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西都への護衛依頼

 

 ギルドマスターの話も終わり、私達はギルド長室から退出した。


「やったな!俺たちついにAランクパーティーだぞ!しかもソラにランク抜かれたと思ったら、俺までAランクだぜ!」


「サラさんに感謝だね。サラさんが言ってくれなかったら、きっと俺たちのランクアップはまだまだ先だったよ。」


 今日、私はDランクになったと思ったら、すぐにAランクにランクアップした。そしてみんなも1つずつランクアップした。3人がランクアップしたのは、サラさんのおかげの部分が大きくクライとフウジはとても感謝している。


「サラさんに手伝って貰わなくても私達ならどうせすぐにランクアップしたよ!」


「なんだ、レイン。まだ不貞腐れているのか?仕方ないだろ、相手がサラさんなら。」


 レインちゃんは、ランクアップした時すごく喜んでいたのに今はそんな事を言っている。ちょっとサラさんに煽られただけなのにね。


「はぁ?クライはあいつのことが好きだからそう思ってるだけでしょ?私、サラさんに負けてるなんて思ってないから!」


「なっ!何言ってんだよ!」


「何?気付いてないとでも思ってたの?ばればれだよ。ねぇフウジ。」


「まあ1年半も一緒にいれば大体ね。」


「なっ…!!」


 凄いこと聞いてしまったよ。クライはサラさんのことが好きだったのね。


「…そうだったのね。」


「ち、違うぞソラ。ただ、ちょっといいなって思ってるだけで、別に好きとかじゃ…。そうだ、今日の報酬分けないとな。…と言ってもソラは今更こんなはした金いらねぇか?」


「いくらはした金でもちゃんと渡さないとダメだよ!今日はソラちゃんがいっぱい倒したんだから。」


 さっきからはした金って、今日が今までで一番多く倒したんだからもっと大事に扱わないと。


「貰うに決まってるよ?私、今一文無しなんだから。」


「「「え?」」」


「いやいや、さっき白金貨大量に貰ったじゃねぇか?何言ってんだよ!」


「まさか、記憶喪失⁉︎あまりの大金に脳が処理できなかったの?」


「ソラちゃん大丈夫?疲れてるんじゃない?」


 みんなして酷い言いようね。特にフウジは。


「何言ってるの?私は、貰ったお金を収納袋に入れて、それをサラさんにあげたじゃない。見てなかったの?」


「「「はあぁぁぁ!?」」」


「『何言ってるの?』じゃねぇよ!何やってんだよ!」


「え、別に良いじゃない。私が貰ったお金なんだから。」


 自分のお金をどう使おうが自由だものね。まあ、収納袋渡した後にお金を入れっぱなしだった事に気付いたってのは内緒だけど。


「…絶対後で怒られるぞ。」


「さすがにそれはしんじらんない。ソラちゃん何考えてんの?」


「まさか、お金が入ってる事忘れててそのまま渡したとかじゃないよね?」


「…いやいや。そんな事あるわけない、よ?」


 フウジは鋭いわね。だけど恥ずかしいから絶対に言えないわ。


「はぁ、マジかよ。ちょっと抜けすぎじゃねぇか?」


「…ソラちゃん。」


 何でフウジの言ったことが正しい前提で話してくるの?違うって言ったのに。


「サラさんにこっそりあげたかっただけだよ?サプライズ的な?」


「いや、さすがに顔見れば分かるぞ?鏡見てみろよ。」


「「「「…………。」」」」


 もう、これはダメみたいね。


「サラさんにお金あげたかったの!そういう事にしといて!」


「…ちょっと返してもらいに行こうか。今ならちょっと笑われるくらいで済むと思うよ?」


 フウジがなんか諭してくる。そんなの要らないから。


「…嫌だ。はい、この話は終わり!早く報酬分けましょう!」


「…ソラが良いなら、もうそれで良いよ。でも、後で怒られるの覚悟しといたが良いぞ。」


 サラさんに笑われるくないなら、ちょっと怒られるくらいの方がマシだもんね。それにもしかしたら喜んでくれるかもしれない。…ないと思うけど。


 そしてその後、報酬を分け、取り分を受け取った。幸い今日の報酬は多いからこれだけあれば数日は困らないものね。


「ねぇ、ソラちゃん。私、ヴィオラさんって人に会ってみたい。もちろんソラちゃんが嫌じゃなければだけど。」


「うん、良いよ。私もそろそろ会いたいなぁって思ってたんだ。」


 レインちゃんが師匠に会いたいって言ってきた。私も今日師匠の話が出てきて、とっても会いたくなったのよね。もう2ヶ月くらい会ってないから。


「マジかよ!元Sランク冒険者に会えるのか⁉︎俺も行きたい。」


「良いね。みんなで行こう。後、クライに一応言っておくけど、ギルドマスターも元Sランク冒険者だからね?」


「分かってるよ、そんな事。それはそれってやつだよ。まだ会ったことのない元Sランク冒険者に会えるなんて楽しみじゃねぇか!」


 師匠はみんなに人気なのね。そんな人に育てて貰えたんだから私は幸せ者ね。


「じゃあ、もう明日から行こうよ!」


「そうだな。ついでに護衛依頼でも受けて行こうぜ。ヴィオラさんはどの辺に住んでんだ?」


「西都の先の山奥に住んでるよ。」


 私達はAランクパーティーになったから、商人などのの護衛依頼を単独で受けれれるようになった。


 護衛依頼は魔物だけではなく、盗賊などに襲われることもあり、かなり危険を伴うものだから、Bランクパーティー2組以上かAランク以上のパーティーしか受注することができないようになっている。


