ヴィオラの魔法の袋
「俺からの用件は2つある。」
サラさんとの話が終わりギルドマスターが喋り出した。ギルドマスターは元Sランク冒険者だったらしく、鍛え抜かれて肉体が相まってかなりの貫禄だ。
私たちは、緊張しつつギルドマスターの言葉を待った。
「先ずはソラ、お前さんのランクについてだ。」
「え?…私?」
確かにさっきランクアップしたけど、新人のランクなんかをギルドマスターが気にするのかしら?
「ああ。Sランクの双頭亀を複数討伐したそうじゃないか。そうなるとランクアップさせねばならんのだ。して、今のランクは何なんだ?」
あー。確かに倒したけど、あれでランクアップするんだ。と言うか私のランクすら把握できていない段階で呼び出したんだ。まあ、ギルドマスターは忙しいから討伐したって情報だけ来たのかな。
「Dランクです。」
「…は?」
あれ?今ランクを聞かれたのよね?何か間違えたのかな?
「おい、サラ。双頭亀を討伐したのはこの子で合ってるんだよな?」
「ええ。間違いありません。私が対応しましたから。」
「…Dランクなのか?」
「Dランクですね。」
「……そうか。」
なんかすみません。Dランクで。私、冒険者になりたての新人なんですよ?
「双頭亀複数討伐と聞いたもんだから、もっと上のランクだと思っていたぞ。道理で聞いたことのない名前だと思ったんだよ。」
「…あはは。」
ギルドマスターは私のランクを把握できていないとか以前に、そもそも高ランクの冒険者としか関わらないってことだったのね。
「すると、ちょっと困ったな。Bランク以上ならSランクにしても良かったが、DランクからいきなりSランクとなるとな…。経験不足のままSランクは厳しいか。Dランクになってどのくらい経つんだ?結構長いのか?」
「今日Dランクに上がりました。」
「…は?」
なんかデジャブね。そしてギルドマスターはまたサラさんのほうを見た。
「ついさっきDランクにランクアップしましたよ。」
「さっきだと⁉︎ならEランクの新人がSランクの双頭亀を複数討伐しったって言うのか?」
「そうですね。」
「…どうしたらいい?」
「それはギルドマスターが決めることです。」
なんか私のせいで空気が重くなっていて嫌だな。ランクなんて別になんだって良いのに。
そしてギルドマスターは少し悩んだ末、答えを出した。
「B…。いや、Aランクにする。それだけの実力があってBランクに留めておくのは勿体無い。本来ならSランクにしたいが経験不足だろうという観点からAランクってとこが妥当だな。」
「…Aランクですか。」
「なんだ?不服か?」
「いえ。ちょっとびっくりしただけです。」
いきなりAランクになるなんて。Aランクって高ランクのイメージだったけど、そうでもないのかな。
「すごいね!ソラちゃん。私なんてまだCランクなのに。」
「本当にな。俺たちの中で1番高ランクになっちまいやがったな。」
「まあソラはそれくらいの実力は十分あるからね。」
みんな私以上に喜んでくれている。みんなが喜んでくれるのは嬉しいものね。
「あら、あなた達も他人事じゃ無いわよ。リーダーのソラさんがAランクってことは、パーティーランクもAランクになるってことよ。」
「「「あ!」」」
「俺たちもついにAランクパーティーか!」
「そうよ。おめでとう。…あ!そうだわ。ちょっと待ってて。」
そう言ってサラさんは部屋から出て行った後直ぐに戻ってきた。何かあったのかしら。
「ギルドマスター、これはこの子達の今日の討伐報酬、魔狼41匹分です。1日でこれだけの数を狩れるのでかなり実力が上がってきていると思います。これを踏まえて、この3人のランクを1つ上げるのはどうでしょうか?」
そう言いながらサラさんは私たちに報酬を渡してきた。
「1日で41匹か。なかなかやるな。…いいだろう。では、お前たち3人もギルドランクを1つずつ上げることにしよう。」
「おおー!!本当ですか⁉︎ギルドマスター、サラさんありがとうございます。
俺もついにAランク冒険者だぜ。」
クライは2人に深々と頭を下げ、お礼を言っている。相当嬉しかったようね。…私もあれくらいやった方が良かったのかな?フウジとレインちゃんもかなり喜んでおり嬉しそうだ。
3人の興奮が収まった頃を見計らって、ギルドマスターが次の話をし始めた。
「では、2つ目の用件の話をしよう。…と言ってもさっきの続きみたいなものだが。」
そう言ってギルドマスターは席を立ち奥の机の上にあった大きな袋を持ってきた。
どんっ!
