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第一章 薬草の森

あらすじ

 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話


前半は恋愛観はほとんどありません。後半からです。

 ケレと2人、それぞれの馬に乗って森を目指した。前に来た時に魔物の気配がまるで感じられなかったが、今日も同じだった。この森の空気はとても清麗で、澄みわっている。

 木々の間を縫うように2人並んで歩いて行くと、以前薬草を採取した開けた場所に出てきた。  

 ケレにこの森について何か知っていることがあるか問いかけると、この国の成り立ちが書かれた本に精霊の森というのがある。詳しい場所は示されていないが、書いてある内容に、クラエイヤ火山の一画にとあるから、もしかするとこの森かもしれない。ウラエイヤ火山は、いつくもの美しい山々が連なっているが、 森と思われるのはこの場所だけだな。


 スワツール国は、魔物がいないようだが元からいないのだろうか?とケレに聞くと、全くいなかった訳ではないようだが、かなり昔から魔物をみかけることがない。他国では、今でも魔物討伐をしていると聞く。この国も魔導具を使っていたころは、他国から魔石を輸入していた。魔物と戦うことは、非常に大変だと聞いている。魔物に関しては、スワツール国は恵まれているのだろうと思う。と感慨深い表情で語った。

 

 魔物討伐は、確かに大変だ。襲ってくる魔物の数も多いし、身体も大きく力も強い。毒を持っているものもいる。魔物の特性を知らないと一瞬で甚大な被害を出すことになる。念密な作戦と団結力と周到な準備が必要だ。

 反面、無事に討伐が終われば魔石という恩恵もある。魔石が手に入るとしても、余りにもリスクが高いのだが、襲われれば戦うしかない。そんな話をしながら森の中を歩いた。

 あちらこちらに貴重な薬草が生えている。滅多に手に入らない薬草もあった、必要な分だけを有り難く、頂きますと声をかけながら採取する。

 そんな私を見て、ふと「あの疲労回復薬は、物凄い効果だな」とケレが話し出した。今までも薬師が疲労回復に効果があると薬をくれることがあったが、まぁ気休めくらいのもので飲まないよりマシかもしれないという程度の品物だった。エルの薬は、飲んで暫くすると身体が温かくなって、重かった身体が軽くなる。頭がスッキリするというのか、まぁ休養すればいいのだがと言ってバツが悪そうな顔をしていた。

 私は悩んでいた。いつかは、魔法のことを話さなければいけないのではないか。果たして隠す必要があるのか。ケレのことは、国王として尊敬している。博識で決断力があり、度量と威厳を備えている人だと思う。間違っていたと私に謝罪できる、正直で誠実な姿を見せてくれる人だ。


 この森には不思議な空気がある。知らない場所なのに何かに導かれるように歩く。怖さとか躊躇するという気持ちが起きない。こんな場所なら、ケレに魔法の話ができるような気がする。

 森の中を歩いていると、大きな木が荘厳な雰囲気を携えて佇む場所に出てきた。その木は、天に向かって高く聳え立っており、逞しい枝には、青々とした葉がひしめき合いキラキラと輝いている。太い根が大地をしっかりと捉えている。「これは…、この森を守る主」私はそっーと手を伸ばし大きな幹に触れた。温かい、生きている、生命の力を感じる。スーと柔らかな風が吹いた。主、この地を守って下さっているのですね。素直にそう思えた。

 「ケレ、この森を守らなくてはいけません。誰にも荒らされてはなりません。」私はケレの目をしっかりと見つめて伝える。

 

 「ケレ、私は魔法が使えます。今からこの主に私の魔法を流させていただこうと思います。そうしてほしいと主が思っているに感じます。何が起こるかわかりません。ケレの目でしっかりと見定めてください。」私は幹に添えた手に魔力を込めた。

 そうすると幹が震えた。そして、金色に輝いた。一瞬の出来事だった。とても美しい光景だった。

 振り返るとケレがとても驚いた表情で、だだ呆然と立ち尽くしていたのだった。ふと私の右肩に何が乗ってきたように感じた。見ても何もないし触っても何も触れない。気のせいか?と思って、そのままにした。

 ケレが、ようやくいつもの表情に戻り、「三世代前までは、この国にも魔法が使える者が存在していた。数は少なかったようだが。その時の国王が、『魔法に頼る時代は終わった。これからは、自分たちで魔法を使わない新たな道具を発明していくことになるだろう。』そして、そういう次世代が来たのだと技術者と言われる人々があちらこちらから現れて、現在のスワツール国へと進化していった。」「他国では、まだ魔法が存在していると聞いていたが…私は初めて見た。魔法とは美しく不思議なものだな。」

 ケレの言葉に知らないうちに入っていた力が抜けた。私は怖かったのかもしれない。魔法を見てケレが恐怖の顔をすることが、怯えられることが、私を拒絶するかもしれないことが怖かったんだ、だから魔法を隠していたんだ。納得したから余計な力が抜けたんだ。私は安心したんだ。

 私が笑うとケレも笑った。その時に、私は、私この笑顔好きだな。と思った。


 ケレも、この森には何かある。それは精霊なのか神なのか、そういう神秘的な何かという表現が正しいのか分からないが。他国では魔物に苦しめられているとも聞く。この国が魔物に襲われないのは、この森に守られているからかもしれない。エル、君には驚かされてばかりだ。そして、私が好きだと思った笑顔で「ありがとう」と言った。

 ケレと私は、主の幹の元に腰を下ろした。私の魔法については、暫く2人の秘密にすることにした。そして、この森は貴重な薬草があるという名目で、他国からも干渉されないように王家直属で管理をする、立ち入る人を制限することで森を守っていくことにした。


 夕方前に迎賓館に到着した。他の人達も段々と到着してきた。今日は、疲れている家庭が多いようだったので各部屋での食事にした。ケレと私とファビとディルとライは、貴賓室で夕食を共にした。

 視察を終えた公爵家の報告が其々から行われた。どこの家庭も見学場所への好奇心が高く、行動力も凄いが、質問や意見に交渉力と子供達も疲れただろうが、大人達の疲労度が尋常ではなかったと思うと3人が同じ意見だった。どの公爵も自分の領地に役立つ情報を見逃さないし、技術者や職人に領地に来てもらう交渉が激しかった。そのくらい評価されているんだと誇らしく感じたそうだ。

 明日で視察を終えて、明後日には自領に帰るつもりのようで、明日は疲れを癒したいと三公爵の意見があったそうだ。

 実は新しい温泉施設が出来上がったと連絡があった。迎賓館から遠くないので、明日は皆で見学に行かないかと提案したら、即承諾の返事が返ってきた。


 新しい温泉施設は、温泉成分をたっぷりと含んだク レイの温泉と鉄分の多い赤褐色の温泉と塩分濃度の高い温泉と細かな泡のでる炭酸を体感できる温泉の四つがあり、其々が形の異なる建物で、その中に大浴槽があり、その全部の建物を一つの大屋根が囲っている創りになっている。勿論、それぞれに個室の浴槽もある。食事ができて、寛ぐスペースがあり、泳げる温泉もある。貴婦人方は個室希望だったが、男性陣と子供達は大浴場とプールを満喫したようだった。

 翌日のお昼過ぎに公爵家一同が帰宅の途についた。ケレは、翌日の午前中に王都へ向かって出発した。

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