「法人税と税効果会計の基礎」
ルカとスズナは迷宮の次の部屋に進み、そこに「法人税と税効果会計の基礎」と書かれたプレートを見つけた。カリナが再び現れ、二人に向かって話し始める。
「今回の試練では、企業が支払う『法人税』と、税効果会計について学んでもらうわ。これは企業の財務に大きく影響する重要な内容よ」
1. 法人税とは?
カリナはまず、法人税について説明を始めた。
「法人税とは、企業が得た利益に対して課される税金のことよ。利益が増えれば増えるほど、法人税の負担も増すため、企業の財務状況に大きな影響を与えるわ」
ルカは、法人税が企業にとって避けられない負担であると理解した。法人税の計算は、企業の利益から経費や控除を差し引いた課税所得をもとに行われるが、複雑な仕組みが絡み合うことが多い。
2. 税効果会計の基礎
次にカリナは、税効果会計について説明した。
「税効果会計は、企業の会計上の利益と税務上の利益が異なることから、その違いを調整し、財務諸表に正確に反映させるための会計処理よ」
カリナは、税効果会計が必要とされる背景について、さらに詳しく説明した。
•会計上の利益と税務上の利益の違い:企業は会計基準に基づいて利益を計算するが、税務は税法に基づいて行われるため、同じ収益でも異なるタイミングで課税される場合がある。
•一時差異:会計上は認識されているが、税務上は後に認識される(もしくはその逆の)項目のこと。例えば、減価償却費の計算方法が会計と税務で異なる場合、異なるタイミングで費用として認識される。
「こうした差異に対応するため、税効果会計では『繰延税金資産』と『繰延税金負債』が使われるのよ」
3. 繰延税金資産と繰延税金負債
カリナは、繰延税金資産と繰延税金負債の具体的な内容について説明した。
•繰延税金資産:将来、税金の支払額が減ることが予想される場合に計上される資産。会計上は認識しているが、税務上はまだ認識していない費用の例が該当する。
•繰延税金負債:将来、税金の支払額が増えることが予想される場合に計上される負債。会計上は認識していないが、税務上は認識している収益が該当する。
「たとえば、減価償却のタイミングが会計と税務で異なる場合、将来の税金の支払いが増えるか減るかが予想されるから、その調整のために繰延税金資産や繰延税金負債を計上するの」
ルカは、税効果会計が将来の税金に備えるための調整であることを理解した。
4. 試練: 繰延税金資産と繰延税金負債の計上
カリナが説明を終えると、部屋の奥に試練用の帳簿が現れた。
「では、税効果会計に基づいて繰延税金資産と繰延税金負債を計上してみましょう」
•問題:
•企業が会計上1000円の減価償却費を計上したが、税務上は500円の減価償却費しか認められていない。この一時差異に基づいて繰延税金を計上する。
•税率は30%。
ルカとスズナは慎重に計算を始めた。
一時差異の計算:
一時差異 = 会計上の減価償却費 1000円 - 税務上の減価償却費 500円 = 500円
繰延税金資産の計算:
繰延税金資産 = 一時差異 500円 × 税率 30% = 150円
仕訳:
借方:繰延税金資産 150円
貸方:法人税等調整額 150円
カリナはルカの仕訳を確認し、満足そうにうなずいた。
「よくできたわ。これで税効果会計を使った調整が理解できたわね」
ルカは、税効果会計が企業の財務諸表にとって非常に重要であることを実感した。
5. 実務での活用
カリナは最後に、法人税と税効果会計が実務でどのように役立つかについて説明した。
「法人税の支払いは企業の資金繰りに影響を与えるため、正確な計算が必要よ。また、税効果会計を利用することで、企業が将来の税負担に備え、正確な財務情報を提供できるわ」
ルカは、法人税と税効果会計の理解が、企業の財務状況を正確に示し、資金管理にも役立つと理解した。
エピローグ
こうして、ルカとスズナは「法人税と税効果会計の基礎」の試練を無事に乗り越えた。会計の知識がますます深まっていく実感を得て、二人はさらに意欲が高まっているようだった。
「次の試練ではさらに複雑な処理が待っているわ。引き続き、しっかりと学んでいきなさい」
カリナの言葉に応えるように、ルカとスズナは迷宮の次の試練へと歩を進めた。
第17話では、企業の財務管理に大きな影響を与える法人税と、税務会計と会計上の利益の差を調整するための税効果会計について学びました。税効果会計は、企業の会計処理において非常に重要であり、将来の税負担を見据えた調整が必要です。
【法人税の重要性】
法人税は、企業が得た利益に対する税金であり、利益が増えるほどその負担も増えます。法人税は企業にとって大きな支出であり、財務状況や資金繰りに直接影響を与えるため、正確な計算と計上が欠かせません。
【税効果会計のポイント】
税効果会計は、企業が会計上と税務上で異なる計算方法を使うことによって生じる一時差異を調整するために行われます。この差異を調整することで、会計上の財務諸表がより実態に近いものとなり、将来の税負担を予測しやすくなります。具体的には、繰延税金資産と繰延税金負債を使い、将来の税額を調整して財務諸表に反映します。
【物語を通じての理解】
税効果会計は複雑な分野ですが、物語を通して学ぶことで、基礎的な理解が深まったのではないでしょうか。ルカとスズナが税効果会計を通じて、企業の長期的な財務健全性を保つための知識を習得する姿が印象的でした。企業の資金計画や税負担の予測に役立つため、実務でも重要な知識です。
次回も、さらに実務に役立つ内容を取り上げていきます。引き続きルカとスズナと共に、簿記2級の知識を深めていきましょう!




