後は需要が伸びていくことだろう。彼女たちなら任せることができる。何があっても踏ん張って乗り越えていける力を持っている。

   


 樽に漬けて一か月がたった。思っていた通りの生地が出来上がってきた。この生地をお土産にスワツール国に帰ることになる。やり遂げた嬉しさが込み上げた。


 公爵家の人達の私への対応は変わらなかった。私が希望したからだ。

 私の生い立ちの話を聞いても、これまで噂などで聞いていたことと大きく違っていなかった。

 私が嫁いだことでアウグスリンデ国に度々帰ることがないから、これまでと同じように接してほしいとお願いした。

 兄たちは納得してくれた。両親は話し終えると疲れてしまったのか、領地に帰ることにしたようだ。

 最後に「あなたが私たちの娘であることに変わりない。出来ることはしようと思う。今までと同じように接してくれということならそうする。」と言って、数日後に領地へ帰っていった。

 


 私も約5か月ぶりにスワツール国に帰ってきた。すっかり、自分の居場所なんだな、帰って来たなという気がして自分の在るべき場所ができたことが嬉しかった。


 ケレやマチルダ達侍女やディル達が、とても喜んで迎えてくれたことも嬉しかった。皆にこれが成果だと言って生地を見せると驚いていた。

 詳しい話は追い追いしていくが、これを身に着けることで、洗濯物が随分減ると思うと説明すると女性が喜んでいた。まだまだ洗濯は重労働だからだ。


 マチルダ達侍女と相談して、入浴の手伝いや水遊びの時など、水で濡れるときに着用できるようにしようと話した。クレイのマッサージの時も泥や水で汚れるので、使ってみることにした。

 色が薄茶色なので着色も考えていくが、先にデザインをどうするかということになった。身体にピッタリしている生地は、身体の線がわかるから抵抗感があるようだ。

  

 マチルダがドレスを作ってもらっているデザイナーを紹介してくれた。女性のデザイナーだったからか非常に興味を持ってもらえた。

 お針子さんも交えて何度も相談会が開催された。

 最初に手掛けるのは入浴の手伝いで着用する服にした。使用頻度が高いからだ。それに、誰かに見せるものでもないというのも大きな理由だ。

 それでも若い女子だ。デザインには拘る。染付ができればイメージが変わるかもしれないねと話していた。

 貴重な生地なので、染の職人さんに相談して少し切った生地を染めてもらうようにお願いした。

 職人さんから、元が皮なら染めることは可能だと思うと言われたので、侍女達に人気のあった濃紺とブルーグレーの2色をお願いした。

 思い描いた感じの色で染め上がってきたので、デザイナーと相談して半袖のワンピース型でスカート丈を膝上にして中に短いズボンを履くことにした。短いスカート丈が苦手な人は長いズボンも準備した。

 着用してもらうと、軽いし動きやすい。身体にフィットしているから窮屈かと思ったけど伸縮性があるから全く気にならない。と侍女達からの評価がよかった。

 

 入浴の手伝いは汗をかくので着替えをしなくてはいけないが、これだと洗濯が簡単にできる。そして乾きが早い。汚れも直ぐに落ちる。

 染色家やデザイナーとお針子のお陰で見た目も整って見える。着用しても違和感がない。

 これまでは綿のワンピースのような服だったので、下着から全部を洗わないといけなかった。薄手のものは透けるので着用できないなど苦労したが、これからは解放されるねとみんなで喜んだ。


 ムマキルの皮の生地は、アウグスリンデ国とスワツール国で需要が高まり、供給が追い付かないほど人気商品になった。ジクロフ村は新たな産業に多くの人が集まり、村の女性陣が大いに活躍して新人の育成をどんどん行っているそうだ。


 ケレは見本を見ながら、兵士達や労働者は厚手の生地を使った制服や作業服を着用するが、洗濯や乾燥が大変だった。この生地があれば随分楽になるだろう。

 遠征用のテントも作れるな、防水、防寒具としても使えそうだとどんどんアイデアを出してた。

 管財資産課のライは、仕事が増えたよぉと時々泣きごとを言いに来る。マチルダから頑張りなさい!と尻を叩かれている。


 兄達とは時々手紙で近況を報告するようになった。生地の件では、開発は私なのだが作ってくれているのはジクロフ村の人達なので、優遇してもらっている。

 ナトからは、ポーションを作りに来てくれぇと手紙が来るので、丁寧に行けませんとお断りしている。

 負担に感じることもなく、寂しさを感じることもない、丁度良い距離感で付き合っていると思う。


 ケレから「しばらくは王宮で過ごす時間ができるかな」と問われて、「はい」と返事をしたが「当てにできるのだろうか」と返された。

 私が自由に動けるのはケレの思いやりがあるからだ。私のことを思いやってくれるケレに「ありがとう」を伝える。ケレからは、いつか「愛してる」といってくれるかなとどぎまぎすることを言われるのだった。


 

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