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第二章 ジクロフ村と鞣し

あらすじ


 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話




 第二章にはいりました。


 周囲の人々から優しく時に厳しく生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。


 愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。

 翌日は騎士団の研究室に行った。王妃教育が始まるまでは、騎士団の戦略班に所属していたので顔見知りもいた。研究室にも諜報活動で持ち帰った品物を届けていたので、知っている人もいた。研究班の人は研究にのめりこむタイプの人が多いから、素材を持ち込む私のことは認識してくれているようだった。


 長兄が、研究班の班長ブクルに「ムマキルの皮を鞣しにきた、協力してほしい。」と声をかけてくれた。   

 ブルク班長は「公爵閣下自らお出でになるとは、ムマキルの皮は鞣せませんよ。こちらも何度も挑戦していますが、全く柔らかくなりません。本当にビサウ国では生地になっていたんですかね?」と困ったもんだという顔で返事を返した。

 長兄が、「私の妹だ。知っていると思うが。妹の調合した薬剤で鞣してもらいたい。協力してくれる者がいるか?」と言うと、数名がこちらを向いた。

 ブルク班長が、「前もってご連絡していただかないと困りますね。他の研究を請け負っていて忙しいんですよ。」と答えると「私たちが協力しましょう」と4名が手を挙げてくれた。

 ブルク班長は、「勝手なことをいうな、別件で忙しいのに4名も抜けたら研究が進まなくなる」と大きな声で怒鳴った。

 4名の研究員が「先に手掛けていたのはムマキルの皮です。現在進行中の研究は緊急性が低いですよね、依頼元に遅くなることを連絡してください。私たちのことは暫く当てにしないで下さい。」と言って、私のところに来た。


 長兄が、ここでは話ができそうにないから別室にいこうと言って、みんなを第二騎士団の談話室へ連れて行ってくれた。

 私は「ご無理を言って申し訳ありません。私のことは知っておられる方もいらっしゃると思いますが、諜報班に所属していましたエミル・アレーントです。ムマキルの皮の鞣しについてですが、研究内容を教えていただける範囲でいいので教えてください。私からの提案を聞いていただいて協力していただけそうならお願いします。」と頭を下げた。

 4名はそれぞれが自己紹介をしてくれた。研究内容は進んでいないので、今までの経緯は全て説明できます。自分たちも本当にあの皮が生地になるならその瞬間に立ち会いたいです。と好奇心に満ち溢れた目で私を見ていた。

 ブラジ 男性 30歳 

 チリラ 男性 28歳 

 セラ 女性 26歳 

 コマナ 女性 20歳

 ムマキルの皮の研究にはあと2名参加していましたが、意欲をなくしていました。全く研究に進展がなかったからです。

 研究内容も見せてもらった。様々な薬草液に漬けてみたが変化なしという記述ばかりが続いていた。


 私からの提案は2点です。

1,水量が確保できる場所で洗いをして皮の余分なものを除去する

2,薄くなった皮を薬液につける

 1点目の洗いをするというのが重労働になると思います。そして臭いも強烈と思うので郊外が良いと思います。不要なものは土の中に埋めないといけないと思うからです。

 2点目の薬液ですが、何種類か準備してきました。配合表は後でお渡しします。


 4人は怪訝そうな顔をしていたが、やってみましょう。このまま終わるのは自分たちも本意ではありませんから。と言ってくれた。

 場所の選定は長兄がしてくれると言ってくれた。今日は一旦解散で場所の確保ができたら集合することにした。

 やはり、一つの目標に向かって班で動くことはやる気が出るな。

 自分には合っているんだろうなと思うのだった。



 候補地が決まった。公爵領にあるジクロフという村で山や森そして大きな川がある。川の水を引いて洗いを行い不純物を埋める土地も確保できそうだ。大きな森もあるから薬草が手に入るかもしれない。

 長兄からの提案で工房のような建物を準備した方がいいだろうということになった。村には村長を含めても100人くらいの人しかいない。農業で生計を立てているが生活は厳しく若者は街に出稼ぎに出ている。もしムマキルの皮ので生地ができるなら産業として取り組むことができるから協力してくれるそうだ。


 候補地を研究員の人と私の5人で見学に行った。 

ジクロフ村から数キロ離れたところが候補地だ。大きな川と森までの間に見渡す限りの草地が続いている。アウグスリンデ国では魔法が使えるので、川から水を引いて洗いができるし排水を流せるように大きな穴を掘ることができる。

 魔物討伐では、死んだ魔物は全て土の中に埋める。他の魔物が寄ってこないように迅速に行わなければならないので、土の掘り起こしや魔物を埋める作業は魔力量が豊富で魔法が使える私か長兄の仕事だった。水路を作ったり穴を掘ったりすることは何ら問題ないことだ。


 研究員4人に構想を伝える。川から森に向かって水路を作る→水路から動力で水をくみ上げてムマキルの皮の洗いを行う→排水が流れ込むように土を掘り起こし大きな穴の中に流れ込むようにする。

 ムマキルの皮は小さな山一つ分と言われている。この土地の広さなら十分だと思う。水路や土の掘り起こしなどは私が行う。動力の水のくみ上げは研究班にお願いしたいがどうだろうか?と話を向けると、これまで使用してきたものに手を食えれば可能だと思うと返事があった。


 工房は長兄の取り計らいで準備が進んでいる。ムマキルの皮は討伐後のものを騎士団が運んでくれる手筈になっているそうだ。騎士団にお世話になるならと治癒回復促進のポーションを作って渡した。

