盗賊襲来! sideクライ
「ちょっ、待て。おい!」
ソラは急に昼ごはんまで寝るとか言い出して、自分とレインに睡眠魔法を掛けた。
「…寝ちゃったね。」
「おいおい、どうすんだよこれ。3時間寝るっつったよな。マジで3時間起きねぇのか?」
「…ソラがそう言ったから、起きないと思うよ。3時間ぴったりで起きると思う。」
「はぁ、マジかよ。」
ソラは護衛依頼を何だと思ってるんだよ。護衛中に寝るとか何考えてんだ。この間に襲われるかもしれねぇってのに。
「…何も起きねぇと良いんだが。」
「…そうだね。」
まあ、そういう時は何か起こると相場が決まっているわけで、2時間ほど経った時に異変が起きた。
「うわあああぁぁ!!」
「ぶるぁぁ!!」
ガタガタガタッ!
商会主と馬の悲鳴が聞こえ馬車が止まった。
「どうした!何があった?」
急いでフウジと共に馬車を降り商会主の方に向かった。
「あ、いや。急に大量の矢が飛んできたんだが何とも無いんだ…?」
「「…あー。」」
辺りには無数の矢が転がっており、襲撃された事が分かる。だが、商会主にも馬にも全く傷は無い。
「…これはどういう事なんだ?私は死すら覚悟したんだが…。」
「あー。出発前にソラが強化魔法掛けましたよね。それのせいです。」
「いや、確かに怪我しないって言っていたが、これはおかしく無いか?私も若い頃冒険者やってたから、これがおかしい事は分かるぞ?」
どうやら、商会主は元冒険者のようで強化魔法にどの位の効果があるものなのか知っているようだった。だけどそれは、あくまで一般的なレベルの話で。
「…ソラの強化魔法は異常なんです。俺たち荷台に戻ってるんで、盗賊なんて気にせず進んでください。」
「…分かった。信用して良いんだな?」
「はい。大丈夫です。絶対に。」
そして俺たちは荷台に戻った。…いやいや、おかしいだろ?飛んできた無数の矢を受けて無傷?どうなってんだよ。俺は無言でフウジを見たら、フウジは苦笑いで小さく頷いた。
はぁ、マジかよ…。
「おい、止まれぇ!止まんねぇと殺すぞ!」
「………。」
「止まれって言ってんだろーが!マジで殺すからな!」
外から盗賊と思われる声が聞こえるが、商会主はそれを無視して止まらない。大丈夫だよな。さっきの攻撃を弾くくらいだから絶対大丈夫なはずなんだが…。
「クソ、やれお前ら!」
「「「「「「「「「おおお!!!」」」」」」」」」
何人居るんだよ!やばくねぇか?
「おりゃあ!死ねぇぇ!!」
ガキンッ!!
あ、これ剣が砕けた時の音だ。冒険者登録したばっかの頃は、安物の剣ですぐ折れたんだよなぁ…。
「ふんっ!お前如きの攻撃が俺に通用すると思ってんなか?ふははは!!」
おい、ノリノリじゃねぇか。商会主さんよ。
「クソ、バケモンか⁉︎…おい、馬を殺せ。馬車を止めろ!」
「うるあぁぁ!!」
ガキンッ!!
あ、まただ。すごいなー。ソラの魔法は…。
「ぶるああぁぁ!!」
ぼんっ!!
あ、蹴られたのかなー。
「クソ、どうなってやがんだ!もう馬車を壊せ。車輪さえ壊せば馬車は止まる!」
ガキンッ!ガキンッ!!
馬車にもなんか魔法掛けてたもんなー。
ガチャン…
「…どうなってんだよ。」
あ、諦めたみたいだな。たぶん剣を落としたんだと思う。
その後、戦闘の気配は無く3分ほど経ったら馬車が止まった。俺たちは荷台から降り、商会主の方に向かった。
「…大丈夫、みたいですね。」
「…ああ。凄いぞ。凄すぎる!こんな経験初めてだ。たまんねぇ!痛みすら無かったぞ!」
「「あははは…。」」
ああ、凄く嬉しそうだ。相当楽しかったんだろうな。商会主は満面の笑みで喜んでいる。
「すまない、最初は全く信用していなかった。まさかこんな事があるなんて…!」
「そうですよね。…俺らもまさかここまでだなんて。」
「…え?」
「あ、いやいや。怪我する事は無いとは分かってたんですけど、全く痛みすら感じないとは思っていませんでした。」
「ああ、そういう事か。俺も少しは鍛えてあるからな。そのおかげだろう。」
「そうですね。」
危ねぇ。うっかり俺も自信がなかった事がバレるところだったぜ。
「じゃあ、引き続き護衛頼む。と言ってもやる事無いだろうから、昼飯まで寝てて良いぞ。」
「あ、はい…。」
そして俺たちはまた荷台に戻り馬車は進み出した。
「…俺たちも寝るか?」
「…そうだね。」
商会主の許可も出た事で俺たちも寝る事にした。…護衛依頼ってこんなのじゃ無いんだけどな。
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