最強の誘惑
今日の私は昨日までとは一味違う。昨日とってもいい作戦を思いついたんだ。
私が『辞めたい』と言っても辞めさせてくれないなら『辞めてくれ』と言わせるように仕向ければいいんだよね。
だから私は今日から適当にサボったり、勝手に寄り道したりいろいろやっていこうと思った。
でも、先ずは一応。
「パーティーを抜ける手続…。」
「ソラちゃん!今日ねお菓子作ってきたんだ。お昼ごはんの後に食べようね。だから今日もがんばろ!」
そう言って、レインちゃんは私の話を遮ってきた。…どういう事?そんなので私がどうにかなると思ってるの?…いくらそんな美味しそうなケーキを見せられたって。
「え!凄い。おいしそう。」
あーもう。レインちゃんが作ったお菓子なんて美味しいに決まってるじゃん。どうしてこんなことをしてくるの?
レインちゃんが作るおいしいご飯くらいだったら辞めたい理由の方が優ってたけれど、お菓子まで出されたら気持ちが揺らいじゃうよ。
たまたま。そう今日だけだから。明日こそ実行しよう。
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次の日、レインちゃんは昨日と同じように言ってきた。
「ソラちゃん、今日はクッキー焼いてきたの!」
あー…もうダメ。私、この世の食べ物の中でクッキーが1番好きなんだよ。それに、昨日のケーキとっても美味しかった。フワフワで最高だったんだよ。これも絶対美味しい。断言出来る。
「うん。凄く楽しみ。」
喜んじゃダメなのにどうしても顔がにやけてしまう。もうダメなのかも知れない。
そして私は今日も誘惑に負けた。
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「今日は辞めたいって言ってこなかったな。レインのお菓子が効いたのか、辞めるのを諦めたのかいまいち分かんないな。」
「えぇ!食べてる時凄く嬉しそうにしてじゃん。きっと、そのおかげだよ!」
今日の狩りが終わった後、私たち3人はまた集まっていた。作戦の効果を話し合うために。
「嬉しそうにしてはいたが、ご飯食べる時だけはいつも嬉しそうだし、俺にはいつもとたいして変わんないように感じたぞ?」
「え?結構違ったよ。なんかお菓子口に入れた時、いつもより顔が緩んでたよ。」
クライにはこの違いが分かんなかったのかな?いつもより2割増くらいに可愛かったのに。
正直こんな作戦でうまくいって欲しくなかったけど、ソラちゃんに喜んでもらえるのはすごく嬉しい。
「明日も同じようにお菓子作ればいい?」
「あんまり効果ないように思えるんだがな。とりあえず続けてみるか。」
「レインは大丈夫?毎日狩りが終わってからお菓子作り大変じゃない?」
「ぜんぜん大丈夫だよ。」
フウジは心配してくれたけど、作るのは楽しいしソラちゃんが少しでも喜んでくれるなら作りがいがあるからね。こんな事でソラちゃんが辞めないでいてくれるなら毎日やるよ。
「なら明日は、狩りに行く前にお菓子があることを言わずに行ってみよう。無いと思わせといて実は作ってきてるって感じでな。」
「おっけー!」
確かにそうすれば、もらった時嬉しさ倍増だもんね。下げて上げる戦法だね。
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