 薬草はジクロフ村の森に豊富に自生していたので、新鮮な薬草を手に入れることができた。

 ナトから「自分を優遇してほしい。エルのポーションは効果がアリアリだから医務室管理にされて手に入りにくいんだよなぁ」と言っていたから、何本か渡した。こんなに喜んでくれる?というくらいに感謝された。



 ジクロフ村での作業が始まる。

 ドクダミ・ヒメハギ・ワレモコウ・アカメガシワなど洗浄効果の高い薬草を煎じる。ヤシ油や海藻や灰などを加えて洗浄剤を作った。ムマキルの皮にくっ付いている脂肪や毛、血液など汚れを落としきることが大切だからだ。薄い皮が出来上がるまでとにかく洗浄液を使って洗いを行う。重労働だし時間もかかる。

 工房が出来上がったので、ムマキルの皮を運んでもらう。ジクロフ村で手伝ってもらえそうな人たちに声をかけた。賃金が貰えるならと隣村からも手伝いに来てくれる人がいた。

 私と研究員と10名くらいの手伝いの人達で作業を行っていく。洗浄剤を皮に撒いて束子でこする。直ぐに汚い色になるので水で洗い流す。かなりの力で擦らないと汚れが落ちない。同じ工程をひたすら繰り返す。


 研究員の女性2名は男性陣に混じって、音を上げることもなくこともなく黙々と作業を行っている。

そうなると男性陣も作業を黙ってやるしかないという雰囲気で仕事をする。

 嬉しいことに村から女性が手伝いに来てくれるようになった。「聞いたら、仕事といっても掃除や洗濯みないなことだというからね。私たちの方が役に立つと思って来てみたのさ。」とジクロフ村の村長夫人が話してくれた。


 彼女達の腕前は凄かった。汚れを確認しながら的確に落としていく。「この洗浄液は良く落ちるけど、油をとるなら家の庭にあるザボンを持って来てもいいかい?」と言ってザボンの皮でゴシゴシこすったり、使用済みのお茶葉を撒いたりして汚れ落としをしてくれた。


 そうすると話を聞いたと、次々に女性が集まってきた。

 ジクロフ村のご婦人方から、ここの工房に厨房を作ってくれないかい。そしたら年寄りは食事が作れるし、遅くなっても出来た食事が持って帰れる。若いお母さんも仕事に来れるから。男の手じゃあ、私たちがするほどには綺麗にはならないよ。と思いついたことを提案してくれる。

 私が長兄に報告して、工房横に厨房が出来上がると男性陣は撤退していった。女性陣が張り切って仕事をすることになったからだ。


 女性陣は厨房を力仕事が苦手な女性に任せ、元気のある女性がムマキルの皮の洗いをする。若いお母さんは子供を連れてきても年配の女性陣が厨房横の休憩室で子供の面倒を見てくれる。

 こんなに働きやすい職場はないんじゃないかいと言って作業に精を出してくれるのだった。


 男性の研究員が「こんなに綺麗に薄い皮になるんですね。」と驚くほどに汚れや付着物が落ちた。

これからは、この大きな皮を小さくカットしたものを数枚作って薬液に漬ける作業に移る。

 次のムマキルの皮が届いているので、女性陣には皮の洗いをお願いする。

食事もできてお給金ももらえて助かるねぇといって、彼女たちは洗いに精を出してくれるのであった。


 小さく切ったムマキルの皮を20種類の薬液に漬けてみる。栗やウルシやオークなどの樹皮や果実などを乾かして粉状にする。それを煮出した液と薬草から煮出した液をまぜたものにムマキルの皮を1か月間漬ける。


 ムマキルの皮を漬けこんでいる間に、女性陣の中から数人、薬液の作り方を覚えてもらうことにした。人選は話し合ってもらった。これから順調に鞣しができれば、薬液はもっと必要になる。正確に覚えて他の人にも伝授してもらわないといけないということを説明した。

 ジクロフ村の村長夫人と隣のフスコデ村の村長夫人と若いお母さんが4名薬液作りを覚えることになった。20代から40代でやる気に満ちた人達だ。

 配合の種類や量は紙に書いたものを渡した。器具を使って乾燥させたり砕いたり煮出したり、薬草も森にとりにいかないといけない。薬草も見た目が似ているものがあるから、特徴を詳しく伝えて採取してもらう。全ての工程を必ずペアで行動してお互いが確認する。心配なら違うペアにも確認してもらうということを守ってもらった。 


 1か月漬かったムマキルの皮をいよいよ確認する日がきた。緊張する、思い描いた生地になっているだろうか?

恐々しながら薬液からムマキルの皮を上げていく。皮の色は薬液によって様々な色に変化している。

触ると柔らかい物から、少し硬いものがある。少し伸びるものもある。

「成功ですね!」と研究員が歓喜の声を上げる。「はい、今の段階までは考えていたものと同じくらいのものができています。乾燥してみないとわかりませんが。」と答える。


 遠心力を利用して皮から水分を抜いた後に陰干しをする。その後に蜜蠟とホホバ油を混ぜたクリームを塗っていく。その間も機械で皮を揉むようにして柔らかくしていく。

 こうして20種類の生地が出来上がった。ここから耐久性と通気性、撥水性、伸縮性を確認していく。目的に合った生地を選択していく作業を行っていくことになる。






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