 師匠と私が住んでいた場所に近い、西都までの護衛依頼が有れば良いけど。


「じゃあ、明日朝早くギルドに来て探してみようよ!」


「そうだな。じゃあ明日の朝で宿を引き払って、ギルドが開く時間に集合な。ちょうど良く依頼がなくても別に適当な馬車に乗せてもらえれば大丈夫だろ。」


 そうして、私達は明日から師匠の元に向かう事になった。けど…。


「あ、どうしよう。私、大切な事忘れてたよ。」


 レインちゃんが急に思い詰めたような顔になって言い出した。何か大切な用事でもあったのかな?


「どうしたの?やっぱり辞めとく?」


 私は気になって聞いてみた。


「ううん。行くけど…。明日からソラちゃんと同じ部屋で寝泊まり出来るはずだったのに、それが無くなっちゃう…。」


 あ、確かにそんな話になってたわね。私とレインちゃんが同じ部屋に泊まって代金は私が出すって。


「野営も似たようなもんだろ。同じ場所で寝るんだから。」


「全然違うよ!確かにテントで2人きりも良いけど、宿とは全然違うから!…あれ、でもテントでソラちゃんと2人きりって意外と良いかも。いや、全然有り。むしろ…。明日から楽しみだね!」


「…そうだね。」


 レインちゃんの顔の変わりようは面白かったけど、何が全然有りなんだろうか。まあ、問題無いならいっか。




 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



「ちょっとそこのヒラヒラのスカート履いたお嬢さん。こっちに来てくれるかしら?」


 翌朝、ギルドに入るなりサラさんが手招きしてきた。近くにスカート履いている人が居ないか確認してみたけど、誰も居なかったので私はサラさんの所に向かった。


「じゃあ、俺たちは良い依頼が無いか見てくるから。頑張れよー。」


 クライ達はそのまま依頼ボードまで早足で離れて行った。そんなに急がなくても別に引き止めたりしないのに。


「どうしたんですか?」


 私は何で呼ばれたのか分からない風にしてみる事にした。


 どんっ!


「こんな大金、私にどうしろって言うのかしら?」


 サラさんは収納袋からお金を取り出して、私の前に置いた。


「…好きに使えば良いんじゃないですか?」


「な…。ふざけた事言わないでよ。こんな大金貰えるわけ無いじゃない!」


「でも昨日、『貰って良いの?貰っちゃうわよ?』って言ってましたよね?」


 私は昨日帰った後、どうやったらこのままサラさんにお金をあげたままに出来るか考えたんだよ。


「確かに言ったけど、それは収納袋の事よ!」


「でも、お金が入ってる収納袋を持った状態で言ってましたよ?」


「…ソラちゃん、あのねぇ。あんまり大人をからかうものじゃないわよ?」


「え?今、呼び方…!」


 今までサラさんは「ソラさん」って他人行儀な呼び方だったのに、今「ソラちゃん」って!


「え?ああ、嫌だったかしら?あなたも別に私にいつまでも敬語使わなくて良いわよ。冒険者なんだから。」


「ううん。嬉しい。これからもそう呼んでね!」


「ええ。分かったわ。そんなことより…。」


「ソラちゃーん!良い依頼があったよー!」


 レインちゃんがちょうど良い依頼を見つけたみたいで呼んできた。


「呼ばれたから行ってくるね!」


「ちょっと待ちなさい!まだ話の途中よ!」


 サラさんにそう言われたけど、私はにっこりと微笑んで、そのままレインちゃんの所に向かった。




 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「この依頼を受けたいんだが。」


「ええ、分かったわ。でもその前の話をしましょうか、ソラちゃん。」


 依頼を決めた私達はサラさんの所に来た。さっきは逃げれたと思ったけど、依頼を受ける以上もう一度サラさんの所に来るのは当たり前よね。こういう時はあれね。前にレインちゃんがやっていたやつ。


「ちょっとお腹が痛くなってきたのでトイレに行ってきても良いかな?」


 私が居ない間にクライが依頼の受注処理を終わらせて、私が戻ってきたらそのまま依頼主の所に向かう。完璧ね!