「今回の双頭亀素材買い取り報酬…白金貨2枚大金貨26枚金貨64枚だ。」
「「「「…え?」」」」
「…は、白金貨⁉︎」
「あら、レインちゃんは白金貨知らないの?金貨1万枚分よ。」
「そのくらい知ってるよ!…知ってるけど、実際に見るのは初めてで。」
レインちゃんの反応に、サラさんがわざとらしく答えた。私も、白金貨を見るのは久しぶりでびっくりした。だけど…。
「報酬ならこの前たくさん貰いましたよ?」
「この前渡したのは討伐報酬。今回のは素材買い取り報酬よ。ちゃんと聞いてなかったのかしら?」
「え…。」
確かに報酬もらった時に何か言ってた気がするけど。…報酬の大金にびっくりして、ちゃんと聞いてなかったかもしれない。
「でも、多くないですか?私、結構素材ぐちゃぐちゃにしてましたよ?」
自分で言うのもなんだけど、あくまで魔法の実験の的にしてたから、酷いものだと思うけど。
「状態が悪すぎてほとんど買い取れる部分が無いのもあったが、甲羅が無傷の物もあったからな。それはとても貴重な素材であり価値がある。これは正当な報酬だ。受け取っておけ。」
「…はい。ありがとうございます。」
私は報酬を受け取ったけど、正直何に使えば良いのか分からない。毎日美味しいものを食べ続けても簡単にはなくならないだろうし。もう、いっそのことレインちゃんに全部あげて美味しいもの作ってもらおうかな。
私がお金の使い道を考えていたら、それを察したのかギルドマスターが聞いてきた。
「使い道に困っているのか?」
「はい。どうしよっかなーと。」
「冒険者が大金を手にしたら、収納袋を買うのが無難だな。白金貨2枚有れば、200キロは入る収納袋が手に入る。」
「…え?たった200キロ?」
白金貨2枚もあるのにたった200キロ?少なすぎない?そんなのあんまり役に立たないじゃない。
「ギルドマスター、彼女たちはすでに収納袋を持っています。それも先ほど言ったように、魔狼41匹が入るほどの大容量のものを。」
「…⁉︎ 1つの収納袋に40匹以上入れていたのか?まさか、あの袋なのか?」
「ええ。あの袋かどうかは分かりませんがかなり大容量ですね。私が冒険者の私物について詳しく尋ねることは出来ないので、確認は出来ていません。」
魔狼41匹だと1000キロは超えるものね。それにしても〝あの袋〟って何かしら?
「その収納袋を持っているのは誰なんだ?」
「あ、魔狼を入れていたのは俺のやつです。」
クライが答える。私たち全員収納袋持ってるけどね。
「それは『ヴィオラの魔法の袋』なのか?」
…え?どういうこと?
「なんですか?それは。」
「知らないのか?世界で一番有名な収納袋のブランド名だぞ。元Sランク冒険者、ヴィオラだけが作れると言えわれている1000キロ以上の大容量収納袋のことだ。その価値は最低でも白金貨20枚、出回ればどれだけでも金を積む奴も出てくる。」
ちょっと待って。それって…。
「違いますよ。これはソラに貰ったやつなので。」
「貰った⁉︎収納袋をか?…ちょっと見せてもらっていいか?『ヴィオラの魔法の袋』なら赤の魔法文字でVILと書かれているはずだ。」
クライは収納袋を渡そうとしているけど、私はそれを遮ってギルドマスターに言った。
「あの!『ヴィオラの魔法の袋』ってこれのことですよね。」
「そうそう、こんな感じに魔法文字で…。はあぁ!?本物じゃねぇか!どこで手に入れたんだ?」
私が身に付けている3つの収納袋の内、2つは私の手作りだけど1つは違う。私はその袋を手に取り、赤の魔法文字が見えるようにして、ギルドマスターに突き出した。
「…師匠に貰いました。」
「な⁉︎お前の師匠は何者なんだ?引退した高ランク冒険者かなんかか?」
「…本人です。」
「…は?」
「だから、私の師匠の名前はヴィオラ。元Sランク冒険者です。」
「はああああぁ!?」
やっぱり師匠って有名だったのね。Sランク冒険者だったんだから当然か。
「本当なのか?…って、ま、まさかお前、あの事件の。その赤い髪!クラウドの町の生き残りか⁉︎」
「…はい。そこまでご存知だったんですね?」
私が小さい頃、私の生まれた町は魔族に襲撃された。そして、私以外の人はみんな殺された。もちろん両親も。私も重傷で、死を待つばかりだったんだけど、ぎりぎりのところで師匠が駆けつけてくれて、回復魔法で一命を取り留めた。
「…ああ。俺がまだ冒険者だった頃、ヴィオラが赤い髪の少女を連れてきて、冒険者を引退するって言ったのは今でも覚えている。知ってるか?彼女はこのギルドの出身だったんだぞ。」
「ええ、もちろん。だから私はこのギルドに来たんです。」
