第一章 オーレンスト国王夫妻 No.1
あらすじ
突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話
前半は恋愛観はほとんどありません。後半からです。
国王と公爵一家が帰った後、4人で振り返り会をした。ファビが、提案があるんだが、と話しはじめた。今回、三公爵が先に視察に訪れてもらえたことは、幸運だったと思う。それで分かったことなんだが、次の大臣たちの視察は施設職員に任せていいということだ。視察というが、実際は家族旅行だ。それなら自分たちが予定を組んで、行きたいところに行ってもらえばいい。施設職員の対応は、案内も説明も十分にできている。その意見を聞いてディルもライも頷いた。
スワツール国は、貴族と平民の垣根が低く、貴族間も身分の壁なしに交流することが多い。階級や肩書をあまり意識しない平等性を重んじる国民性なので、そのような意見が受け入れられるのかもしれない。アウグスリンデ国は、まだまだ、身分の階級制度に拘りが強い。そのため、王族や貴族の中でも身分が高い人の意見が尊重される。もてなす側も十分な敬意をもってお迎えしなくてはならない。
スワツール国の自由な風土が、スワツール国の発展の一助になっているのかもしれないと思った。
自分たちは、オーレンスト国の準備に力を入れたほうがいい。向こうの外交官から連絡がきていて、国王夫妻も外務大臣夫妻も訪問を楽しみにしているらしい。興味を持ってもらっている、この機を逃してはいけないと思う。
ディルから鴻臚館はあとどのくらいで完成するのか?と聞かれた。建物は殆ど出来上がった。内装がもう少しだが、時間はそんなにかからないらしい。
それなら、オーレンスト国の国王夫妻を迎える際に同席することになる、こちら側の宰相と外務大臣、法務大臣を先に迎賓館に迎えて、あとは各々が好きな時に来て鴻臚館を使ってもらおう。ただ、受け入れる施設職員のことを考えると、最大でも8組までだな。まぁ、1回に8組も抜けたら、王宮が回らなくなるだろうが。大臣たちには、宰相を通じて協力を仰ごう。国王にも確認して了承が得られたら、早速行動していこうということになった。
国王の許可が得られたので、宰相家族と外務大臣、法務大臣の家族がアルドアルの街を訪れた。公爵家の時のように各施設に訪問するが、各々で移動してもらい各施設では職員が案内から説明まで全てを行ってくれた。こちら側も事前に説明を行っていたので大きな問題も起こることなく視察が終了した。どの家族も満足できたようで、まだ帰りたくない、また連れてきてほしいとせがまれていた。
オーレンスト国から、良ければ国王夫妻と外務大臣夫妻が2週間後に到着すると連絡がきた。いよいよ他国の王族をお迎えすることになる。
オーレンスト国からの訪問の3日前にケレと四公爵と外務大臣、法務大臣が到着した。四公爵については、このままもし、技術提携などの話が進み調印することが確定するようなことがあれば同席をお願いすることになるからということと、四公爵側からも参加する意向があると先に申し出があったからだった。
今回、私は王妃としてお出迎えする。それにあたり、私付き侍女が5名選任された。5名の内、侍女長をファビの姉が名乗りを上げてくれた。名前をマチルデといい、年齢は28歳。彼女の取り計らいで他の4名が決定した。王宮から派遣するという意見もあったが、交流のない人を身近に置くのも意思疎通が難しいとトラブルが起こりやすく、修復も困難になるケースが多いから採用しないことが決定した。
今回、侍女に求められるものの中に、オーレンスト国からの要人をおもてなしする王妃の役割を補佐できる有能な人でなかればならないというのも考慮されていたようだ。
私とファビの家族とは、ファビの父であるギュルゲ公爵閣下にお会いしただけなのだが、ディルとライはファビの姉弟と交流があるようで、マチルデならと太鼓判が押されたようだ。
マチルデは、しとやかで落ち着いた雰囲気を持つ品格が高い女性だった。マチルデから他の4名の紹介も受けた。マチルデの友人、知人から選び抜いたと説明された。どの女性も慎ましやかで身のこなしが優雅な方々だった。年長順に紹介された。
マチルダと同じ年のメリッサ、26歳のジュリア(侯爵家)とディアナ(伯爵家)、25歳のカリーナ(伯爵家)、22歳のエヴァ(侯爵家)。侍女なので身分は関係ないかもしれないが、念のためと言われた。
私の王妃教育はアウグスリンデ国の慣習に添ったものなので、スワツール国の淑女教育を教えてほしいとお願いした。ファビからエミル様の所作に問題はないときております。男性と女性では視点が異なりますので、私達でよろしければお教えいたしましょうと言ってくれた。
エミル様と聞きなれない呼び名に、どうにかならないかと言ったが、慣れてもらうしかないと言われた。丁寧な言葉遣いにも慣れないが、淑女教育の一環と思って受け入れるようにということだった。私の言葉遣いは、公式の場では問題になることがあるかもしれないので、日頃から使い慣れておきましょうねと容赦がなかった。
私は、マチルダ達が来た日から、毎日ドレスを着用し化粧をしてもらい、女性として所作から言葉遣いに至るまで淑女としての姿で生活することになった。何よりも辛いのはドレスで生活することだった。本来はそうあるべきことなのです、慣れるしかありませんとマチルダから尤もなことを言われるのであった。
淑女のお手本が常に側にいるので、見様見真似で観察しながら、時に注意を受けながら徐々に習得していった。ドレスにも段々と慣れていった。ドレス姿でも優雅な立ち居振る舞いができることを常に心掛けていた。ただ、私には、どうすれば素早い身のこなしができるのかというのも必要で、スワツール国に来てからも出来る範囲内で鍛錬は継続していた。アウグスリンデ国で常に行っていた鍛錬を止めることができなかったからだ。ドレス姿で鍛錬を見つからないようにこっそりと行っていた。
マチルダは、一緒にいて気持ちのいい人だった。私に対して一王妃として接してくれた。間違っていれば正してくれ、できるようになれば褒めてくれ一緒に喜んでくれた。スワツール国についての知識も私が知らない歴史や法律、時には貴族女性についても分かりやすく教えてくれた。オーレンスト国については、自分たちも知らないことが多いからと他の侍女も一緒に勉強会を企画してくれたりした。彼女のお陰で、他の侍女とも打ち解けることができた。これまでの私は、令息として生きてきたこともあって男性と接することが多く、女性が側にいたことはナースのナンシー・エリザ・キャサリンの3人くらいしか思いつかない。女性との付き合い方や距離感を図り兼ねていたが、そんな杞憂も一瞬で無くしてくれた得難い人だった。
いよいよオーレンスト国から国王夫妻と外務大臣夫妻が到着する日がきた。以前、アルドアルに訪問に来ていた外交官2名も付き添っているので、ジスルリッタワーソル迎賓館に直接馬車で乗り入れすると先触れがあった。オーレンスト国の紋章入りの豪華な馬車がジスルリッタワーソル迎賓館前に到着した。
通常であれば本館前の庭で歓迎式典を行うのであるが、長旅なので休憩をはさみたいと要望が届いていたため、本館前で使用人が勢揃いでお出迎えし、お部屋に案内。その後、迎賓館で最も格式の高い謁見の間で歓迎式典を行うことにした。




