第一章 アウグスリンデ国
あらすじ
突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話
前半は恋愛観はほとんどありません。後半からです。
アウグスリンデ国は、エルがエミル・アーレント公爵令息として17歳まで暮らした国である。複雑な生い立ちについては、少数の者しか知らされていない。
アウグスリンデ国にある日突然、第三王女が現れたかと思えばスワツール国王との縁談が決まり、王妃教育の後に嫁いでいった。アウグスリン国内では、納得のいかない家臣や王族もいたが国王の勅命なので表だって反対することはなかった。
現国王は、前国王から呼び出され、第三王女がいると聞いて驚いた。自分の妻が産んだ子供は第一王子、第二王子、第一王女、第二王女の四人である。第三王女とはどういうことなのか?自分には身に覚えのないことだった。前国王は話したがらなかったが、「私が納得できない内容なら協力はできない」と強い姿勢で詰め寄った。
前国王が、「第三王女は私の妹だ。それしか話せない。情けない、醜聞を話す気にはなれない。」と悲痛な表情で話す。こんな姿の前国王をこれまで見たことがなかった現国王は、それ以上問いただすことができなかった。王妃にはどこまで話しますか?と問うと、前国王の命令なので断れないと話せと言われた。
王妃には、前国王から第三王女をスワツール国に嫁がせるように命令があったと伝えた。王妃から、第三王女って何?前国王と何の関係があるの?と問い返されたが、前国王しか知らないことだと突っぱねた。
第三王女が王妃教育のために王宮を訪れるようになった。私たち王族と同じ銀色の髪に紫の瞳を持つ美しい令嬢だった。所作もどこで習得したのか、凛々しく麗しい美しい動きができる人だった。毎日、アーレント公爵家から王宮へ通ってきてきた。教師陣は、前国王が手配した。教師陣から、一般教養は教えることがない、他国の言葉は5か国語が話せる。アウグスリンデの外交や王室運営も宰相から及第点をもらった。唯一、優雅に話ができるということが苦手なようだと報告を受けた。
王宮に滞在中は教師に王妃教育を学び、朝早くから夜遅くまで熱心に真面目に前向きに課題解決に取り組んでいると非常に評価されていた。
3ヶ月経過したころだっただろうか、どこからともなく『第三王女は、阿婆擦れで何人もの男を誑かしている。性悪女で節操なし』という根も葉もない噂がものすごい速さで広がった。教師陣も困惑して、そんな時間もないし、男性の影などありえません。王宮では教室に缶詰で、公爵家では課題をするのに自室から出られないと現当主から報告を受けています。と第三王女の噂を否定したが、スワツール国に出発するまで噂が消えることがなかった。
第三王女がアウグスリンデ国を出発した後、付き添いの警備に任命していた騎士団が残っていたので問いただすと、急遽変更になったと指令がありましたという。団長にどこからの指令か早急に調査し報告するように指示をした。その結果を聞いて愕然とした。
今回、第三王女の輿入れに際して、アウグスリンデ国から法務大臣、外務大臣と防衛大臣、騎士団総長、護衛は騎士団長が信頼を置く第一騎士団、他に侍従と女官は伯爵家から出仕している者を前国王が人選していた。しかし、その誰も付き添っておらず、更に出発から既に20日が経過していた。この不祥事に前国王の怒りは凄まじく責任の追及は容赦がなかった。
首謀者は王妃だった。第一王女、第二王女も協力どころか率先して行動していた。王妃の実家は公爵家で、代々法務大臣を務めていた。王妃の父親は、裏をかくことに長けており相手の足元をすくい陥れるような人物ではあったが、国への忠誠心に厚い一面もあった。王妃は第三王女が、何処の誰か分からないことが気に入らず、第一王女がスワツール国王を慕っていたこともあって、醜名に不祥事が起これば嫁ぐことが中止になるか、お飾りとして肩身の狭い思いをするだろうと計画したそうだ。王妃の父親である法務大臣が同行する者の変更指令を出した。法務大臣からの指令を疑う者はおらず、気づいたときには対処ができない時期にきていた。
