表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パーティーを追い出してもらいたいと思っていたけど  作者: 畑田 紅
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/61

vs 国王

 

 ドシィーンッツ!!


「もう着いちゃった。ドラゴンは速いね!」


「そうだね。とりあえず降りよっか。」


 あれから私達はドラゴンに乗って王都まで来た。ドラゴンの飛行スピードはそこそこ速く、数時間で王都に到着する事が出来た。


「あれ?誰も居ないね。」


「おかしいな。門兵が居るはずだよな?」


「…凄く嫌な予感がする。」


 本当なら門兵が数人居るはずなのに何故か1人も居ない。門に誰も居ないのは警備の面でダメなんじゃないかな?それにフウジが嫌な予感がするって言ったのも気になる。何かあったんじゃないのかな…。


「ソラ、これは凄くまずい事になるかもしれないよ。早くドラゴンをここから…。」


「おい、何だ今の音は!ってドラゴンンンンン!!!」


 フウジが何か言おうとすると、ようやく門兵らしき人が出てきた。しかし、寝巻きのような姿で寝癖もあり、しかも出てきた瞬間に叫んで気を失ってしまっている。


「おい!どうしたんだ!こんな所にドラゴンなんかいる訳…。」


 少し遅れてもう1人出てきたと思ったら、今度は目を見開いて固まってしまった。大丈夫なのかな、この門。


「大丈夫ですか?」


「って、うわぁぁぁ!!何でドラゴンがこんな所に⁉︎」


 門兵は動いたと思ったら、叫び後ずさった。


「ソラ、門兵が居なかったのはドラゴンが原因だと思うよ。おそらくそろそろ…。」


 ドタタタタタ!!


「おい、大丈夫かお前ら!ドラゴンは何処だ!…ん?ソラじゃねぇか。危ねぇぞ、今ここにドラゴンが向かっているって連絡が…。  …は?」


 フウジが何か言ったと思ったら、その声をかき消すが如くの足音で1人の男性がやって来た。屈強な肉体に鎧姿。騎士団長のジェームズさんだ。


「あ。こんにちは、ジェームズさん。」


「またお前かぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ジェームズさんは辺りが振動するんじゃないかってくらいの大声で叫んだ。私は急いで耳を塞いだけれど、耳がキーンとなっている。


「ジェームズ、現状は?」


 ジェームズさんが叫んで直ぐ、今度は国王様がやって来た。


「…ソラがドラゴン連れて来ました。私は戻って皆に避難が不要だと伝えて来ます。」


「………。うん、理解した(分かった)。頼んだよ。」


 ジェームズさんは国王様と一言交わすと、引き返して行った。何やら避難だとか不穏な言葉が聞こえて来たけど、何かの間違いだよね…。間違いであってよ。


「で、ソラちゃん。どういう事か説明してくれるかな?どうなったらドラゴンをお持ち帰りする事になるのかなぁ?」


 国王様が凄く怒っているのが伝わってくる。怖くは感じないけど、ちょっとまずい事になってしまったな。


「…ドラゴンがお母さんのペットになりたいって言ったので、連れて来ました。」


「おい、我はそんな事言っておらんぞ!ヴィオラを倒しに来たんだ!」


 ドラゴンはそう言っているけど、勝負の結果は見えているんだから間違いじゃない。


「…どっちが正しいのかな?」


「ドラゴンがお母さんと勝負して、負けたらペットになるって言っています。」


「はぁ、ドラゴンがヴィオラのペットになるのかぁ。ますます手が付けられなっちゃうな…。」


 国王様は私の説明を聞いてドラゴンがペットになる事を憂いた。もちろんお母さんが負けるなんて微塵も思っていない。


「おい!何故お前まで我が負ける前提で話しておるのだ!不愉快だぞ!」


「え?あれに勝てる訳無いじゃん。ヴィオラには黙っといてあげるから、さっさと帰りなよ。」


 少しドラゴンが可哀想になる言い方だけど、国王様なりの優しさだとさえ思えてくる。だけどこんな言い方したらドラゴンだって怒るんじゃ…。


「貴様、龍王である我に随分と言ってくれるな。何様だ!今すぐ殺してやっても良いんだぞ!」


「え?龍王なの⁉︎…ゴホン、申し遅れたね。ボクはこの国の国王、エルリックだ。もしボクを殺すと言うのならば、全力で相手させてもらうよ。」


 国王様は強そうなイメージが全然出来ないけど、一応元Sランク冒険者だもんね。ドラゴンと戦うくらい出来て当然か。お母さん以外の元Sランク冒険者が戦っているのは見た事ないから、少し興味があるな。