「…そうか。ヴィオラは襲撃してきた魔族は殺せたが、1人しか助けられなかったことを後悔していた。…ヴィオラは元気にしているか?」
「はい!元気にしてますよ。師匠は師匠でもありますけど、私の大好きなお母さんでもあるんです。ちゃんと私を幸せにしてくれました。」
いつもは師匠としか呼ばないけど、私にとっては1番大切な家族。思い出したら会いたくなってきたな。
「…ありがとう。」
「え?あ、はい。どういたしまして?」
師匠とギルドマスターはSランク冒険者同士仲が良かったのかしらね?まさかお礼を言われるなんてびっくりしたわ。私は助けて貰った立場でお礼を言われるような事なんて何もしていないのに。
ギルドマスターはその後少しの間黙り込み、下を向いていた。ギルドマスターが黙ってしまうと、誰も声を出せずに場が静まり返った。
「すまない、話の途中だったな。するとお前が持っているのも『ヴィオラの魔法の袋』なんだな?」
ギルドマスターはさっきとは違い、かなり落ち着いた声で話してきた。
「いえ、これは…」
「これは『ソラちゃんの魔法の袋』です!!」
クライが喋ろうとするのを遮って、レインちゃんが自分の収納袋を差し出しながらそう言った。なんか勝手に命名されてて恥ずかしいんだけど。
「は?他にも収納袋を持っていたのか。それもソラに貰ったものなのか?」
「俺も持っていますよ。確かにソラに貰いましたけど、そういう意味ではないです。ソラが作ってくれた収納袋です。」
フウジも収納袋を出し、どこにも赤の魔法文字がないことを確認させるようにギルドマスターに見せる。
「何⁉︎それは本当かソラ!」
「はい、私が作ったものをみんなにあげました。」
そういえば私が作ったことはパーティーメンバー以外には言ってなかったな。そもそも、そんなに高価なものだとはさっきまで知らなかったし。
「だから、あんなに簡単にプレゼントしていたのね。自分で作れるなら価値なんて関係ないものね。」
サラさんには、私がみんなに収納袋をあげた後に『これ以上他の人にほいほいプレゼントしちゃダメよ』と言われていたけれど、価値がある物だからって意味だったのね。
「すると、ヴィオラと同じようにソラも収納袋が作成できて、それは『ソラちゃんの魔法の袋』という名前ということだな。」
「ちょっと、それは違…」
「はい!そうです!!」
またしてもレインちゃんが割り込んできた。
「では、『ソラちゃんの魔法の袋』というブランド名で全ギルドに通達して構わないか?広めたくないのだったら、このまま秘密にしておいても構わないが。」
「いや、さすがにその名…」
「おっけーです!ソラちゃんの名前を全世界に広めてください!!」
そしてまたレインちゃんに遮られる。
「レインちゃん、勝手に進めないでよ。」
「え?でも『ソラちゃんの魔法の袋』って名前すごく良いと思うよ?」
「俺も良いと思うぞ。かわいいじゃないか。」
「うん。ソラにぴったりだと思うよ。」
なぜかみんなに賛成されるけどさすがにちゃん付けは恥ずかしいよ。魔法の袋って部分は師匠と同じだから、すごく良いと思うけど。
「でも、さすがに…。ちゃん付けは外したいかな。」
今はまだぎりぎり良いかもしれないけど、歳を重ねたら絶対恥ずかしくなるやつだと思うのよね。
「あら、良いじゃない。『ソラちゃんの魔法の袋』私もかわいいと思うわよ?」
「…サラさんがそう言うなら、それで良いです。」
「ちょっと待ってよ!なんで私が言ったら拒否したのにサラさんなら良いの⁉︎」
「私の方がレインちゃんより好かれてるってことよ。そんなことも分からないのかしら?」
「ぐぬぬ…。」
サラさんがわざとらしく煽ったことで、レインちゃんが今にも飛びかかりそうだ。さすがにギルドマスターの前でそんな事はしないだろうけど。
「ソラちゃん!私よりサラさんの方が好きなの?サラさんがかなーり年上だから気を使ってるだけだよね?」
「うーん。秘密。」
「な…!」
「ちょっとレインちゃん!かなーり年上ってどうゆうことかしら?喧嘩売ってるの?」
サラさんがちょっと怖い顔になって、レインちゃんの両頬を摘み出した。
「じじつれすー!!」
「あら、良い度胸してるじゃない!」
そしてサラさんはレインちゃんの頬っぺたをぐりぐり動かし出した。
「…そろそろ辞めないか。少し見苦しいぞ。」
さすがギルドマスター。もうこの場であれを止められるのはあなただけです。
「あっ!すみません。居るの忘れてました。」
「なっ…。 …そうか。」
え?ギルドマスターって意外と打たれ弱いの?ちょっと、それで大丈夫なの?
