自称勇者現る 5
ヒュンッツ
僕達は金貨を使い、魔王城前行きの魔石に手をかざした。すると抵抗出来ないほどに何かに引き寄せられ、気付いた時には違う場所にいた。
「ここが魔王城だよ。」
「……!!」
これが転移の力…。本当に着いてしまった。魔王城は全体的に黒く、禍々しいオーラが漂っている気がする。侵入を拒む魔族の門番。そして魔王城に入れば強力な敵や罠が待ち構えているだろう。
…だけど、ちょっと拍子抜けだな。金さえ払えば来れるって事は、召喚されてすぐでも魔王に挑戦できるって事じゃないか。勇者は魔王城に着くまでの困難を乗り越えて強くなっていくべきだろうに。僕は強いから良いけど、次に召喚されるかもしれない勇者は大変だな。
「ソラさん、ありがとうございました。案内だけとの事でしたので、ここでお別れですね。」
「あー。えっと、奥まで案内するよ?」
意外にも、僕がお別れを言うとソラさんは案内を続けると言ってくれた。ここからは大変な戦いになるだろうに、ソラさんは優しいな。
だがこれは嬉しい誤算だ。僕の勇姿を側で見ていてもらえるんだ。安心してください。ソラさんには傷一つ負わせません。必ず守って見せますからね。
「ありがとうございます。でも無茶はしないでくださいね。危ないと思ったら直ぐに逃げてください。」
「…うん。大丈夫だよ。」
ソラさんは僕がそう言うと少し困った顔をした。きっとソラさんは優しいから、何かあっても僕を見捨てる事が出来ないんだろう。
「では、僕が先導します。先ずはあの門番を倒して…!ちょ、ちょっとソラさん!そんな不用意に近付いたら危ないですよ!」
「え?」
僕が門番を見据え歩き出そうとすると、ソラさんは僕の言葉を全く聞いていない様子で門番に近付いて行った。何を考えているんだ!
くそっ!間に合わない!今あの門番が攻撃してくれば、ソラさんは殺されてしまう。
そして僕は剣を抜くのも忘れ、門番とソラさんの間に手を伸ばした。
ああ、まさか魔王どころか門番に殺されるかもしれないな…。だが、門番は僕を攻撃する事なく、思いもしない言葉を発した。
「お帰りなさいませ。ソラ様、セフィリア様。それにクライさん、フウジさん、レインさんもお揃いで。」
「………は?」
どういう事だ?ここは魔王城ではなく、メイド喫茶だったのか?いや、執事喫茶か?
…いや、どう見ても魔王城だよな。禍々しいもん。
「そちらの方は初めてですね。ソラ様のご友人ですか?」
「ううん、違うよ。…何だろう。よく分かんない。」
いやいや、ちょっと待ってくれ。頭が追いつかない。ソラさんは、いやソラさん以外のみんなも門番と知り合い?そもそもソラ様って何だ?いろいろとおかしいだろ…。
だがまあそんな事は些細な事だ。僕はソラさんに友人とも思われていないのか?まあ会ったばかりだし、それは仕方ない。だが、よく分からないとはどういう事なんだ…。知り合いですら無いって事なのか⁉︎
「…ソラさん。あの…。」
「じゃ、行こっか。」
「…はい。」
もう訳が分からない。どうなってるんだよ…。魔王城は来るもの拒まずって事なのか?…きっとそうだ。そうに違いない!ソラさん達は何度も挑戦して名前を覚えられていたに違いない!
僕は頭を抱えるのをやめ、自分にそう言い聞かせた。
そうと分かれば、ここからは僕の出番だ。僕がソラさん達では倒せなかった敵を倒し、魔王を討伐するんだ!ソラさん達の苦労はここで僕が終わらせる!
「ソラさん、ここからは僕が戦います。僕が魔王軍の強敵を全て倒し、魔王を討伐します。ソラさん達は後ろで見ていてください。」
「へぇ、随分な物言いだね。魔王軍四天王の実力を甘く見てるんじゃないの?」
するとソラさんの後ろから1人の少女が声を出した。不敵な笑みを浮かべて話してきたこの少女は、確かレインさんだ。ギルドを出てから一切喋らなかったのに急にどうしたんだ?僕に忠告してくれているのか?
「大丈夫です。何度も言いますが、僕は強いんですから。」
「なら試してあげるよ。魔王軍四天王の1人、この私がね!」
…は?何言ってんだこの子?




