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第二章 祖国へ

あらすじ

 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話


 第二章にはいりました。

 周囲の人々から優しく時に厳しく生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。

 愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。

 長兄から手紙が届いた。

 ビサウ国の魔物ガネーシャの皮を使った生地について、前回の手紙では入手ができなかったと書いたのだが、それには続きがある。

実はエルから報告を受けて以降、そのような生地があるのなら取り入れるべきだという意見が、アウグスリンデ国の騎士団の中で多くでた。

ガネーシャは手に入らないが違う魔物の皮で代用できないか研究をしていた。

魔物ムマキルなら代用できるのではないかと試していたが鞣しができなかった。

今は膠着状態のまま放置されている。ビサウ国では何らかの薬草を使って処理をしているようだが、情報が得られないため手の打ちようがないと担当者が諦めてしまっていると書かれてあった。


 更に、興味があるならアウグスリンデ国に里帰りして、ムマキルの皮を見てみるといい。

いい思い出がないだろうと思う。エルが嫁いでから、私たちも反省することが多くあった。エルを守るためと言って秘密を隠すのではなく、当事者には時期を見て話しをするべきだった。間違った対応をしてきたことについて、謝罪はしないでおこうと思う。謝罪されても過去は変えられない、それならエルが望むことに協力をしていこうと思う。エルが謝罪を求めるなら勿論そのつもりであるし、詳しく話が聞きたいということなら分かる範囲内で話ができる。


 手紙を寄越してくれてありがとう。スワツール国で大事にされているようで安心した。王妃という立場では、簡単に帰ることはできないだろうがムマキルの皮は騎士団の研究室にあるので、興味があるならいつでも帰ってくるといい。と書かれていた。


 長兄からの長い手紙を読んで、家族の中でも一人一人の思いや考えの中に葛藤があったのだろうと思う。謝罪は必要ない。公爵家での生活が今の私を作っているから感謝もしている。会ってもきっと昔のままの距離感なのだろうが、それでいいと思う。変わられても変に居心地が悪くなりそうだ。


 ムマキルの皮には興味がある。おそらく樹液と混ぜた薬草が必要なのだろう。里帰りと書いてあるが仰々しいのは困るので、こっそり帰ろうかと思う。ケレに相談してみよう。また長く王宮を空けることになってしまうな、と申し訳ない気持ちになった。

  


 寝る前のお茶の時間にケレに手紙を見せた。

読んだ後に「これを見せるということは、ムマキルの皮に興味があるからアウグスリンデ国に行きたいということか?」と顔を覗き込まれた。直ぐ目の前にあるケレの紺碧の眼を見つめながら「行きたいと思う。」と答えた。

 フッと抱きしめられて唇に何かが触れた。目を覗き込まれて「色々な表情ができるようになったな。」と優しい顔で笑っていた。「今のは口付けをしたのか?」と呟くともう一度唇に柔らかなものが触れた。今度はしっかりと触れた。

 「エル、私はこうしてエルと過ごす時間がとても愛おしと思う。離れたくないとも思う。しかし、私は国王でもある。アルドアルの功績を評価するなら期待以上の結果を出してくれた。その実績を加味して判断をするから、私に提案書を出して説明会をしてみてくれないか。」「納得のいくものであれば許可しよう」と言ってくれた。

 私は、「また長く王宮を空ける思います。王妃不在で迷惑をかけると思います。ですが、やりたいと思うので説明会をさせてください。」と返事をした。


 「あのー、さっきのはなんでしょうか?初めてのことなので、あれでよかったんでしょうか?」と挙動不審になっているようだ。言葉遣いもおかしい。身体が熱い。あわあわとした感覚が襲ってくる。

 ケレが「まぁ、頭を撫でるようなものだ。本格的なことはもう少し待ってからにする。」

 私は「はぁ…」と締まりのない返事をすることしかできなかった。


 提案書の作成は直ぐにできた。ビサウ国で諜報活動をしていた時の情報が役に立った。

兵士が着用していた生地は、軽くて薄くて動きやすい。薄いが強度が高く鋭利な刃物でかなりの力を入れないと切れない。水をはじく機能があるので濡れて身体が冷えることが少ない。その割に通気性が生地の中が蒸れることがない。魔獣の皮であるが、鞣してあるからか魔獣臭さがない。

 量産できれば使用目的が多岐にわたると考えられる。衣服以外にもテントや幌にも使える。需要度は高いと考えられられる。と言った内容を説明会で話した。説明会はケレといつものようにお茶を飲む時間に行われた。

 ケレから、「どのくらいの確率で同じものができそうか?」と質問があった。

「ガネーシャとムマキルは呼び方が国によって異なっているのではないかと考えられるほど似ています。私も鞣しについて詳しい情報を得ていないので、予測でしか返事ができないのですが、おそらくかなり似たものが出来上がると思います。長兄の手紙では詳しい研究内容が書かれていませんが、薬草だけでは鞣しができないと思うので材料と配合を変えていけばできると考えています。」と答えた。


 アウグスリンデ国に行くとしたら、一人で行きます。国境沿いまでは鉄道がありますし、それからの道のりは馬で移動します。おそらく手紙を出せば国境沿いまで公爵家の誰かが迎えに来ると思います。研究をさせてもらうだけなので、私一人で行かせてください。とお願いした。

 

ケレは、「分かった、明日返事をする。」と言って眉間を揉み始めた。疲れているようならマッサージをしましょうかと提案する。「お願いする。今日の案件は少し揉めてしまってな、くだらない内容だったから余計に疲れた。」というので、念入りにすることにした。

私のベッドで横になってもらい、オイルは安眠効果のあるものを選択した。腕や肩が非常に固まっていたのでゆっくり気を流すようにマッサージを行った。背部の施術途中で寝入ってしまったケレに4時間くらいで起きるかな?と思って、私も広いベッドの端で横になった。

気が付いたら朝で、ケレが「こんなに寝てしまったのは幼少期以降なかったかもしれない」と驚いていた。穏やかないい朝を迎えたのだった。






 お疲れ様です。読んでいただいている方、評価してくださっている方、ありがとうございます。感謝です。

 次回は祖国に帰り、王家や公爵家の人達と対面してどんな展開になるのかと思っています。魔獣の皮とも格闘します。

 恋愛要素は極めて少ないですが、人間模様は多いと思います。

 これからもよろしくお願いいたします。

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