サラさんは口ではそう言いつつもギルドマスターに従い、おとなしく座った。
「もういいか?そろそろ話を進めるぞ。
まずブランド名だが、『ソラちゃんの魔法の袋』で良いんだな?」
「はい。大丈夫です。」
サラさんがかわいいって言うなら、もうこの名前で良いもんね。
「なら、収納袋に書く魔法文字を決めてもらえないか?ヴィオラと同じようにするのが無難だからな。」
「はい。」
師匠と同じように、魔法文字を書くってことね。どんな文字にしようかな。
「じゃあ早速、俺のに書いてくれよ!」
「パーティーで使っているのにも書いておいた方が、良い宣伝効果になるな。ソラ、書く文字は決まったか?」
「ええ、決めました。」
私はそう返事をし、クライの収納袋を受け取ろうとした。
「だめぇぇぇぇぇ!!!」
しかし、レインちゃんがそれを遮り、間に入ってきた。
「1番は私のに書いてもらうの!絶対!!」
「別に何番でも良いが、最初に貰ったのは俺なんだから、俺のからで良いんじゃないか?」
「これは譲れないよ!だってソラちゃんの最初のサインだよ?最初は1度しか無いんだよ!」
「あ、ああ…。なら俺のは次で良いよ。」
「やった!ありがとクライ。ソラちゃん、よろしくお願いします!」
レインちゃんはたまに我がままだなぁ。私はちょっとだけそう思いながらレインちゃんの収納袋を受け取った。
師匠は赤の魔法文字でVILだったから、私はSOL。もちろん色は赤!色だけは迷う事なく絶対この色ね。
私が魔法文字で書いている間、レインちゃんはまじまじと見つめてくる。
「その後に、No. 1って書いて!」
「え?うん。」
私はレインちゃんに言われるがまま、No.1と追加で記入した。
「はい、出来たよ。」
「やった!ありがとソラちゃん!一生大事にするね。」
文字を書いただけなのにこんなに喜んでもらえるなんて、なんだか嬉しいな。
「じゃあ、俺のも頼むよ。」
「ちょっと待ってクライ。俺のを先に書いて貰いたいな。」
クライの収納袋を受け取ろうとすると、今度はフウジが遮ってきた。なんなのもう。フウジはそんなキャラじゃないじゃない。
「なんだよフウジまで。」
「順番なんてどうでもいいと思ってたけど、No.が振られるなら話は別だよ。」
「まあ、別に良いけどよ。2番でも3番でも。」
「ありがとうクライ。恩に着るよ。よろしくソラ。」
どうしちゃったんだろうフウジは。まあ、私はどっちからでも別に問題ないけど。
そして私はフウジの収納袋にNo.2、クライのにNo.3と書いた。
「よし、書き終わったな。これからは1000キロ以上の容量の収納袋袋を作成したら、必ずその文字を書くようにしてくれ。そして、それを売る場合は最低でも白金貨20枚以上で売るようにしてくれ。」
ギルドマスターは今後の対応について話してくれた。けど白金貨20枚は高すぎると思うのだけど。誰も買えないんじゃないかな。
「ちょっと高すぎると思うですけど。私は別にもっと安くても…。」
「だめだ。ヴィオラの時も白金貨20枚だったが、買う奴は買う。あと、売る時は利益目的の転売を禁止してくれ。買ったやつがもう使わないからと、オークションに出すのは構わないが、最初から転売を考えてそうな奴には絶対売るな。」
「は、はあ…。」
ちょっと大げさすぎないかしら?転売したからと言って私が売ってるのだから、私のところに買いに来れば良いじゃない。
「一応言っておくが、ヴィオラから白金貨20枚で買ったものを、別の場所で白金貨40枚で売った商人がいたからな。まあ、そいつはそのことを言いふらしているバカだったから、俺たちSランク冒険者5人がかりで締めに行ったがな。」
「え…。」
本当にそんな人がいたのね。それにSランク冒険者5人に締められるなんて、想像しただけで恐ろしいわ。
「あと、ヴィオラが冒険者を引退した後オークションに出されたことが1度だけあったが、その時は白金貨80枚以上に吊り上がった。ヴィオラが売りに出した収納袋が10個にも満たないのが、そこまで吊り上がった原因なんだがな。」
