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パーティーを追い出してもらいたいと思っていたけど  作者: 畑田 紅
1章

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30/61

サラとシルビア 1

 

「あれ?開いてる。」


 王城から帰り、家に着くと何故か家の鍵が開いていた。師匠はデートって言ってたし、サラお姉ちゃんはまだ仕事だよね?


「ただいまぁ…。」


 ただの締め忘れかもしれないけど、一応私は声を出してみた。


「あら、お帰り。早かったわね、ソラちゃん。」


 そして、私の声に反応して奥から出てきたのは、サラお姉ちゃんだった。


「今日は早いんだね。お仕事はもう大丈夫なの?」


「ええ。他の受付嬢に早く帰れって言われて、仕事取られちゃったのよ。」


 ん?どういうこと?仕事ができるサラお姉ちゃんが、仕事を任されたではなく、取られたの?私が疑問に思い、首をかしげていると、サラお姉ちゃんは続けて言ってきた。


「『ソラちゃんが待ってるんだから、早く帰ってあげてください!』ってみんなして私の仕事を奪っていくのよ。だから、お言葉に甘えて帰らせてもらったのよ。」


「…えーっと。私のせい?」


 確かにサラお姉ちゃんには、早く帰ってきてもらいたいけど、サラお姉ちゃんの仕事が終わるまで待っていることくらいできる。サラお姉ちゃんはギルドにとって、ギルドマスターの次くらいに重要な人物のはずなのに、私がギルドで『夕ご飯を楽しみにしてる』なんて言ったから、それを聞いた他の受付嬢さんが気を利かせてくれたってことだよね。なんだか申し訳ないな。…嬉しいけど。


「そうよ。ソラちゃんの笑顔を見てみんな張り切っちゃったのよ。ソラちゃんがは気づいていないかもしれないけど、ソラちゃんはギルドで凄く人気があるのよ。」


「…え⁉そうなの?」


 私はサラお姉ちゃん以外の受付嬢さんとはほとんど話したことが無いのにどうしてだろう?やっぱり冒険者って男の人が圧倒的に多いからかな?とかいろいろ考えていると、サラお姉ちゃんは斜め上な回答をしてきた。


「ええ。『サラさんに向ける笑顔を私にも向けてほしい』とか『私もお姉ちゃんって呼ばれたい』だとか。」


「え⁉ …妹が欲しいって事?」


 冒険者としての実力とかを評価されて人気があるのかとかでもなく、まさかの妹?それだったらレインちゃんの方が、幼くてかわいいのに。


「んー。ちょっと違うかしらね。何というか、みんな飢えているのよ。『ヴィオラお姉さま今日も素敵だわ』とか言う子もいるのよね。ちょっとそれには全く共感できないけど、みんなむさ苦しい職場で癒しを求めているのよ。それなのに私がソラちゃんとヴィオラ、あとレインちゃんも独り占めしているから、みんな羨ましくて仕方がないのよ。たぶんね。」


 確かに若い女性冒険者って少ないもんね。師匠がお姉さまっていうのは謎だけど。正直言って、師匠は童顔だから、見た目は受付嬢さん達よりも幼く見えるのに。


「じゃあ、たまには他の受付嬢さんのところにも行ったがいいのかな?」


「ダメよ!ソラちゃん達は私の担当なんだから。あの子たちにはヴィオラでも押し付けてれば十分よ。」


 別の受付嬢さんのところに行く気はさらさらないけど、ちょっと冗談交じりに言ってみたら、サラお姉ちゃんにそう言われた。そう言ってくれた事に嬉しくなってついつい顔がにやけてしまう。


「別に本当にヴィオラを押し付けようなんて思ってないわよ?」


 私がにやけていると、サラお姉ちゃんは私が面白くて笑っていたのかと勘違いしたみたいでそう言ってきた。


「お母さんは押し付けて大丈夫だよ。えっと、サラお姉ちゃんが私を独り占めしようとしてくれてるのが嬉しくて…。」


「…もう、かわいいんだから!」


 私が少しもじもじしながらそう言うと、サラお姉ちゃんは私を抱きしめ頭をなでてきた。私はそれが嬉しくて、更ににやけてしまう。


 ガチャっ


「ただいまぁー。…ちょっと、何玄関で抱き合ってるのよ!!ぞるいわよ!あ、ソラおかえり。」


 するとドアが開き、師匠が入ってきた。


「ただいま。お母さんはデートじゃなかったの?」


「ちょっと、何で知ってんのよ!サラ!言ったわね?」


 どうやら、私には知られたくなかったみたいで、少し動揺しながら師匠はサラお姉ちゃんを問いただした。


「別にいいじゃない、子供じゃないんだから。それより、どうしてもう帰ってきたのよ。てっきり夕ご飯まで食べてくると思っていたから、ヴィオラの分のご飯は用意してないわよ。」


「え…⁉そんな。私、夕ご飯まで食べてくるなんて一言も言ってないじゃない!」


 師匠は駄々をこねた子供のように、サラお姉ちゃんに突っかかる。


「ふつうは食べてくるのよ。デートなんだから。」


「何よそれ!『ふつうは』とか知らないわよ。デートなんて初めてなのよ!お店のご飯よりサラの作った料理の方がおいしいんだから、そっちを優先するに決まっているじゃない!大体、『ふつうは』ってサラもデートなんてしたことないんじゃないの?ほんとにその『ふつうは』って合ってるかも怪しいわよ!」