「…早く行ってきなさい。待っといであげるから。」


 よし!これでちょっと長くトイレに入っていれば大丈夫ね。


「ソラちゃん大丈夫?私もついて行こうか?」


「「………。」」


 レインちゃんが心配そうな顔で私を見てくる…。そんな顔で見られたら…。


「…ごめんなさい。嘘です。」


「何でそんな事言うの⁉︎心配したじゃん!」


「レインちゃん、あなたこの前私に同じ事やったわよね?」


「…あ。ごめんソラちゃん…。」


 心配してくれたのに、そんな申し訳なさそうな顔されたら私が悪いみたいじゃない。…私が悪いんだけど。


「ううん。私の方こそごめんね。」


 場にどうしようもない沈黙が流れてしまった。でも、これでお金のことは忘れてくれたり…。


「もう良いかしら?私はあなたに収納袋を貰ったのにこんな大金までもらえるわけ無いでしょ?」


「じゃあ、どうやったら受け取ってくれるの?」


「はぁ、お金は正当な対価があって払えるものよ?でも私にはそんな対価として出せるもの無いわ。」


「対価なら貰ったって。」


「だからそれは何の事なのよ!」


「それは言えないけど…。恥ずかしいし。じゃあ、私達がこの依頼を終えて戻ってくるまでに、思い出しておいて!思い出せなかったら、そのお金は全部貰ってもらうから。」


 これで、どっちに転んでもお金は受け取って貰えるね。もし、思いだして貰えたのなら、正当な対価だって渡せば良いし。


「どっちにしろ、私が貰う事になるじゃない。もう、いいわ。なんとか思い出してお釣りを払う事にするわ。…思い出せなくても、ちゃんと教えなさいよ。」


「うん。」


 なんとか作戦成功ね。思い出してくれても、お釣りなんて絶対に発生しないけどね!



 こうして何とか、お金が入ったままうっかり渡しちゃったのを気付かれずにすることができた。依頼も無事受注処理をしてもらい、私達は依頼主の待つところまで向かった。




 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




 私達は依頼主に指定されていた場所『ステラ商会』までやって来た。そして、入り口で冒険者ギルドから依頼を受けてやって来た事を伝えると、奥に通された。


「『ステラ商会』の商会主、ラデスと申します。この度は依頼受注ありがとうございます。」


「冒険者パーティー『夕暮れの女神』のクライです。そして、こちらからフウジ、レイン、ソラです。よろしくお願いします。」


 商会主は30代くらいの男の人で商人にしてはしっかりとした体つきの人だった。


「では早速なんですが、今回は西都まで届け物ついでに、西都で数日露店を開きその後王都に戻るまでの護衛をお願いしたいと思っています。西都での滞在期間は2〜3日と考えていますが、その間は自由にしていただいて構いません。こちらの準備はすぐ出来ますので1時間後に出発でも問題無いでしょうか?」


「はい、大丈夫です。」


 依頼主が、依頼書に書かれていた内容を確認の為に話してくれた。いつ依頼が受注されても大丈夫なようにある程度の準備は出来ているようで、1時間後に出発する事になった。


 そして、私達は商会の商品を見て時間を過ごした。珍しい商品も多く、レインちゃんは何やら買い込んでいるようね。


「では、準備が終わりましたので出発しますね。よろしくお願いします。」


「「「「はい。」」」」


 準備は40分ほどで終わり商会主と共に出発する事になった。


「あ、じゃあ出発前に強化魔法掛けちゃいますね。」


「強化魔法?それは私に掛けるんですか?」


「はい。収納袋を持っているようなので、もし盗賊が出ても狙われて怪我をしないように。」


「…ええ。分かりました。よろしくお願いします。」


 商会主には少し怪訝そうな顔をされたけど、私は気にせず強化魔法を掛けた。まあ、自分が襲われる前に盗賊を撃退しろよって事かもしれないけど、用心するには越した事がないものね。


「はい、これで大丈夫ですよ。これで襲われたってそう簡単には怪我しませんし、馬車も壊れません。盗賊や魔物が出ても気にせず進んじゃって大丈夫ですよ。」


「…そうですか。ありがとうございます。」


 あ、これはあんまり信用されて無いな。私は商会主と馬に防御力強化の魔法を掛け、馬車に硬質化の強化魔法を掛けた。攻撃強化を掛けない分防御力はかなり上がっている。


 そして私達は荷台に乗り込み出発した。荷台には軽くて嵩張る商品が積まれていたが、私達が乗るには十分なスペースがあった。



 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



「あー暇。まだ着かないの?」


 レインちゃんが早くもダレ始めてきた。そういう私もやる事がなくて暇してきた。


「まだ1時間も経ってないよ。西都まで1日半くらいかかるんだからね。」


 そうは言われても暇なものは暇なんだよね。そうだ!


「ならレインちゃん、お昼ごはんまでちょっと寝ようよ。」


「うん、そうだね!やる事無いもんね。」


「じゃあ私達にスリープの魔法かけるね。3時間で起きるように調整して…。『スリープ』!」


「ちょっ、待…。」


 私はお昼ごはんに起きれるように時間を調整してスリープの魔法を掛けた。ご飯は大事だからね。





読んでくださりありがとうございます。

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