第一章 ソフィアとアドルフとガラスの行末
あらすじ
突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話
アンゼリカか、ソフィアがきたけど会いに来れるかしら?と連絡がきた。オーレンスト国に向かって馬車が出発した日の夕方近くのことだった。明日の朝に会いに行く約束をした。
翌朝にアンゼリカの自宅を訪ねる。彼女は、アルドアルに家を建てた。仮住まいだと落ち着かないからと言う理由だった。実家は、実家。ここが私の住処ね。と言っている。
アンゼリカが、ソフィアはデーメーテールにいるから、一緒に行きましょう。と詳しい話は、本人の顔をみてからにしましょうね。と馬車に押し込まれた。デーメーテールに到着すると、アドルフさんが出迎えてくれた。職員用の宿泊施設の食堂に行きましょうと案内された。食堂の椅子にソフィアが腰かけていた。「初めましてですかね。ソフィアと申します。」といってぺこりと頭を下げた。「初めまして、エルといいます。お会いする機会がありませんでしたが、アルドアルの街には何回か来られているんでしたね。」と挨拶をした。
アンゼリカが、お茶を入れながら「どこから話したらいいかしら、時間がある?あるなら最初から順を追って話すわね。」とここまでの経緯を話し出した。
ソフィアは、連絡をした次の日にアルドアルの街へやってきたのよ。デーメーテールの話をしたら、現場を見て担当の人と話がしたいというから連れて来たら、アドルフさんが詳しく説明をしてくれたの。ソフィアがガラスの原料になる石があるか探しに行きたいというから悩んでいたら、アドルフさんがソフィアをクラエイヤ火山まで連れて行ってくれることになってね。どのくらい通えばいいのか分からなし、アドルフさんもお仕事があるでしょう。アドルフさんが、それでもお願いしているから身だからと付き合ってくれてね、何とか珪砂が見つかったから、ここでガラスが作れそうという話まで進んだのよ。でもね、問題はソフィアの家族なの。前にも言ったけど、家から出さない方針だから、アルドアルの街に長く居ることに反対してね、そしたらアドルフさんが、私と結婚したらいいんじゃないかというから驚いたところで、今度は、ソフィアがすんなり受け入れてよろしくお願いします。なんていうから、いや二人がそれでいいのならいいのかしら?急展開過ぎて分からなくなってきたわとアンゼリカが頭をかかえた。
アドルフは伯爵家の長男で、家督は弟が継ぐことになっている。農政局研究室に入職した際に、自分は研究に一生を捧げるので家のことは弟の任せることで一族も納得してくれているそうだ。今はまだ身分が伯爵なので、ソフィアの家に結婚を申し込めば受けてくれるはずなので、そうしたいと真剣に話す。ソフィアも隣で頷いている。
結婚はそんなに簡単に決めてもいいものなのか分からないがというと、アドルフが家族の形はそれぞれだと思う。それはこれから二人で考えていくから心配ない。ソフィアとならそれができると分かったから結婚しようと言ったんだ。ソフィアも同じ気持ちだ。というとソフィアも私もアドルフさんとなら家族になれると思います。と答えるのだった。
伯爵家からソフィアの家に婚姻の打診がされていて、おそらく断られることはないから、このまま婚姻を結ぶことになるだろうとアドルフがいう。
そこまで二人が向き合っているなら、こちらから提案できることはないように思えた。私だけでは判断しかねるので、ディル達に相談することにした。
ディルとファビとライの3人がデーメーテールに来てくれた。ディルから「国王と今回の視察について話をしているか?オーレンスト国の王妃に係りっきりで話をしていないのではないか?」と聞かれた。確かに行事で集まるとき以外で、二人で話をする機会がなかった。報告は行っていたが、それでは駄目だっただろうか。
ファビから、「ここは、私たちが話をまとめてみよう。エルは国王と話をしてこい。国王は、明日には王都に向かって出発しないといけないだろうから。」といったので、素直に従いことにした。
迎賓館では、マチルダが待機していた。今からだとアフタヌーンティーの準備になる。昼食を食べていないようなら軽食を多めに準備すると提案されたので、お願いした。ケレと二人で食事をするのは久しぶりだと思った。
貴賓室のバルコニーに案内された。そこにはケレが椅子に座って待っていたようだった。立ち上がってテーブルまでエスコートしてくれた。「今日からドレスはやめにしたのか?」と問われたので「馬に乗ることが増えるので、男性仕様にしています。着替えが必要でしたか?」と後ろのマチルダを伺うと「いや、ドレス姿も美しいと思ったが、用途に合わせた服装を選ぶことは必要なことだ」とケレから返事が返ってきた。
アフタヌーンティーの準備が整うと皆が去っていったので、ケレと二人になった。昼食を食べていないと言ったので、キッシュやサンドイッチ、ブルスケッタやミートパイを準備してくれた。食事を楽しみながらケレと会話をする。オーレンスト国の国王からエルの心遣いに感謝の言葉をたくさんもらったと嬉しそうだった。ケレが頭を撫でたので、「頑張りましたか?」というと笑いながら「非常に頑張ったな」と褒めてくれた。最近のケレは、手を握ったり頭を撫でたり、抱きしめたりすることがある。嫌な気持ちにならないから、そのままにしている。褒めてくれる時によくするので、表現方法の一つなのだろうと思う。
明日は王都に帰らなければいけないのか、ケレに問いかける。ケレは帰らないと政務が滞ってしまうからと言ったあとにエルは残りたいか?と聞かれた。残りたいというより、残らなければアルドアルの街のことがどうなっていくのか見届けられないからと答えると、ディルとライとファビがいるじゃないかと言われた。確かに私じゃなければできないことなどないなと思って、ケレと一緒に王都に帰りますと言った。ふんわりと抱きしめられて、背中を優しくポンポンとしながら「よくできました」と言われた。
やっぱり褒めてくれる時の表現方法なんだ。褒めれられるって心がキュってなるんだなぁと感じたことがない心地よさに、同じように背中をポンポンとするとケレが目を合わせて笑った。ケレが笑うと私の心もクスッと安らぐような気がした。




