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なろうラジオ大賞4

俺は天才だとホラを吹いて50年 いまだに誰も信じてくれない

 俺は宇宙をさすらうトレジャーハンター。

 お宝を求めて放浪の旅を続けている。


 探査船の調子が悪く、エンジンが不調だ。

 どこかで修理する必要があるが、あいにくステーションが近くに見当たらず、仕方なく辺境の惑星に不時着することにした。


 その惑星では古代科学の研究が盛んにおこなわれており、近隣の惑星からオーパーツが集められている。

 掘り出し物を見つけるいい機会だ。


「ういー。邪魔するぜー」


 ガラクタが山積されている船着き場。

 この惑星にはあちこちに拠点があるが、ここが一番さびれている。


「おお……久しぶりの客だな。

 修理か? それともオーパーツの売買か?」


 建物から太った老人が姿を現した。

 人のよさそうな顔をしている。


「エンジンを見てもらいたいんだ。

 あと、何かおススメの品はないか?」

「ガラクタを適当に漁ってくれ。

 気に入ったものがあったら持って行ってもいいぞ。

 修理代は2000デナリオでどうだ?」

「……え?」


 エンジンの状態も見ないで見積もり?

 偉く適当な修理工だなぁ。


 腑に落ちないながらも、彼の提案を受け入れることにした。

 別に高いわけでもないし、そこそこ信頼できそうなんだよなぁ。

 嘘をついて人を騙す感じではない。


 適当にゴミを漁っていると、数時間で老人は修理が終わったと言ってきた。

 あまりに早かったので嘘だろと思いながらも、エンジンをかけるとすっかり良くなっている。


「すげぇ、アンタ天才かよ」

「ふふふ。

 俺は天才だとホラを吹いて50年。

 いまだに誰も信じてくれない。

 信じてくれたのはアンタが初めてだよ」


 老人はそう言って屈託のない笑みを浮かべる。


「もう行くのか?」

「ああ……興味本位で立ち寄っただけだからな。

 近くを通ったらまた顔を出すよ」

「そうかい、ありがとな。

 グットラック、偉大な旅人さん」

「さよなら、偉大な天才技術者さん」


 俺は老人に別れを告げ、船を宇宙へ向けて浮上させる。

 一日にも満たない滞在時間だったが、有意義な時間を過ごせたと思う。


 あの老人は天才ではない。

 でも、確かな技術を備えていた。


 愛と時間さえあれば人の才能は開花する。

 好きなことを愛する気持ちと、好きなことに費やした時間が、人を天才たらしめるのだ。


 俺も彼を見習って、自分の大切に愛を与えよう。

 小さな木の芽が大樹に育つまで、辛抱強く時間をかけて。


 眼前には無限に広がる暗黒の宇宙。

 この世界のどこかに探している”何か”がある。


 その”何か”を見つけ出すために俺は旅を続けるのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] じーんとしました。 天才じゃなくても好きな気持ちと情熱があれば、いつか報われるのかもしれないですね。 私も頑張ろうって思いました! 素敵なお話をありがとうございました(✿ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
2022/12/15 13:54 退会済み
管理
[一言] どんな話かと思ったら、終始意外な展開! いい意味で裏切られました。 面白かったです!
[一言] 深い…(◡ω◡) 情熱と時間が確かな技術に繋がるというのは、好きで創作をしている身には勇気をもらえるお話でした。 楽しい読書時間をありがとうございました。
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