「な…。私だってデートの一回くらいあるわよ!」


「ふーん。『一回』ね?」


「そうよ!一回よ!悪い?」


「たった一回でふつうを語られてもねぇ?」


 ちょっとずつ話がずれつつヒートアップしてきた。このままじゃ少しまずいかなと思って私は仲裁に入った。


「お母さん、私のご飯を半ぶ…ちょっとだけ分けてあげるから。ね?」


「ちょっと!なんでちょっとだけなのよ!ソラのけち!」


 話はすり替えられたみたいだけど、今度は私と師匠でけんかになってしまいそうな雰囲気になってしまった。


「はぁ、大丈夫よ。今日はソラちゃんが帰ってきたから多めに作っているのよ。」


「最初からそう言いなさいよ!もう。」


 師匠は自分が食べる分のご飯があることが分かると、さっきまで言い争いをしていたことをすっかり忘れたかのごとく、機嫌がよくなった。


「じゃ、早く食べよ?私もうおなかぺこぺこ!」


「ええ、すぐに準備するわね。」


 そう言ってサラお姉ちゃんはキッチンに向かい、私と師匠もそれに続いて行った。リビングに入ると、料理はもうある程度完成しているようで、いい匂いが漂ってくる。


「いい匂い!サラお姉ちゃん、なんか手伝えることある?」


「もう盛り付けるだけだから大丈夫よ。座って待っていて頂戴。」


「はーい。」


 私はお言葉に甘えて席に着いた。師匠は既に座っており、もう食べる準備は満タンみたいだ。その後、すぐに料理が運ばれてきて、机に並んでいく。どれもすごくおいしそうで、食欲がすすられる。


「じゃ、食べましょうか。」


「うん!「いっただっきまぁす!!」」


 もちろんどれも美味しくて、どんどんお箸が進んでいく。本当に国王様のお誘い断って良かったなぁ。私にとっては国王様が食べるような食事よりも、サラお姉ちゃんが作ってくれた料理の方が価値があるし、絶対口に合うと思う。


「あぁ、幸せぇ~!今日もすごくおいしいよ!」


「ふふ、当り前よ。私がソラちゃんのために作ってるんだもの。」


「えへへぇ。」


 サラお姉ちゃんの言葉に嬉しくなって、ついつい顔が緩んでしまう。本当にどうしてこんなに素敵な人に恋人がいないことが不思議に思う。まあ、できたとしても簡単には渡さないけどね。


「ちょっとぉ、ソラのためだけなの?私のためじゃないの?」


 すると、師匠がさっきのサラお姉ちゃんの言葉に疑問を抱いたようで、絡んできた。


「今日はソラちゃんのためよ。ヴィオラはおまけ。今夜は2人っきりの予定だったもの。それより、デートはどうだったの?」


「楽しかったよ。」


 師匠のデートについては私もすごく気になっていたから、私は手を止めて耳を傾けた。


「………。」


「………。」


「え?それだけ?なんかもっとないの?」


 でも、師匠が楽しかったと言っただけで会話が終わってしまい、思わず突っ込んでしまった。


「普通に食事して、ぶらぶらしただけだもの。」


「でも、楽しかったなら夕ご飯まで食べようっては思わなかったの?」


 楽しかったなら、そのままできるだけ一緒に居たいって思うよね?


「家に着くのがご飯の時間に間に合うように別れたんだから、そんな話出なかったわよ。」


「私の料理なんて、もういつでも食べられるじゃない。」


「私は1日1回はサラのご飯食べないと生きていけないのよ!」


 師匠の言うことは少し大げさだけど、気持ちは凄く分かる。私もサラお姉ちゃんの料理を食べるようになってからは、これがないと生きていけないって思ったことは何回もあるからね。


「…朝も食べたじゃないの。」


「あ。2回!1日2食はサラの料理を食べないと生きていけない!…そんなことより、ソラはどうだったのよ。魔王はいけ好かないやつだったんじゃないの?」


 師匠はごまかすように話をすり替えてきた。自分で言ったことが少し恥ずかしかったのか、少しだけ顔が赤くなっている気がする。


「すごく楽しかったよ。シルビアさんもいい人だったし。」


「は?誰よ、シルビアって。」


 すると、師匠にも国王様と同じような反応をされてしまった。


「魔王の名前よ。そのくらい知ってなさいよ。」


 私が答えようとすると、それよりも早くサラお姉ちゃんが答えてしまった。国王様ですら知らなかったのに、サラお姉ちゃんが知ってるなんて驚きだな。ギルドにはそういった情報もあるのかな?


「なんでそんなことサラが知ってるのよ!」


「会ったことあるもの。シルビアは信頼できる魔族よ。」


「ええええええぇーー!!!」

「はあぁぁっぁぁーー!!?」


 サラお姉ちゃんの爆弾のような発言に私と師匠は驚きを隠せず、思わず大きな声をあげてしまった。






読んで頂きありがとうございます。

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