この結果に前国王は涙を流し悔いていた。こんな父親(前国王)を見るのは初めてだった。「国王として、スワツール国には謝罪を首謀者とそれに加担したもの全て厳しく処罰するように」と前国王から指示があった。息子としては、そんな父親の姿が痛ましすぎて見ていられなかった。現国王として罪人の処罰とスワツール国王へ即刻親書を送りますと返事をした。
スワツール国王に親書をしたためて、早馬をだした。首謀者の王妃は、貴族牢の北の塔に幽閉した。偽の噂を流し、スワツール国王に誤情報の手紙を送った第一王女は、戒律が厳しい修道院へ入れた。噂を流すことに協力した第二王女は、規律の厳しい神殿で学びなおすことにした。王妃の父親である法務大臣は、外交問題に発展するような大問題を起こしたことで大臣を解任、公爵から伯爵に爵位の降格、領地の半分を没収した。他にも王妃に加担した者を調査し、厳重に処罰した。
母親が幽閉され妹が修道院と神殿に入る経緯を、第一王子と第二王子伝えた。二人は成人しているし、政務も行っている。王太子である第一王子の真価を見抜く機会でもある。
謁見の間で王妃に罪状を読み上げ罰則を言い渡した。王妃はお伝えしたいことがあるといい、「私は第三王女について素性について教えていただければ、このような行動は致しませんでした。せめて、伝えることができない理由でも教えていただければこのようなことにはなりませんでした。第一王女が心を寄せていることが分かっていながら、国王が父親としての配慮も全くしていただけなかったことが残念でなりません。」と反省のかけらも感じられない言葉を並べた。
第一王子が、私が王妃に事の重大さをお教えいたしましょうと跪いている王妃の前に立った。あなたは一国の王妃です。あなたが一番に優先しなければならないことは何ですか?国のため国民のために最良の選択をすることではありませんか?国王が下した命令は絶対です。それほど国王は重大な判断をし責任を負わなければならないのです。国のためにです。それでも臣下として時として諫めねばならないこともありましょう。よく考えて下さい。今回は前国王がご尽力された縁組であり、国同士の結びつきに大きな成果をもたらすことでしょう。王妃は第一王女でもといましたが、前国王は第三王女を選択されました。このことについて国として問題視することは何一つありません。王妃の感情だけの問題です。王妃の感情など国交に必要ありません。今回の王妃の罪は、王妃の感情が引き起こした結果です。国を想い考えることができるならそのような行動はしないはずです。国際問題に発展し兼ねません。戦争が起こることも考えましたか?今の王妃の頭の中は平和ボケしたお花畑です。国民を脅威にさらすようなあなたは、王妃ではありません。
王妃は涙を流すばかりで、何も言わなかった。第一王子が「連れて行って下さい」と衛兵に指示した。
前国王は、憔悴しきっていた。それでもスワツール国に自ら赴き、自国の失態を詫びたかった。第三王女が冷遇されているのではないかと思い焦燥感にかられた。第三王女は、義理の妹が自分の父親(当時の国王)義妹からすれば義理の父親に襲われて出来た子供だった。前国王は、過酷な環境の中でも、母親思いの素直で愛くるしい義妹を大切にしようと思っていた。義理の母親も凄惨な経験の中、逞しく強かで聡明な女性だった。逆境の中でも凛として前向きに生きる彼女を慕うものは多かった。
常に暗雲が漂う王宮にいる二人を守りたいと思っていたのに、王太子だったころの前国王にできることは少なかった。二人にできなかった無念を第三王女を守ることで償いの一つになればと思っていた。
スワツール国王から親書が届いた。
内容は
・第三王女が治療中のため面会できないこと
・情報収集が疎かであったため第三王女に理不尽な対応をとったことへの謝罪
・謝罪は不要であること
・回復後に彼女に意思確認すること
・今回、アウグスリンデ国で起きた事象の説明を求める
といったことが丁寧な言葉で認められていた。
息子(現国王)から、今はお互いに療養に専念して、完治の折には第三王女の意思を尊重しましょう。彼女の負担にならないことが一番の償いでしょうから。協力の希望があれば全力で協力していきましょう。と言葉をかけられた。前国王は、静かに首肯した。




