会いにいく
全部、吹っ切れました。
どうでもよくなったとまでは言わないけど、失っても次がある。だから、怖くはなくなったとは思う。
実際、目の前にしたらどうなるかわからないけれど、信じられるものができたのは確かだから。
だから、気分は上がる。
ようやく、私っぽくなってきた。
「ふーん、ふーん!」
「姫、ご機嫌だね」
「あ、ユズにもわかる?」
考えなくていいと思ったら楽になりました、とは言わない。
みんなのことまでどうでもいいと思われそうだし。
でも、やっぱり最近はおかしかった。
ユズの時とか、完全に変だった。
あんな気持ちは経験したことがない。
三人といれば、気分は明るくなる。
追い出されたり、色々あったりでナイーブになっていたのかな。
まだ時間だってあんまり経ってない、よね。
多分そのはず。間違ってない。
ここ最近は時々、魔物にも会うようにはなってきたけど、パパッと倒してそれで終わり。
気持ちも、状況も、いい方向に向かってる気がする。
案外と問題とやらも楽に終わったりして。
ストレス発散もできてるし、綺麗な世界を歩いているという感覚が精神を安定させてるのかもしれない。
「なんか、どうでもいいかな〜って」
「……そうなんだ」
必要以上に聞いてこないユズは、彼女らしさが出てる。
私はユズのこういうところが好き。
他人からは淡白とか、興味なさそうって思われているのかな。
案外、そういうところで損してきたのかもね。
「……若干二名ほど、元気なさそうだけどね」
「あれは私が悪いから」
後ろを覗き込む。
リンとアルは、とっても機嫌が悪そう。
何かを説明する必要もない。
不機嫌ですって顔に書いてある。
「おーい。そろそろ機嫌を直してよ〜」
「……」
「……」
二人とも無視です。
リンはまだわかるけど、アルはなんで怒ってんのかな。
よくわからない。
「その内、多分直るよ」
「……そうだね」
また、無言で歩きだす。
横にはユズ、少し後ろをついてくる二人。
とりあえずは今を楽しむ。
未来の、明日の私に任せよう。
きっと、どうにかしてくれる。
「綺麗……」
私は感じたままに呟く。
なんか、様々なものが新鮮にみえる。
風で揺れる木、横を流れてた川、柔らかい地面。
まさに、川と森って感じがする光景。
閉じ込められた環境では、目に入れてこなかった。
やっとそれらを、ちゃんと見つめられてる気がする。
今を楽しめていると思える。
……本音を言えばちょっと怖い。
ただ、それを誤魔化すためなのかも。
もしかしたら、二人に会うかもしれないし。
いや、会いたいとは思ってるけど、怖いには怖い。
理由もわからずに戻って、怒られるかも。
いや、本当は嫌われていたのかもしれない。
それを知ってしまうかもしれない。
真実で傷つくのかもしれない。
でも仲間と呼べる彼女の願いは叶えてあげたいよ。
それは家族に会うのが怖いという理由よりも大切。
そう思い込めば、自分を保てる。
「……本当にどうでもいいよね」
誰に聞こえるでもなく、そう呟く。
いや、この黒いのだけは聞いてたかな。
お前だけは、いつでも側にいてくれた。
あの人達に、なんて言われてもいい。
嫌われても、いいよ。
大丈夫、大丈夫だから。
今は自分がやりたいこと、したいことを優先する。
その上で、認めて貰えるなら嬉しい。
でも、認めてもらうために何かをすることは、もう二度としない。
大切な二人には聞いてほしい。
大切な二人だからこそわかってほしいから。
外に出て、それがわかるかもっていう入り口には立てた。
そして、認めて貰えるかもって思える人達と出会えた。
私は、勢いよく地面を蹴る。
綺麗な景色が糸みたいに細くなる。
「あ……、姫」
誰かの言葉が聞こえるよりも先に、ゴミを切りつける。
コイツらは私のものだ。
そして、彼女達を危険な目には合わせない。
だから、誰にも渡さない。これは私の役割だ。
だって、本当に……。
「大丈夫だよ! みんなは私が守るから!」
「姫……」
「なに〜? ユズがやりたかった?」
まぁ、譲らないけどね。
振り返ると、そこにあるのは動かなくなった肉の塊。
真っ赤に染まった地面。返り血で染まる顔と服。それを魔法で洗い流す。
この時、いつも思ってたっけ。
あの時も、今だって。
それって、いつだったんだろう。
わからないけど、思い出せる。
お父さん、エリ。私はなんとなく、思い出してきたよ。
「あぁ、満たされる」
コイツらの死体は、本当に綺麗だった。
この瞬間が生き甲斐だった。
ここから始まった、はずだから。
やっと正常な思考が返ってきたよ。
会いにいく。待っててね。
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