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結界破壊

 

「…おはよう。」


 やっぱりレインちゃんの機嫌が悪い。まあ、私のせいなんだろうけどね。


「おはよう、レインちゃん。…その、昨日はごめんね。」


「…良いよ。別に怒ってないし。」


 あー。明らかに機嫌が悪いな。でも、私だって頑張ったんだよ?


「…ご飯、行こっか?」


「…うん。」


 もう、どうしたら良いの?これはもう、フウジに解決してもらおう。


 私は急いで顔を洗い、着替えてから1階の食事スペースに向かった。


「先に行ってるね。」




 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「…ってな訳で、レインちゃんを怒らせちゃったの。私も頑張ったけど、起きてられなくて。どうすればいいと思う?」


 1階に行くと、もうフウジは朝食をとっていたから早速相談してみた。


「うーん、もうそのままで良いんじゃ無いかな?ソラが何か頑張ったところで、レインは満足しないと思うし、一緒に居るだけでその内機嫌も治ると思うよ。」


「え?それで良いのかな?何かやってあげた方が良いんじゃないかな?」


「ソラがやりたくもないことやったって、どうせ失敗するだろうし、レインのためにもならないよ。パーティーを組んでるんだから、お互いにある程度妥協する事も大事だよ。ソラはレインを邪険に扱わずに、普通にしてれば大丈夫。レインだって、変に気を使われても嬉しくないだろうから。」


 言ってることは分かるんだけど、本当にそれで良いのかな?フウジは意外とドライなのよね。


「分かった、ありがとう。とりあえず、これ以上機嫌を損ねさせないように気をつけるね。」


 とは言ったものの、全く何もしないってのもね。このままじゃギクシャクするし、師匠のところに着くまでになんとかしないと。


「ちょっとソラちゃん!どうしてそんな急いで行っちゃうの?私、本当に怒ってないから!変な気を使わないでよ!」


「え?でも、さっきは明らかに機嫌が悪そうだったよ?」


「私がソラちゃんに期待しすぎてただけだから!ソラちゃんにはもう期待しないから。…ソラちゃんに避けられるのは絶対嫌。」


「…え。…避けたりはしないよ。」


 なんか、フウジが言っていた通り…いや、それ以上ね。レインちゃんが言っていることは、夜は気にせず寝て良いって事だろうけど、言い方がなんか…。


「絶対だよ!」


「うん。」


 レインちゃんは本当にもう怒ってないようで、いつも通り接してくれた。そして私達は朝食と身支度を済ませ、宿を出た。




 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「…もうやだ。帰りたい。」


 師匠のもとに向かっていると、急にレインちゃんが弱音を吐いた。


「え?でも、会いたいって最初に言ったのレインちゃんだよ?」


「言ったけどさ、こんなのおかしくない?1時間くらいっていってたのに、もうずっと魔物と戦ってばっかで1時間なんてとっくに過ぎてるよ?」


「ソラは何もなければ1時間くらいって言ってただろ?魔物と出会っちまったもんは仕方ないだろ。」


 私達が山に入ってからというもの、魔物が物凄く出てくる。私は慣れてるけど、みんなは初めてだから驚いているようね。1人だと、適度に躱しながら逃げつつ簡単に辿り着けるんだけど、4人集まってると寄ってくる魔物の量が桁違いね。


 そして私達は、なんとか捌きながら少しずつ進み、3時間ほどで家が見えるところまで到着した。


 すると家が見えた事で、レインちゃんが急に走り出した。


「ソラちゃん、早く!私もう疲れたから休みたい゛…。」


 ごんっ!!


