話し合い2
「…どうしてそんなこと言うの!どこが嫌なの?何がダメなの!」
私が『このパーティーでやっていきたいとは思わない』と言った事にレインちゃんが声を大きくして問いただしてくる。
だから、自分から言うのはちょっと恥ずかしいけど言う事にした。
「私ね、結構強いんだよ。魔物とも戦えるくらいに。」
「「「知ってる。」」」
「いや!知らないでしょ!私、みんなが思ってるよりだいぶ強いんだからね!」
「「「うん。」」」
なぜかみんな真顔になって答えてくる。しかも息ぴったりで。何これ。事前に答えを準備してたかのように合わせてくる。
「…私、結構真面目に話をしようとしてるんだけど、ふざけてるの?」
「いや、そんな事ないぞ。ソラが強いのは知ってるし、今更そんな事言われても。パーティーを抜けたい理由を聞こうとしたのに、分かりきったことを真面目に話されると返答に困ると言うかだな…。」
「私、みんなの前で戦ったことないのになんでそんな事分かるの?」
私は、この数十日みんなの後をついて行っただけで、戦闘には一度も参加していない。それなのに私の実力が分かるなんてあり得ない。
「ソラは俺たちが戦ってる時、全体を把握していつ攻撃が来ても対処できるようにしてるだろ。俺たちは目の前の敵を倒すだけだが、ソラは3人分の相手全てに対処できるようにしている。最初の頃はたまにチラッと見てたが全く隙が感じられなかったからな。」
「ソラが掛けてくれる強化魔法は、ばらつきがなく、いつも一定だよね。それは、魔力のコントロールがずば抜けて上手いからだよね。それに3人に強化魔法を掛けても全く魔力が減っているように感じられないから、ソラの魔力量はものすごく多いんだよね。…それに今日の強化魔法の効果は凄いよ。いつもより強力だし、追加でなんかしてるよね?」
「ソラちゃんは可愛くて強い。見ればすぐ分かるよ!」
どうやらクライとフウジには観察されていて、そこから私の実力を測っていたようだ。というか、フウジには今日の強化魔法の事ばれてるし。分かんないと思ったんだけどなぁ。でも、それなら。
「そう思ってるなら何で私に戦わせてくれないの!私、毎日とぉーーても暇なんだけど!」
「「「え?」」」
私は今までみんなと話してきた中で1番大きな声で言い放った。3人ともかなり驚いたようで、場の音が消えた。
そして、とても長い数秒が過ぎた後クライが口を開いた。
「だが、ソラは後衛だろ?いざと言う時に魔力を温存しておかないとだろ?」
「さっきフウジも言ってたでしょ!私、魔力結構多いの!それに弱い魔物くらい杖で倒せるから!」
杖に硬化魔法や反射魔法さえ掛けてれば少ない魔力でそれなりの攻撃力になる。
実は最初の頃は毎日自分の杖に掛けてたけど、使う機会が無かったから最近はやってない。
「じゃあ、ソラがパーティーを抜けたい理由って自分の出番が無いからつまんないってこと?」
「うん。大雑把に言えばそんな感じ。」
フウジには私の言いたいことが伝わったみたいだ。
「私は、ほとんど何もしてないからこのパーティーには必要ないと思うの。それなのに報酬まで増やされて、みんなの分け前は減っちゃうし、私は暇でつまんない。私はいる意味無いよね?」
ここまで言えばみんな理解してくれるだろう。私が必要ないということに。
「ちょっと待て。ソラは毎日強化魔法掛けてくれるじゃないか。それだけでも報酬を貰うに値する十二分な働きだと思うが。」
「そんなのいつも数秒で終わるじゃん。たったそれだけで、みんなよりも多く分け前を貰うのはおかしいよ。」
数日前に辞めたいと言ってから、私の取り分はみんなよりも多くなった。いらないと言っても渡されたから貰っている。
「その数秒にものすごい価値があるんだぞ。それのおかげで、俺たちが魔物を狩って得られるお金は、ソラが来る前の倍以上になってるんだからな。安全に確実に安心して狩りができるってのはものすごく有難いんだぞ。」
「そうだよ。今までの私たちだったら、ぎりぎり倒せるかどうかって相手に無傷で確実に勝てるようになってるんだよ!」
私がいつも掛けている強化は、身体能力と防御2倍だけなんだから、敵に勝てるのは自の強さがあるから。私はそれにちょっとだけ手を貸しているだけ。それなのに私のことを過大評価しすぎだよ。
「でも、私が強化掛けなくてもフウジとレインちゃんは自分でできるじゃん。」
「私たちができるのはせいぜい⒈ 5倍くらいまでだよ。それに身体強化しつつ他の魔法の併用は難しいよ?」
「え?」
「ソラ、今ちょっと俺たちのこと馬鹿にした顔したよね?」
「してない、してない。絶対にしてない!」
ちょっとびっくりしただけ。私は普通に魔法の併用できる。まあ、師匠がやってたから自然と出来るようになってただけだけど。
「ソラは、簡単に出来そうだもんね。とりあえず、ソラの強化魔法がものすごく役に立ってるってのは分かってもらえた?」
「…うん、まあ。」
「じゃあ取り分の件は良いよね。次に戦闘に参加したいってことだけど、自由に前に出てきて良いよ。いつも後ろで警戒してくれるのはとても有り難かったけど、ソラも戦いたいなら仕方ないね。」
「いいの?なら警戒しながら戦うね!それくらいだったら全然出来るから。」
どっちかおろそかになるくらいならどっちもちゃんとやればいいだけのことだからね。
「…ソラなら出来そうだね。とりあえず次の戦闘はそれでいってみようか。これでパーティーを抜けるのは考え直してくれるとありがたいな。他に要望があればできるだけ聞きたいと思うんだけど何かある?」
うーん。あ!あります。1番大事なやつが。もうこれがないと私はこのパーティーでやっていけないやつが。
「レインちゃんのお菓子が毎日食べたい!!」
「「「……。」」」
あれ?私何かおかしなこと言ったかな?みんな何も反応してくれないよ。
「えっと、レインちゃんのお菓子が食べたいです。」
聞こえてなかったのかもしれないからもう一度言ってみた。
読んでくださりありがとうございます。