俺は天才だとホラを吹いて50年 いまだに誰も信じてくれない
俺は宇宙をさすらうトレジャーハンター。
お宝を求めて放浪の旅を続けている。
探査船の調子が悪く、エンジンが不調だ。
どこかで修理する必要があるが、あいにくステーションが近くに見当たらず、仕方なく辺境の惑星に不時着することにした。
その惑星では古代科学の研究が盛んにおこなわれており、近隣の惑星からオーパーツが集められている。
掘り出し物を見つけるいい機会だ。
「ういー。邪魔するぜー」
ガラクタが山積されている船着き場。
この惑星にはあちこちに拠点があるが、ここが一番さびれている。
「おお……久しぶりの客だな。
修理か? それともオーパーツの売買か?」
建物から太った老人が姿を現した。
人のよさそうな顔をしている。
「エンジンを見てもらいたいんだ。
あと、何かおススメの品はないか?」
「ガラクタを適当に漁ってくれ。
気に入ったものがあったら持って行ってもいいぞ。
修理代は2000デナリオでどうだ?」
「……え?」
エンジンの状態も見ないで見積もり?
偉く適当な修理工だなぁ。
腑に落ちないながらも、彼の提案を受け入れることにした。
別に高いわけでもないし、そこそこ信頼できそうなんだよなぁ。
嘘をついて人を騙す感じではない。
適当にゴミを漁っていると、数時間で老人は修理が終わったと言ってきた。
あまりに早かったので嘘だろと思いながらも、エンジンをかけるとすっかり良くなっている。
「すげぇ、アンタ天才かよ」
「ふふふ。
俺は天才だとホラを吹いて50年。
いまだに誰も信じてくれない。
信じてくれたのはアンタが初めてだよ」
老人はそう言って屈託のない笑みを浮かべる。
「もう行くのか?」
「ああ……興味本位で立ち寄っただけだからな。
近くを通ったらまた顔を出すよ」
「そうかい、ありがとな。
グットラック、偉大な旅人さん」
「さよなら、偉大な天才技術者さん」
俺は老人に別れを告げ、船を宇宙へ向けて浮上させる。
一日にも満たない滞在時間だったが、有意義な時間を過ごせたと思う。
あの老人は天才ではない。
でも、確かな技術を備えていた。
愛と時間さえあれば人の才能は開花する。
好きなことを愛する気持ちと、好きなことに費やした時間が、人を天才たらしめるのだ。
俺も彼を見習って、自分の大切に愛を与えよう。
小さな木の芽が大樹に育つまで、辛抱強く時間をかけて。
眼前には無限に広がる暗黒の宇宙。
この世界のどこかに探している”何か”がある。
その”何か”を見つけ出すために俺は旅を続けるのだ。