表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/30

第一章 公爵家の視察に向けて

あらすじ

 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話


 前半に恋愛観はほとんどありません。後半からです。

 アルドアルに来てから、ケレに手紙を毎日のように書いた。王宮で共に過ごす時間が増えたことで、以前は業務報告のような手紙が、身体の調子を聞いたり、睡眠時間を心配したり、仕事量を相談したりとケレを気遣う内容に変わっていった。

 ケレからは必ず返事がきた。今は公爵が王都に滞在しているので、公爵たちが仕事を手伝ってくれているらしく睡眠時間が確保できているからポーションを飲まなくても済んでいるということで安心した。それから、公爵達がアルドアルを訪問の際は、自分もアルドアルに滞在することにした。日頃は文句が多い大臣たちも、公爵家と一緒に行動することにしたと言ったら、その間の仕事はできるだけやりましょうということで了解を得ているし言質をとったと書いてあった。


 公爵家を迎える準備が着々と進んでいた。公爵家は、東をヴィルド公爵、西をギュルゲ公爵(ファビの父親)、南をクライスト公爵(第一王子)、北をツェラー公爵が治めている。

 最初にアルドアルに視察にくる方々は、国王と三公爵一家である。迎賓館で全ての方をお迎えできる部屋数は十分ある。元々働いてくれていた職員も集まり始めていた。


 スワツール国の第一王子であるケレの兄王は、生まれつき身体が弱かったため、幼少期からスワツール国の南側の温暖な地方に移り住み治療に専念した。その時に出会った公爵令嬢と家庭を持つことを望んだため公爵家に降下することが決定した。そして現在は、クライスト公爵(国王ケレの兄)を名乗っている。

 ケレは、兄弟仲は良くも悪くもない、物理的に離れていたしクライスト公爵には治療もあったから、病気が完治する15歳くらいまで交流もはほとんどなかった。15歳過ぎてからは、時々王宮に来て一月くらい滞在するようになって、共に王太子教育を受けたりもした。兄弟というより友人に近い感覚と言えばいいのだろうか。クライスト公爵(第一王子)は、家族をとても大事にする人で、性格も穏やかで誠実、思慮深いし責任感もある人だ。と教えてくれた

 三公爵についても、クライスト公爵を筆頭に現当主は国に対して忠誠心があり、誠実で家族を大切にする。協調性があり真面目であるから、狸の大臣たちより、かなり受け入れやすいし賢明な助言や的確な意見がもらえることだろうと情報を提供してくれた。

 

 マルティンから、アンゼリカが到着したから直ぐに会えないかと連絡をもらった。職員宿舎を建設中のマルティンの許を訪ねた。久しぶりに会うアンゼリカは、少し日に焼けて健康的に見えた。「元気だったかしら?また、素敵なお仕事を提供してくれてありがとう。」とハグをされた。マルティンが、「嫌がられるぞ、気を付けろよ、嫌われたら仕事がもらえないぞ。」とアンゼリカを追い払うように手をシッシッと振った。「アラ、私とエルの仲だもの、ご心配ご無用よ。」と軽い調子で返していた。「仲が良いですね」とアンゼリカにいうと「まあねぇ、信頼できる相方よ」と返しがあった。

 職員宿舎はかなり仕上がっていた。アンゼリカが「シンプルなつくりだけどいいの?」と聞いてきたので、「景色に溶け込むようにとお願いしました。職員宿舎は目立たないように景観を壊さないようにと思います。その代わり、内装を落ち着いた癒される空間にしていただきたいです。」と説明した。

 職員宿舎は自然素材で落ち着いた色合いの外壁で、2階建てだった。疲れているのに階段を上がるのは嫌だろうからとマルティンの案だった。迎賓館と鴻臚館の建設予定地の中間に佇むように建っていた。内装は落ち着いた色合いで、アイボリーやベージュ、グレーが使われており、まとまった雰囲気になっていた。収納場所も多くあるので、見えるところに物を置かなくてよさそうだ。家具が入った部屋もあったが、使い慣れたものが良い人もいるだろうからと入れてない部屋もあった。マルティンが「大事な名前をどうする?」と聞いてきたので、アンゼリカに任せることにした。アンゼリカが「インコントラーシル(出会う)がいいかな」と言ったので、職員宿舎の名前が決まった瞬間だった。


 ディルとファビの職員採用の面接がどんどん進んでいた。以前、バトラーとメイドで働いてくれた人たちから、いつでも来ることができるから連絡してほしいそうだとファビから相談があった。職員宿舎は入居可能にしようと思う、入れる部屋から入居してもらおうと思うと返事をした。家具の持ち込みもできることを伝えてもらう。ファビから、「今日までで20人の面接が終わった。まだまだどんどん身上書が届いている。今日までの面接者は、ほとんどが知り合いだったから形ばかりで済んだ。問題はこれから。全く面識がない人を選ばないといけないと思うと気が重い。」ファビから弱音が出るのは珍しかった。

 疲れているのかと聞いたら、今からが疲れていくんじゃないかと言われた。疲労回復薬がいるなら準備すると言ったら、3人が声を揃えて「いる!!」と返事があった。


 インコントラーシル職員宿舎の入居が開始になった。新しい建物に入居者は興奮する人が多かった。個人空間があるのは嬉しいし駅舎から通わなくてもいいから、身体も楽なんじゃないかと言っていた。順調に入居が進んでいく様を確認して、私は薬草の採取に出かけた。

 クラエイヤ火山の麓に青々とした森があり、そこに向かって馬を走らせた。薬草があるかは賭けだった。魔物がいないか魔法で確認しながら木々の間を縫うように森の中を進んだ。空気が澄んでいて少し冷んやりしていた。20分くらい歩いたところに開けた場所があり、日が差し込んでいて暖かかった。原っぱのようになっていて、たくさんの草花があった。希望の薬草があるか探すと、あちらこちらに欲しかった薬草があった。他にも貴重な薬草が何種類もあり観察するだけでも楽しくて帰りたくなかった。時間がないので必要な量を採取して帰路に着いた。

 何があるか分からないので、いつでもポーションが作成できるように器材は持ってきていた。今日採取した薬草で早速ポーションを作った。薬草が良いと飲みやすくはならないが効果が少し上がる。良質な薬草が手に入って良かった。

 私は3人に疲労回復薬だと言ってポーションを1本づつ渡した。薬草から抽出したエキスだから飲みにくいが、効果はあるからと説明した。ライが臭いを嗅いで「草っぽい臭いがする」と言いながら飲んでいた。ディルとファビは一気に飲んだ。薬は飲みにくいものだから、考えたり味わったりすると飲めなくなるそうだ。

 翌朝3人は、なんだか身体が軽くて頭がスッキリしている、効果抜群だぞと言って喜んでくれた。私は昨日訪れた森のことを3人に話した。手つかずの場所だから貴重な薬草も良い状態が保てていると思う。これから人が増えてきて、森に入るようなことになると、今の良い状態が保てなくなるかもしれない。自分だけが独占するのも違う気がするが、荒らされたくないというのが正直な気持ちだと話した。ファビから「自然保護地域で規制地域に指定してもらうか?王宮の環境省に問い合わせてみよう。」と言ってくれた。ディルが「ファビの意見が正しいと思う。貴重な薬草なら農場にも相談すればよい考えがでるんじゃないか?」ライが「アドルフが喜んで協力してくれるよ」と言ってくれた。自分だけで考えるんじゃなく、誰かに相談できる環境にいるという幸せを感じた。3人には、本音や弱みを見せることができ、自然体でいられる。得難い人に出会わせてくれたケレと幸運に感謝した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