ギルド担当受付嬢 サラ 3
「パーティーもDなんですか?私、クライはもっと上のランクだと思ってましたけど。」
私がソラさんにパーティーランクが上がったことを伝えると、彼女はおかしなことを言ってきた。冒険者登録の時に資料を読んでもらったから、パーティーランクはリーダーランクと同じになることは知っているはずなんだけれど。ちゃんと読んでなかったのかしら?
そう思っていたら、後ろの3人が何やら目を逸らしている。…まさかね?
私はかなり不安になり、パーティー登録用紙を書いたレインちゃんを呼んだ。
するとレインちゃんは怪しい動きをして逃げようとしている。私は「逃さないわよ。」と目で訴え、レインちゃんを捕まえた。
「レインちゃん。どういうことかしら?」
「えぇっと。何のことでしょうか?」
レインちゃんはこの後に及んでしらばっくれようとした。私はレインちゃんの両頬をつまみ、もう一度尋ねた。
「どういうことかしら!」
「痛ぁいれす、サラふぁん。」
なかなか白状しないわね。
「…おい、サラ。お前は何をやっているんだ。」
私がレインちゃんの頬っぺたを堪能していると、後ろから声が聞こえた。
「あっ!ギルドマスター、お疲れ様です。ちょっとレインちゃんの頬っぺたを揉んでただけですよー。」
「…そうか。終わったら、『夕暮れの女神』のメンバーをギルド長室まで連れてきてくれ。」
「はい。わかりましたー。」
私はレインちゃんの頬っぺたで遊ぶのを一旦止め、メンバー4人を連れてギルド長室に向かった。
トントン。
「失礼します。『夕暮れの女神』のメンバー連れてきました。」
「早いな。もう大丈夫なのか?」
「いえ、もうギルドマスターがいるところで話したほうが、手っ取り早いと思いまして。」
「そうか。なら掛けてくれ。」
私が聞いてもしらばっくれるなら、こっち方が早いと思いそのまま連れてきた。さすがにギルドマスターの前では嘘が付けないだろう。そして私はギルドマスターの隣に、4人はテーブルを挟んだ向かい側に座った。
「サラ、俺の話は後で良いから、先にお前の用件を済ませてくれ。」
「ありがとうございます。」
私はお言葉に甘えて先にさっきの続きを開始した。
「では。まずソラさん、あなたは『夕暮れの女神』のパーティーリーダーは誰だと思っているの?
「え?クライですよね?」
はぁ、やっぱりそう思っていたのね。
「クライさん、これはどういうことですか?」
さっきはレインちゃんに聞いてダメだったので今度はクライさんに聞いてみた。
「…それは。そのー。」
「はっきり言いなさい。」
私が少し強めに言うと観念したようで喋り出した。
「パーティーリーダーを決める時に、1番強い人がリーダーをやるってのに決まって…。」
「その時にソラさんがやるとは明言せずに、そのまま書いて提出した。ということかしら?」
「…ああ。」
確かにこれなら、ソラさんの了承を得てないとも言えなくは無い。だけどそれは、ソラさん自身が4人の中で1番強いと認識していた場合。そして、どこで知ったのかは知らないけど、他の3人はソラさんが強いことを知っていた。ということね。
「あなたたちねぇ、いくらソラさんが強くても新しくパーティーに加入する女の子をいきなりリーダーにする?」
「「すみません。」」
「ごめんなさい。」
「って事なんだけどソラさんどうする?あなたがこのパーティーのリーダーなんだけど。」
「え…。どうするって言われても、私今までリーダーの仕事何にもやって無いですよ?」
あぁ。確かに全部クライさんがやってたわね。
「クライさんはどう思ってるの?」
「俺はこのままソラにリーダーやってほしい。今の俺たちがあるのはソラのおかげだしな。」
「私もソラちゃんがリーダーが良い!フウジもそうだよね。」
「うん。もちろん。」
ソラさんのおかげ?まあ彼女が加入したおかげで実力も収入もかなり上がっているようだから、そう言えないこともないわね。何か他にも理由がありそうだけれど。
「ソラさんはこのままリーダーでも良いの?」
「私はどちらでも良いですよ。全部クライがやってくれていましたし。これからもそうしてくれるなら。」
「ソラさんがいいなら構わないわ。でも、あなた達は今後大事なことを決めるときはちゃんとみんなで話し合うこと。良いわね?」
「「「はい。」」」
成人して収入があるとはいえ、まだまだこの子達は子供ね。
「ギルドマスター、お騒がせして申し訳ありませんでした。私の用件は終わりましたので。」
「…ああ。」
ここでようやくギルドマスターにバトンタッチだ。こんな事でギルドマスターの時間を使ってしまって少し申し訳ない気分だわ。…ほんの少しね。
さて、この子達は他に何をやらかしたのやら。
読んでくださりありがとうございます。




