ギルド担当受付嬢 サラ 1
私は冒険者ギルド王都支部の受付嬢サラ。ここで働くのはもう10年になる。
16歳で働き始めた頃は、ギルド看板美人受付嬢なんて呼ばれてた事もあったけど、なぜか最近は全く呼ばれなくなった。この10年で後輩は4人でき、年上の先輩はみんな退社か転属していった。今では、私が1番の古株受付嬢になってしまった。
そうなってくると毎日忙しくて、仕事以外の事をしてる時間がほとんどない。
ああ。若い頃に告白してくれた冒険者と付き合っとくべきだったかしらね。
そんな事を考えながら、今日も朝早くから準備をしていた。冒険者が来る前に依頼を整理して準備しておかなければならないものね。
今日もいつも通り準備が終わり席に着いた。そろそろ1番早い子が来始めても良い時間になったからだ。
すると予想通りに、ギルド入り口から入って来るものがいた。しかしそれは予想できない格好をした女の子だった。
赤い髪を肩下まで伸ばした綺麗な顔立ちの子。白いワンピースを着ていてそれがとても似合っている。依頼にでも来たのかしら。
そこまでは良い。
なぜか腰のベルトの右側に杖を刺し、左側には小さな袋を3つぶら下げている。そこだけ見るとまるで冒険者のようだ。あのワンピースには、かわいい肩掛けのカバンとかが合いそうなもんだけど。
そう思いつつ、ずっと見つめていると目があった。するとその子は、なぜかにっこりと微笑みを浮かべ、近づいて来た。他にも受付嬢は4人いるけど私の方に。そして私はいつも通り笑顔で対応した。
「どうかされましたか?依頼ですか?」
私は初めて見る子だったのでそう聞いた。するとその少女は小さく口を開き言ってきた。
「あの、冒険者登録をしたいのですが。」
10年受付嬢をやってきたベテランの私でもこんな格好で登録しに来る子は初めてで驚いた。まあ、登録だけならどんな格好でも問題ないものね。
「分かりました。ではこちらの用紙に必要事項を記入してください。」
そう言って私が登録用紙を渡すと少女はスラスラと書き始めた。
「できました。」
「はい。ありがとうございます。ソラさん、回復術師ですね。では登録致します。こちらの用紙にギルドの説明が書かれているので待っている間にお読みください。分からないことがあれば質問してくださいね。」
まあ、後衛職ならこんな格好でも…。無いわね。そう思いつつ私は説明用紙を渡しギルド証を発行した。
「こちらがギルド証になります。何か質問はありますか?」
「ありがとうございます。大丈夫です。」
「はい。では頑張って冒険してきてくださいね。」
そう言って私は少女を送り出そうとした。ちょっと、いやかなり心配ではあるけれど受付嬢がこれ以上口出すものじゃないものね。
「あ、あの。パーティーを組んでくれる人を探したいんですけど、私でも組んでくれそうな人っていますか?」
少女は、この場を離れずそう言ってきた。登録したらすぐ冒険に行くって言う子が多いけどこういう事を言ってくれる子はありがたいわ。
なんでも1人で最初から出来ると過信せず、周りを頼ってくれる子。みんなこうあれば良いのにって思うんだけど、現実はなかなかそうはいかないのよね。
「ソラさんは後衛なので前衛多めのパーティーが良いですよね。そうなると…。」
私はそう考えて周りを見渡した。この子の相手をしている間にギルド内はどんどん人が増えてきているからだ。
あんまり初心者ばっかりのパーティーだとこの子を任せるには不安なのよね。ある程度経験があってそこそこ頼れて、前衛が多いパーティー…。
「あ、居たわ。クライさんたち、ちょっと良いかしら。」
私は、担当しているパーティー『漆黒の牙』のメンバーを呼んだ。この子達はもう1年半ほど冒険者をやっているパーティーだ。Bランクパーティーでリーダーのクライさんは大剣使いだ。
あとの2人も魔法剣士で、3人ともまだ20歳前の将来有望なパーティーだ。
そして私はソラさんを後衛にパーティーに加えないかと聞いてみた。パーティーを組むということはその人に命を預けるということにもなり簡単には決断できない。はずなんだけど…。
「「「組みます。」」」
なぜか即答されたわ。しかも理由を聞いたら一目惚れだとか、魔力が綺麗?だとか言ってくる。人選ミスったかしら?
まあ、本人たちが組む気な以上私が口出せることでは無いのだけれど。私はパーティー登録用紙を渡して書くように渡した。
後ろに依頼受注待ちで並んでいる人がいたため、4人には『あっちで記入してきて』と言い、一度離れてもらった。
登録用紙はパーティー名と名前、ランクを記入するだけだから1分ほどで終わるはず。でも、依頼受注の対応が終わってもなかなか戻ってこなかった。
気になって見てみると何か話し合っているようで、まだ書いてすらいないようだった。数分待つと、ようやくレインちゃんが書き始め持ってきた。
どうやらパーティー名を変更したようだ。『夕暮れの女神』ね。まあ前のパーティー名より良いと思うけど。でも、パーティー名を変更すると今までの知名度がリセットされる事になる。それはちゃんと分かってるのかしら?
まあ、それだけなら良かった。あろうことか、この子達は登録したばかりの新人をリーダーに選んでいたのだ。リーダーを押し付けるような子達じゃ無いと思いながらも、一応これで良いのか聞いてみたけど、レインちゃんは『みんなで決めたから。』と言う。パーティーで決めた事には、受付嬢は口出さない決まりだけど、さすがに言いたい。「ふざけてるの?」と。
だけど私はそれを我慢してパーティーを登録した。後からやっぱりちゃんと全員に確認するべきだったと後悔する事は知らずに。
その後、4人はそのまま狩りに行く言い、出口に向かった。まあ、あの格好だし近場で薬草採取くらいしかしないわよね。
そう思いつつも私は心配で、出て行く4人を最後まで目で追っていた。
すると私は、今日登録した少女、ソラさんの後ろ姿を見ていると、ある懐かしい光景を思い出した。彼女と同じ赤い髪の私の親友を、毎日のように送り出していたあの光景を。
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