作戦会議 sideレイン
私たち3人は今日の狩りが終わった後、ソラちゃんには内緒で集まった。そして、クライが話を切り出す。
「…どう思う?あんなにはっきり、抜けたいって言うなんて…」
今朝、ソラちゃんは急にパーティーを抜けたいと言い出した。私達はどうにか辞めないで欲しいって言ったんだけど、もうソラちゃんは抜ける気でいるみたい。
「わかんない。…私たちのこと嫌いになっちゃったのかなぁ?」
「でも、朝にパーティー抜けたいって言ったこと以外は、いつも通りだったよ。強化魔法もちゃんと掛けてくれたし、昼食の時も普通に会話してくれたよ」
私とフウジにも、どうしてなのか分からなかった。ソラちゃんは狩りの時には、ちゃんと強化魔法を掛けてくれるし、ご飯の時は普通に、たわいもない話をしてくれる。だけど今日、急にパーティーを抜けたいと言ってきた。
「今朝のソラが言った事は、正直意味が分からなかったもんな。自分の事が役に立たないとか、必要無いとか。」
ソラちゃんは何かを隠している。ソラちゃんが1番役に立っているのに、そんな事を言うって事は、私達に言えない辞めたい理由があるはずだ。
でも、私たちではどうしようもない理由だったら…。どんなに頑張っても阻止できそうにない理由だったら…。
…そう考えるだけで怖かった。
「だが、無理矢理辞めようとしなかったから、絶対に今すぐ辞めなくてはいけないと言うわけではないと思う。」
「うん。そうだね」
クライがそう言った通り、私とフウジもそれは感じていた。
ソラちゃんが黙って辞めようとすれば、簡単に逃げられると思うし、そもそも3人がかりでも力ずくで止めきれない。
だから、ちゃんとした理由があって、私たちのパーティーを抜けたいって言ってるんだと思う。
…その理由が見当もつかないのだけど。
…それでも、私たちに出来る事をやるしかない。
「…やっぱり、パーティーを抜けたくないって思わせるしか無いよね」
「まぁ、それはそうなんだが、現状俺たちが出来る事なんてあるのか?」
「ソラちゃんの好きなものをあげるとか、行きたいとこに一緒に行くとか!」
「…ソラの好きなものって誰か知ってるか?」
クライの言葉にみんな黙ってしまった。そもそもソラちゃんとの付き合いは、ほんの40日くらいだし、ソラちゃんから何が好きだとかいう話は聞いたことがない。ソラちゃんが好きなもの、好きなもの… 。
「私かな?」
そうだったらいいな…と、思わず私の口から言葉が出てきた。
「「……………」」
だけど、2人は何も言わずに再び考え出す。
「フウジはなんか知らないか?」
そして、私の事は完全にスルーして、クライがフウジに聞いた。
「ちょっと!ひどくない?ちょっとくらい肯定してくれても!」
「いや、レインのことが大好きならそもそも抜けたいとか言わないだろ…」
「あ…」
…そうだね。そうだよね。自分で言った事が、ちょっと恥ずかしくなり、私は俯いた。
「でも、レインとご飯を食べている時は、いつも嬉しそうにしているよね。だからレインのことは好きだと思うよ! ……たぶん」
フウジがフォローしてくれたのは嬉しいんだけど、最後の一言で台無しだよ!
私は、ちょっとフウジを睨みつけながらも2人の正論に悲しくなっていた。
「それってレインが好きなんじゃなくて、レインが作ったご飯とかが好きなんじゃねえのか?レインの料理は美味いし」
「あ、そうかもしれないね。レインの料理は美味しいからね」
…褒められてるのに全然嬉しくない。むしろ悲しい。2人の言ってる事ってつまり、ソラちゃんは私に笑顔を向けてくれていたんじゃなくて、私の料理で笑顔になってくれていただけって事だよね。私の料理にしか興味がないの?
「なら、ソラがレインの料理なしではいられないように、美味しいものを、もっと作ってやってくれ!それでもダメだったらちゃんと話を聞いて説得しよう。…レイン、頼んだぞ!」
「……うん」
そうして私たちの作戦は、ソラちゃんが、またパーティーを抜けると言い出す前に私が作ったお菓子を出し、話を逸らす。という事になった。
こんなので成功するの?いくらソラちゃんが食べ物が好きでも、お菓子なんかでつられるなんて…。
まっ、やるからには、ソラちゃんに喜んでもらえるように、美味しいお菓子を作るけど…。
読んでくださりありがとうございます。