「ちょっと、レインちゃん大丈夫?」


 レインちゃんが思いっきり結界にぶつかってしまったのだ。結界がある事言い忘れていたよ。


「うー。なんでこんなところに結界があるの⁉︎入れないじゃん!」


「魔物がこれ以上、家に近付けないように常に張ってあるんだよ。」


 これだけ魔物がいるから、結界を張っておかないと大変なことになるからね。


「…これ、どうやって入れば良いんだ?ヴィオラさんが張ってるやつなんだろ?ソラでも解除出来るもんなのか?」


「解除は出来ないから、壊して張り直すんだよ。」


 張った本人じゃないと簡単には解除出来ないからね。一度壊した方が手っ取り早いんだよね。


「…は?どうやって壊すんだよ。」


「ちょっと待っててね。今壊すから。思いっきり魔力をぶつければ意外と簡単に壊れるんだよ。」


 これは、結界の強度を超える攻撃を加えれば良いだけ。私じゃ物理攻撃で壊すのは無理だけど、魔力ならいけるからね。


 私は全魔力を集中し一気に放った。


 ブワァッ!


「…な、な!」


「………っ。」


「ソ、ソ、ソ、ソラちゃん⁉︎」


 パリンッッ!!


「はい、終わったよぉ。じゃあ、新しく結界張るね。」


 私はすぐさま結界を張り直し魔物が入って来れないようにした。


「あれ?みんなどうしたの?」


 見ると、クライとフウジはしゃがみ込み、レインちゃんはへたり込んでいた。


「…なんだよ、その魔力。立ってられねぇよ。」


「えへへ。結構凄いでしょ!」


 魔力量だけは、かなり自信があるからね。



 どたたたたたたた、



「ソ〜ラ〜〜ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 急に大声で名前を呼ばれたので、振り向いてみると家から出てきた師匠が凄いスピードで迫って来ていた。


