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お菓子のために1 sideレイン

 

 ソラちゃんは強い。だからこその悩みだったんだと思う。私だったら、戦わなくて良いならそれが良い。


 魔法と剣を使って戦うのは嫌いじゃないし、楽しいとさえ思う。でも、それはこちらが一切怪我をせずに倒せる相手まで。いつ自分より格上の相手と出会うか分からないし、大怪我をするかもしれない。


 その可能性がある限り私は望んで戦いたいとは思えないだろう。


 ソラちゃんが一緒に戦いたいと言ってくれて、私はとても嬉しかった。でもそれと同時に不安にもなった。


 もし何かあっても、常に警戒してくれているソラちゃんが何とかしてくれる。それが無くなると思ったからだ。


 だけどソラちゃんは『警戒しながら戦うね。』と簡単に言い切った。


 ああ。やっぱりソラちゃんはすごいな。私たちとはレベルが違うな。


 一緒に戦ったら私たちの弱さにがっかりしてまた辞めたいって言われるんじゃないだろうか。そんな不安を抱きつつも、今辞めないでいてくれることに感謝しなければならないと思った。



 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎



「レインちゃんのお菓子が毎日食べたいです。」


 フウジが他に要望がないか聞いたら、ソラちゃんはそう答えた。嬉しい反面、ちょっと複雑な気持ちだ。


 私の作るお菓子で喜んでくれるのは嬉しいけど、やっぱりソラちゃんは美味しい食べ物があるから私と仲良くしてくれてたんじゃないんだろうか。


「うん。できるだけ作るようにするね。」


「やった!楽しみにしてるね。」


 そう言ってソラちゃんは微笑む。あぁ、この笑顔を向けてもらえるなら、お菓子目当てでも構わない。そう思ってしまう。


「そういえば、食費ってどっから出してるの?私出したことないけど。」


「私が全部出してるよ。前からそうだったし。」


「えぇー!!そんな、悪いよ!私が出すよ。」


 ソラちゃんは驚きつつ、少し申し訳なさそうに言ってきた。


「大丈夫だよ。食費は私が出して、クライが宿賃、フウジが消耗品とか防具の手入れとかにかかるお金を。って感じで分担してるの。」


 私達がパーティーを組んだ時に決めたことだ。クライとフウジの方がお金はかかっているけど、料理を作る事も私がやるって事で、この分担になった。


 まあ、クライとフウジはお金を気にせず酒が飲めるから、この方が楽って言ってたけど。


「私も出す。…それと、やっぱり分け前多くするのやめてほしい。」


「別にこのままでもいいぞ。それでもソラが入ってくれる前よりかなりお金に余裕があるからな。」


 クライが言うように私もこのままでいいと思う。十分お金は足りてるし、少しずつギルド貯金もたまっていっている。


「だめ。私にも出させないならパーティー辞めるから!」


「ちょっ…!!分かった。分かったから、そんな簡単に辞めるとか言わないでくれ。」


「そうだよ!心臓に悪いよ。」


「え? …ごめんね。」


 もぅ。びっくりしたー。ソラちゃんは私たちにとって必要な存在だってことを分かってない!


 …いや、分かってるからそう言うこと言ってくるのかな?もしそうならかなりタチが悪いけど。


 そう思いつつソラちゃんを見てみる。


 あんまり悪びれている様子はないな。うん。かわいい。


「でも、ソラが出す必要のあるお金は特に無いと思うよ?宿は俺たちとは別だし、防具無しの杖一本だよね。」


 フウジが言う通り、ソラちゃんだけいつも違う宿に帰ってるし、いつも決まっってない服装。杖なんてそうそう壊れるものじゃない。


「宿はみんな同じ部屋なの?」


「いや、俺とクライが2人部屋でレインが1人部屋だよ。」


「なら、私がレインちゃんと2人部屋借りて、そっちを私が払う。レインちゃん、それでもいい?」


「…いいの?」


「え?…私が聞いてるんだけど。あ、私が宿賃を払うこと?それはもちろんいいよ?」


「…った。やったぁぁぁ!!!」



 ソラちゃんと一緒の部屋⁉︎やばい、やばいやばい!嬉しすぎる。どうしよう。


「ソラ、本当にレインと一緒でいいのか?危険かもしれないぞ?」


「んな!何言ってんの!」


 クライは何を言ってるんだか!


「え?もしかしてレインちゃんって…。ものすごく寝相悪いの?」


「悪くないよ!…たぶん。」


 自分じゃあんまり分かんないけど、悪くないよね?


「いや、ソラが良いなら良いんだけど。一応気をつけとけよ。」


「…うん。あ、じゃあフウジとレインちゃんにはこれ。少しだけど使って。この前の休みに臨時収入があったからお裾分け。」


 そう言ってソラちゃんは収納袋から布袋を取り出し、私たちに渡してきた。フウジには片手で収まるくらいの袋を。私には両手に収まらないくらいの袋を渡してきた。


「「…え?」」


 中を確認すると、金貨金貨金貨。あ、大金貨も何枚か入ってる。え?何これ私の貯金の数百倍?


「こんなたくさんの銀貨受け取れないよ!金貨も数枚混じってるし。」


 フウジがそう言ったので、私はもう一度袋の中を覗いた。うん。銀貨なんて入ってないね。真っ金金だよ?







読んでくださりありがとうございます。

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