「………。」
「とりあえず『ヴィオラの魔法の袋』を入手できなかった者たちが押し寄せてくる可能性が十分あるから注意しておけよ。」
「…分かりました。気をつけます。」
恐ろしいわね。師匠はSランクで有名だったのがでかいのだろうけど、そこまでなるなんて。
「で、早速で悪いんだが、俺に売ってくれないか?値段はお前の言い値で出す。」
「え?じゃあ白金貨20枚で。」
「良いのか?お前が最初に白金貨40枚と言えば40枚になるんだぞ?さっきも言ったがそれでも買う奴は買うからな。」
私はそんなに貰っても使い道ないもの。それに師匠が20枚で売ったのなら、私がそれ以上の値段で売るわけにはいかないわ。
「はい。構いません。」
「分かった。ちなみに、今すぐ売れる収納袋はあるのか?」
「私が普段身につけているもので良ければ、すぐお渡しできますよ?」
魔物用の袋があるけどたまにしか使わないものね。今は何も入ってないし。
「ああ。それで構わない。」
ギルドマスターはそう言い白金貨を20枚出してきた。ポンとそんな大金出せるなんてさすがギルドマスターね。
私は腰の収納袋を1つ取り、魔法文字を書いて渡した。
「…俺のにはNo.を振ってくれないのか?」
「え?書いたほうが良かったですか?」
ギルドマスターまでそんな事を言ってくるなんて。No.ってそんなに大事なのかな?
「あ、いや。別に構わないが…。」
ギルドマスターはあからさまに落ち込んだ表情を見せた。
「ギルドマスター、書いてもらっといた方が良いですよ。後からまた落ち込む事になりますよ?」
ギルドマスターを見てサラさんがそう言ってきた。さすがに大げさなんじゃないかな。ギルドマスターがそんな事で後からまた落ち込むなんて…。
「…頼む。」
ギルドマスターはそう一言いい、収納袋をもう一度渡してきた。本気でNo.が欲しかったのかしら?まさかね。
「分かりました。」
そして私はその袋にNo.4と書いて渡した。
「ありがとう。感謝する。」
「いえ、こちらこそ買っていただきありがとうございます。」
ギルドマスターがそんなにお礼を言ってくるなんて、そんなに収納袋が欲しかったのかな?
「いーなー。みんな『ソラちゃんの魔法の袋』持ってて。私もお金さえあれば絶対買うのに。」
あ、サラさんも欲しかったんだ!
サラさんがそう言ってきたので私は財布として使っている収納袋に魔法文字で書いて渡した。
「使ってください!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。確かに欲しいって言ったけど、私そんな大金持ってないわよ⁉︎」
サラさんからお金なんて取らないのに。
「お代ならもう貰いましたよ?」
「あげてないわよ!そもそも出せないわよ!」
「いえ、ちゃんと貰いましたよ。お願いします、使ってください。」
「どう言うことよ?…本当に貰って良いの?貰っちゃうわよ?」
「はい!」
お代ならずっと前に貰いましたから。お金なんかじゃなくてもっと良いものを。
「ちょっと待って、ソラちゃん!サラさんにあげた袋、No.0ってどういうこと⁉︎なんでNo.1より前があるの?ずるいよ!」
「…ひみつ。それにレインちゃんがNo.1って書いてって言ったじゃない。」
「…言ったけど。言ったけどさあ。」
「レインちゃん諦めなさい。そういう事よ。」
「…な!!ぐぬぬぅ!」
サラさんはまたレインちゃんを煽って楽しそうにしている。そういう事ってどういう事なのかな?
ギルドマスターは私から買った袋ともう一つの袋を机に並べていた。ちょっと覗いてみると赤の魔法文字のVの文字が見えた。ギルドマスターは師匠の収納袋も持っていたのね。
そして、ギルドマスターは2つの収納袋を手に取ると優しい顔で小さく微笑みを浮かべた。
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