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5.望むこと


「……で?」

「俺たちは命令されただけで……」

「…………で?」

「痛い痛い痛い。本当なんです!!!」

「………………で?」


 そこで大量に伸びてるゴミ共。

 その1人を、木に縛りつけて尋問する。

 本当にたいしたことなかった。

 涙目で赦しを乞う。

 こいつの情けない姿を、リンに見せつける。


「姫、これ以上は……」

「ごめんね〜、リン。ここで不安を摘むって決めたんだ」


 とりあえずはここで終わらせる。

 どんな形であれ、決着させる。


「あのさ、リンを知って怖くなっちゃった?」

「……」

「そりゃそうだよね〜。こんな才能は今の大人達が困るもんね!」

「……」

「自分達の仕事がなくなっちゃうの怖かった?」

「……」

 

 リンの力は、今までの仕事をきっと崩壊させる。

 なにかを運ぶのに馬車なんて使う必要がなくなるかもしれない。

 そうなったら護衛だって必要最低限しかいらない。

 目の前の奴らは職を失うかもしれない。

 だから、気づく前に殺してしまおう。

 どうせそんなところでしょ。

 本当に反吐がでる。


「消すのにちょうどいい仕事もあったしね。これはしょうがないのかな〜」

「……」

「ねぇ、、、答えろよ」

 

 剣を地面に突き刺して、顔の前で魔法の火をみせる。

 私の恐怖は脳裏に刻み込んだ。


「はい! その通りです! いつか邪魔になると思い、私達の雇い主へ伝えました!!!」

「で? それは誰? 命令したのは同じ人?」

「……言えません」


 今度は水を作って、顔を掴む。

 息ができず、足をバタつかせる。

 暴れるなよ、汚れるだろ。


「はぁはぁ……。本当に言えないんです! 殺されてしまいます!!!」

「へ〜、リンを殺そうとしてたのに? 自分は嫌なんだ」

「……そ、れは」


 本当に虫唾が走る。

 自分達のために人を消そうとする。

 関係を築くとか、利用してみせるとか、やり方はいくらでもあったのに、1番の最低な方法を選んだ奴らに慈悲なんて必要ない。


「子供のお前らにはわからない!!!」

「……へぇ〜」


 わからないから消す。

 怖いから殺す。

 それが許されるなら、私が今からすることだって許されるよね。

 許してくれるよね。

 だって私は子供なんだから。

 

 そして、今になって気づく。

 そうか、私は人のために怒れるんだ。

 ちょっと嬉しくなる。


「そっか。喋れないなら仕方ないね。まぁいいや」


 胸を撫で下ろしてる。

 許すとでも思ってるのか。


「それならここで殺すだけだから」

「……え?」


 私は地面から剣を引き抜く。

 もういい。

 どうせ、これ以上は喋らない。

 それにこんなやつが手駒なんだ。

 もし出会っても潰せるはず。

 なら、目の前の障害を潰して脅しとしよう。

 それでまた来るなら、その時にそいつとやればいい。

 

「姫!!!」

「リン?」

「もういいです……」

「でも」

「そんな顔しないで! 姫は楽しそうに笑っていて!」


 抱きしめられる。

 暖かくて優しい。

 昂っていた気持ちが冷静になる。

 まだまだ私も子供だな。


「こんな人達のために、姫が手を汚す必要なんてない!」

「いや、でも」

「いいんです! もういきますよ!!!」

「あっ……」


 強引に手を引かれる。

 スッキリしない。

 それでも、リンが選んだんだから尊重しよう。

 彼女が望まないことをするのであれば、それはこいつらと変わらない。


「あっ、ちょっと待って……」

「……姫」

「わかってるよ」


 リンにクギをさされる。

 でも、最後に脅しくらいならいいでしょ。


「あのさ、次はないよ。ちゃんとわかってるよね?」

「はい!!!」


 本当に次はない。

 次にリンを害そうとしたら、何をするかわからない。


「それに、ここには暫く戻らないから安心していいよ」

「……」

「それでも、もし追いかけてくるなら覚悟して? そうしっかりと伝えて欲しいな!」

「はい……」

「私はちゃんと、伝えたよ?」

「……」


 まぁ、これでいいでしょ。

 これで多分こないはず。

 本当は不安の芽を全てを摘むつもりだった。

 それをリンが望まないのなら、それを尊重しよう。

 それに私のそんな姿を見たくないって、思ってくれることは嬉しい。


 次の場所へ、歩きはじめた。

 手を引かれながら、暫く歩いていた時だった。


「あはは!!」


 突然、リンが笑いながら蹲る。

 その顔には涙が溜まってる。


「ど、どうしたの?! どこか痛い?」

「そうじゃなくて……」


 その綺麗な顔で私をみる。

 本当に可愛いな。


「あの時、姫の手をとってよかった」

「……え?」

「復讐なんてくだらないことで、生きなくてよかった」

「……そうだね」

「こんなことのために、私の人生を全部使おうとしてたなんて思ったら、本当に笑えてきて……。お父さんとお母さんにも申し訳なくなってきました」

「……」

「それに、姫のいう通りだった」

「そうかな?」

「そうですよ! あのままだったら、きっと私の人生はつまらなかったです」


 リンは泣きながら笑う。

 そこには色々な感情が渦巻いているはず。

 でも、それはいいことだと思う。

 リンは前へ進んでる。

 私とは違ってね。


「あーあ、私が人生をかけようと思ってたこと、もう終わっちゃいました!」

「いいじゃん。一緒に次を決めよ!」

「そうですね! ならまずは、次の目的地まで!!!」


 私に向けてくれる顔はとても美しくて、綺麗だった。

 リンは私を引っ張ってくれる。

 

「ほら、はやく!」


 こんな関係でいいと思う。

 立ち止まったら支え合って、また歩き出そう。

 今度は2人で次の場所へ。

 何かが始まったって予感がする。

 リンは私が間違えたら、止めてくれるはず。

 

 そして、気づけば頭には何かの感触がある。


「はい?」

「にゃあ」


 本当にお前はどこ行ってたんだよ。


 

 

 1章 -終-

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