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ギルド担当受付嬢 サラ 2

 

 夕方になり徐々に依頼を終えた冒険者が帰ってくる時間になってきた。


 そしてちょうど『夕暮れの女神』のメンバーも戻ってきて、彼らはそのまま私のところに歩いてきた。大きい荷物も無いしどうやら近場で済ませたようで安心した。でも、ソラさんのワンピースが一切汚れてない。1日薬草採取したら、裾の辺りが泥で汚れると思ってたのだけど。まあ、うまいことやったのよね。


「素材買い取り頼む。」


 クライさんが、いつものようにそう言ってきた。リーダーはソラさんにしても、今まで通りクライさんがリーダー役を続けるのかしら?それとも今日だけ?


「こちらへどうぞ。」


 私は気になりつつも、カウンター横の素材置き場に出すように言った。何も持っていないように見えるけど誰が持っているのかしら?


 そう思っているとクライさんは小さな袋から魔狼を何匹も取り出した。


「え?クライさん収納袋を手に入れてたんですか?」


 収納袋は高ランクの冒険者や商人には必須アイテムとなっているけど、かなり高価だ。


「ああ。ソラに貰ったんだ。」


「貰った⁉︎…って、そんな高価なものを?あげちゃって大丈夫なのソラさん?」


 私はソラさんの方を見て聞いてみるとある事に気が付いた。今朝は腰に3つの袋をぶら下げていたが、それが2つになっていたのだ。


「大丈夫ですよー。まだたくさん持ってるので。」


「たくさん⁉︎…そうなのね。」


 どうやらこの子はかなりのお金持ちのようね。売れば白金貨数枚になる物を、今日会ったばかりのパーティーメンバーにプレゼントするなんて。


「にしても、そんな格好で魔狼狩りに行ったの?私はてっきり、薬草でも取りに行くくらいだと思ってたんだけど。」


「ああ。俺たちもそのつもりだったんだが、ソラが強化魔法をかけてくれてな。魔狼の数匹くらい余裕で倒せるんじゃねぇかと思って、ついついちょっと奥まで進んじまったんだよ。」


 クライさんが出した魔狼は7匹。今まで彼らは多くても5匹ずつだったのを考えると凄いことね。


 話しているうちに解体士による査定も終わり私は報酬を渡した。いつもより多い額に喜んでいる。


 その後どうやら歓迎会をやるようで彼らはギルドを出て行った。なんか今日はいつもより疲れたわ。


 まだ今日の仕事は残っているけど、私はもう休みたい気分になった。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



 次の日の朝、『夕暮れの女神』のメンバーがギルドに集まっていた。見ると、ソラさんは昨日とは違い、シャツに膝まであるスカートだった。あの子にとって冒険は近所に遊びに行くのと同義なのかしら?


 すると、ソラさんはフウジさんとレインちゃんに何やら袋を渡していた。そして腰の袋は3個に戻っている。


「あの子、本当にたくさん持っているのね…。だからって、あんなにほいほいあげるんじゃないわよ。」


 私は思わず独り言を呟いてしまった。そして彼らが帰ってきたら、ソラさんにこれ以上袋を人にあげないように注意しないといけないな。と思うのであった。



 それからの彼らは、収納袋を手に入れた事で魔狼を狩る数がどんどん増えていった。20匹超える日もあり収入はこのギルドではトップクラスのパーティーとなっていた。まだEランクパーティーなのだけれども。




 そしてソラさんがこのギルドに来てから30日以上経過した頃、とんでもない事が起きた。



 時間は昼過ぎになりギルド内は閑散としていた。冒険者が少ない時間であり、私もたまにくる依頼者の対応をするくらいで暇をしていた。


 するとギルドに1人の少女が入ってきた。スカートを着てギルドに入ってくる少女。初めてみる人は、ギルドに依頼に来た人だと思うだろうけど、私を始め他の受付嬢でそう思う人はもういない。


「ソラさん、どうしたの?今日はあなたのパーティー休みだと思っていたのだけど。」


 この子のパーティーは4日に一回くらいの間隔で休んでいる。今朝は見かけなかったから、今日が休みなんだろう。私もそのくらい休みたいものだわ。


「魔法の練習をしてて、魔物を狩ったので買い取ってもらいたいんですけど。」


「ええ、なら素材置き場に出して頂戴。」


 すると彼女は1匹の魔物を取り出した。


 どしんっ!


「なにこれ?岩?…いやカメかしら?」


「カメですね。私も初めて見る魔物だったので名前はわかりませんけど。」


 私が最初にカメだと認識できなかったのには理由がある。甲羅の中央には大きな穴が空いており、そこから全方位に亀裂が走っている。手足や顔は引っ込めたまま死んだようで、ぱっと見岩かと思ってしまったのだ。


 すると奥から解体士がやってきて、素材を見始めた。


「なんじゃこりゃ!甲羅が割れちまってるじゃないか。それに中身も焼けちまってる。…これは!!」


 解体士は魔物を触りながら詳しく見ていくと、顔のある位置を見て驚愕した。


「こりゃまさか、双頭亀か?頭が2つあるぞ!」


「え?まさか…!!」


 私はその言葉に驚き同じようにそこを覗いてみた。


「…っ!」


「あの、状態がマシなのもいるので出しますよ?」


「「…は?」」


 私たちがいつまでも見ていたせいで、次が出せなかったようね。解体士がとりあえず奥に運んで行き、ソラさんが次の個体を出した。


 今度は全体が真っ黒に焦げているが、原型はしっかりと残っていた。頭もしっかり出しており2つある事が確認できる。


「全部で7匹あります。」


「「はあぁ!?」」


 今日はよくハモってしまう。もうびっくりしすぎて疲れたわ。


「双頭亀だな。」


「そうね。」


 私たちは、疑いようもなく双頭亀であることを理解した。


「とりあえず全部出してもらえるかしら?」


「はい。出しますね。」


 そう言うとソラさんは、奥に持っていかれるごとに双頭亀を出していった。その後の個体は、頭が切り刻まれていたり、甲羅の真ん中で綺麗に両断されていたりと、最初ほどではないけどかなりひどい事になっていた。


「もったいねぇな。こんなになっちまったら素材としての価値がかなり下がっちまう。まあ、それでもかなりの額になりそうだが。」


「あはは。いろんな魔法を試して実験していたので。」


 この子、もしかして物凄い魔道士なのかしら?それを知っていたから、クライさんたちはこの子をパーティーリーダーに?


 そう考えたが、今はこれの処理をするのが先ね。と思い資料をめくる。


「Aランク以上の魔物には、討伐報酬があるから渡すわね。…えーっと、双頭亀は。あったわ。1匹あたり金貨540枚ね。7匹だから金貨3780枚ね。」



 そう言って私はカウンターに大金貨37枚と金貨80枚を出した。


「…は?……え?」


 ああ。まあそうなるわよね。私だって、こんな大金出すの久しぶりだもの。


「これは討伐報酬だから、素材買い取り報酬はまた後日渡すわね。」


「………。」


「ソラさん?聞いてる?」


「え?あ。…大丈夫です。聞いてます。すごい額ですねー。こんなに貰っちゃって良いんですか?」


 これはあくまで討伐報酬だから、素材買い取り報酬はこれとは比べものにならないでしょうね。これでこれだけ驚いているのだから渡す時が楽しみね。


 にしても、こんな子が下位とはいえSランクの魔物を倒すなんて、信じられないわ。だいたい、このギルドでSランクを討伐した実績があるのは、もう何年も前の事よ。まさか、自分が担当する新人がSランクの魔物を討伐してくるなんて夢にも思わなかったわ。






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