6.ーー
また、蘇る。
「ねぇお父様! 私に剣と魔法を教えてよ!」
「……」
「ねぇ、無視しないでよ〜」
「……誰だ?」
「え?」
「……お前は誰なんだ?」
「何言ってるの〜? 私は――」
「違う! お前は私の娘なんかじゃない!!!」
また1つ、蘇る。
「どうせ、お姉ちゃんは何も知らないんでしょ!?」
「それは……」
「もう、思い知った!だからそれでいい!!!」
「エリ、話を聞いてよ……」
「嫌だ! 何も聞きたくない!!!」
「……なんで――」
「お前がお姉ちゃんのはずがない……。お前なんて本当のお姉ちゃんじゃない!!!」
人は形にこだわります。
何かに納得するため。
何かを得るため。
何かを失うため。
それには相応しい形があってほしい。
相応しい何かがあるはずだと、多くの人はそう信じています。
特別な出会いがあって、特別な出来事があって、特別な関係になって、それを特別なまま失う。
それを夢に見ているはずですよね。
わかっていますよ。
叶わないから、恥ずかしいから、口には出せないだけです。
それを願っても虚しいと知っている。
それを思っても叶わないとわかってる。
私はそんなあなたが大好きです。
そして、人は知りたがります。
それはどこにあるのか。
それはどうやったら得られるのか。
それは本当に存在しているのか。
それは失うほど、大切なのか。
私だって同じです。
私だって同類です。
なぜそれがお前にわかるのか、ですか?
ちゃんと見てきたからです。
ちゃんと知っているからです。
ちゃんとわかっているからです。
私はあの娘の形を知っています。
私はあの娘の知らないあの娘を知っています。
時間は空いたようですが、あの娘はまた出会いました。
多分、運命なんでしょう。
本当によかったです。
また見つけられたんですね。
それが本当は作られた運命だったとしてもです。
私はまだ、その出会いの多くを知らないけれど。
知ることはできていないけれど。
何もわかってはいないけれど。
わかってあげられていないけれど。
特別に出会ったと言うことは知っています。
あの娘は形に残していましたから。
少しの中でも、それは輝いていました。
羨ましいって思ってしまいました。
いつかそれを、私が知ることはあるのでしょうか。
それが、私に残る日は来るのでしょうか。
でも、私はそれを望んでいません。
それを知りたいと思っていません。
不思議ですか?
なぜなら――。
「本当に、本当に美しいわ……」
「……」
私は、知っていることの辛さを知っているからです。
知らないことの幸福を知っているからです。
私は私の手で、私を進めることができない。
私が私の手で、私を形にすることができない。
私は私のために、私を知ることができない。
どうですか?
私は幸せに見えますか?
幸福に見えるでしょうか。
でもきっと、あの娘は幸せなんでしょう。
私はあの娘が羨ましい。
私はあの娘になりたい
だから私は、あの娘を恨んでいます。
私も同じはずなのに、こんなのはおかしいですよね。
「大丈夫よ。そんなあなたも美しいわ」
「……ありがとうございます」
これが私の形です。
私が望んでしまった形です。
私が望んだ代償です。
これが私の、私だけの孤独な旅。
大丈夫、辛くなんてないですよ。
私はきっと幸せです。
だってあの娘は笑っているもの。
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わかりにくいと感じたため、前話に少し加筆しました。内容は変わっていません。