 師匠はそのままの勢いで私に飛びついてきたから、私はどうすることもできず、押し倒された。


「おかえり、ソラ!」


「ただいま、師匠。」


 ちょっと激しすぎる師匠に私はびっくりしながらも、ただいまと返事をした。


「…もう1回。」


「え?ただいま、師匠?」


「違う!呼び方!」


 あぁ、そう言えばここを出ていく時に一度だけ呼んだんだったな。私は、その事を思い出しもう一度言い直した。


「…ただいま、お母さん。」


「うん!おかえり、ソラ!」


 師匠は、お母さんと呼ばれた事がよっぽど嬉しかったようで、満面の笑みを向けてきた。


 師匠は、私と同じクラウドの町の出身で、私と同じ赤い髪を腰まで伸ばしている。そして、元Sランク冒険者で私の命を救ってくれた大恩人でもある。


「紹介するね、今パーティーを組んでいるクライとフウジ、そしてレインちゃん!」


私は起き上がり、背中に付いた汚れを払った後、みんなを紹介した。


「「「はじめまして。」」」


 みんなは師匠の激しい登場に呆然としていたけど、急いで立ち上がりあいさつをした。


「うちの娘が世話になってるようね。私はヴィオラ、よろしくね。さっ、うちに上がって!美味しい…かは分かんないけど、ご飯が出来てるわ。1人分だけだけど。」


 ちょうどお昼の時間だからご飯が出来ているようだ。でも、師匠はあんまり料理が得意じゃないもんね。私もだけど。それに、1人分じゃ絶対足りないよね。


「そんなの頂けないです。自分たちの分は、私が作りますから。」


 流石はレインちゃんね。それに、師匠には悪いけどレインちゃんのご飯の方が絶対に美味しいからね。


「なら、出来てる分はソラが食べて良いわよ。久しぶりに私の料理食べたいでしょ!」


「…うーんと、私はレインちゃんが作ったので良いかな。」


 そう言ってくれるのは嬉しいんだけどね。


「そ、そんな…。食べたいよね?遠慮しないで!お母さんの手料理食べたいって言ってよぉ〜!!」



 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



「…レインちゃん、料理上手ね。悔しいけど、ソラが私の料理を優先しないのも分かるわ。」


 結局、師匠の料理は私が食べる事になり、みんなの分はレインちゃんが作った。レインちゃんの料理も美味しそうだけど、久しぶりの師匠の料理も懐かしいからいっかな。


「ありがとうございます。お口にあって良かったです。」


 あー。でも、あっちも食べたかったな。レインちゃんはぴったり4人分作ってるから、私の分は無いけどね。


「はぁ、やっぱりソラが家に居てくれるのは良いなぁ。もう1人じゃ寂しくて、寂しくて。もう、ずっとここに居てよぉソラ。みんなも一緒で良いから。」


「えぇ!私冒険者になったばっかだよ。師匠もちゃんと送り出してくれたじゃん!」


 師匠とは9年間一緒に住んでたから、急に1人になって寂しくなったみたいね。


「あー!また師匠って呼んだね。もう師匠呼び禁止!」


「え⁉︎…分かった。」


 もう。師匠ったら。これじゃあ、もう師匠って呼んでも返事してもらえないわね。我がままなんだから。


「でも、ソラちゃんは冒険者としてすっごい活躍してますよ!すぐにAランクになって、この収納袋『ソラちゃんの魔法の袋』も今後絶対に有名になるし、ソラちゃんならSランクにだってなれちゃいますよ!」


 レインちゃんは、私があげた収納袋を見せて私の事を話した。もう、師匠にそんな事言われたら恥ずかしいよ。


「あ、私のと名前も文字もそっくりじゃない!なに?私のを意識して書いたの?うふふ。」


 師匠はにこにこしながら、私に問いかけてきた。


「うん。名前はレインちゃんが考えたんだけどね。」


「あら、嬉しいなぁ。え?このNo.1ってのはこの子がソラの1番って事?違うわよね!1番は私よね⁉︎」


 すると、師匠は変なところに食いついてきた。そんな事気にしなくても、私が1番大切なのは師匠なのに。


「違います!絶対に。ただの製作順です。…好きな順番になっちゃったら、私があの女に負けてるって事に…。」


「え⁉︎誰よ、あの女って!私を差し置いてソラをたぶらかしているのね⁉︎」


 たぶらかしているって何よ。レインちゃんも、あの女呼ばわりするなんて酷すぎるよ。


()()()受付嬢ですよ。ただの。その女にソラちゃんは、No.0渡しちゃうんですよ。どう思います?」


「…ねぇ、それってサラのこと?」


「…え?そうですけど。知ってるんですか?」


「…そっか。まだ続けてたんだね。ソラ、久しぶりのサラお姉ちゃんはどうだった?」


「うん。とっても優しくて、あの時のまんまだったよ。ギルドに登録しに行ったらお姉ちゃんが居て、すっごく嬉しかったんだ!」


 サラさんとは9年前に1度だけ会った事がある。私が王都のギルドで登録したのは、師匠と同じ場所ってのが1番の理由だけど、サラさんにもう一度会えたらいいなっていう希望もあった。


「レインちゃん、サラは私の1番の親友でとってもいい子だから、あの女なんて呼んじゃダメよ。私、怒っちゃうわよ?」


「え、えぇ!どういう事⁉︎サラさんはソラちゃんのお姉ちゃんなの?教えてよソラちゃん!」


「うーん。秘密。」


「またぁ⁉︎ソラちゃん、サラさんのことになるとそればっかり…。」


 サラさんとの思い出は語り出すと長くなるからね。それに、師匠と私以外に話すような内容じゃないからね。


「そっか、サラが居るのか。あぁ、私も会いたくなってきた。…決めた!私も王都に行くわ。ここに1人で居ても寂しいだけだもの。」


「「「「えぇぇぇぇ!!!!」」」」



 その後は、師匠と模擬戦をしたり、家を出てからの話を聞かせたりして過ごした。やっぱり師匠はとっても強くて、誰も一撃も当てれなかったけどね。


 夕飯と朝食はもちろん、レインちゃんに作ってもらい、私達は師匠と共に下山した。家の中にあるものは全て収納袋に仕舞い、私と師匠で二重に結界を張った。


 家を囲う最小限の大きさにしたし、家の中に師匠の持っていた、魔力をたっぷり蓄えたドラゴンの魔石を置き結界の核にしたから、無理矢理破られない限り数十年は問題ない。


 下山した後は、昨日狩った魔物と下山中に狩った魔物を買い取ってもらうためにギルドに向かった。




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