「ふはははは!舐められたものだな。人間の国王なぞ、座っているだけの雑魚であろうが!国王如きが龍王である我と対等であるとでも思っているのか!」


「なら試してあげるよ。」


 国王様はそう言うと剣を抜いた。国王様の使う剣は細いけどかなり丈夫そうだ。それに無駄に輝いている気がする。


「さすが元Sランク冒険者だね。剣に無駄なく魔力が行き渡ってるよ。」


「え?フウジはそんな事まで分かるの⁉︎」


 確かに国王様は剣に魔力を纏っているけど、それがどんな風になのかはおおまかにしか分からない。


「ソラも分かるでしょ?俺もあれくらい出来る様にならないとな。」


「…そうだね。」


 そっか。私みたいに魔力量に任せて武器を強化するだけじゃダメなんだ。強化する武器をより理解してから強化する事が大事なんだね。身体強化と同じ感じで。


「ほら、さっさとかかって来い。まあそんな剣では我に傷一つ付けれんだろうがな。」


「じゃ、遠慮なく行かせてもらうよ。」


 ドラゴンはまた私の時と同じように、相手を完全に舐めきっている。学習能力が無いのかな?フウジが言っている事が正しいなら、あの剣で傷が付かないとは思えないのに。


 そして国王様は一瞬でドラゴンに接近した。身体強化をしているみたいで、ものすごいスピードだ。あんなスピードだったら準備していないと私じゃ対抗出来ないな。


「舐めすぎだよ。」


 スパンッ!!


「ぎぃやぁぁぁぁ!!!何だ⁉︎何が起きたんだ!」


 ドラゴンの左足は綺麗に切断され、血が滝のように溢れてくる。せっかく治してあげたのに、また左足が無くなっちゃったよ。


「お、お前がやったのか⁉︎クソォ、焼き殺してやるわ!」


「凄い炎だね。ま、ボクには当たらないけど。」


 国王様はドラゴンのブレスを華麗に避け、今度は左翼を斬り落とした。…そこも私が治したのに。


「何故だ…。何故国王如きがこんなに強いんだ!!」


 ドラゴンはまた国王様にブレスを放ったけど、もちろん当たる事は無く、国王様はドラゴンの前に立ち、剣を突きつけた。


「まだやるかい?ボクはドラゴンのペットなんて要らないから、続けるなら殺しちゃうよ?」


「…どうなっているんだ。何故1日に二度も…。」


 ドラゴンは戦意を喪失した様で、声に覇気がない。これから三回目の負けが待っているんだから、少し同情しちゃうな。


「国王様、殺しちゃだめです。そのドラゴンが居ないと、瘴気が溜まるらしくて。」


「そうなんだ。よく分からないけど、殺す気は無いよ。これからヴィオラに負けてもらわないといけないからね。」


 国王様は殺す気は無いけどお母さんと戦わせる気は満々みたいだ。少し可哀想だけど、実力を弁えさせるには、その方法が一番良いからね。


 そして私は、本日二度目の回復魔法をドラゴンに使った。翼と足が繋がると、ドラゴンは小さな声で『すまない』とお礼を言ってきた。


「それにしても国王様ってお強いんですね。お母さんとも良い勝負が出来そうですよね?」


「あはは。これでもSランク冒険者だったからね。…でもね、ソラちゃん。ボクじゃヴィオラの相手にすらならないよ。」


 国王様は私が褒めると少し嬉しそうな表情をした。だけど、こんな強さを見せた国王様なのに、お母さんには勝てないと言う。


「でもそのスピードで斬りかかられたら、私なら死んじゃいますよ?」


「そうかもね。でもヴィオラはどのくらいのスピードで結界を張れると思う?」


「…一瞬ですかね?」


「うん。そしてボクにはその結界を破れるだけの力も魔力も無い。そしてヴィオラはボクより速く動ける。勝ち目なんてある訳無いよね?」


 言われてみればその通りだ。そもそもお母さんに攻撃を当てる事は出来ないんだ。いくら国王様が強いと言っても、桁違いの強さのお母さんでは相手にならない。


「…そうですね。お母さんはそういう人でしたね。」


「そうだよ。ソラちゃんが1番よく知ってるはずでしょ?あとソラちゃん、ボクの事は国王様じゃなくて、エルさんって呼んで良いんだよ?」


「…あははは。」


 こんな戦いをした後に、こんな冗談を言ってくるなんて余裕あるなぁ。


「ちょっとエル!何私の娘と楽しそうに会話しているのよ!」


 そして、空からお母さんが降臨した。魔術師団長のケールさんとサラお姉ちゃんを抱き抱えて。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