誰かこいつを首にしろ
誰かこいつを首にしろ
「チョコバット」と言う、くじ付きの駄菓子がある。
子供の頃から何度となく食べてきた、実にうまい駄菓子だ。
サクサクしっとりとした安いパン生地に、安い準チョココーティング。この安さのハーモニーがたまらなく、高級チョコのゴディバや日本のロイズを買うくらいなら、同額のチョコバットを買い占めたくなるくらいだ。
製造販売のサンリツ、最高だ。
大体チョコを買う時は必ずチョコバット換算で、このチョコは5チョコバットか、などと計算している・・・と言うのはウソなので撤回する。
だが、それくらいの価値を、このチョコバットに認めているのだ。
で、そのチョコバットは個包装されていて、そこに素敵な笑顔のチョコバット君が印刷されている。
その帽子にはSマークがついていて、おそらくサンリツのSでサンリツチームと言うのを表しているのだろう。
チョコバット君というだけあって、ジャストミートしたその瞬間の、心にくいパッケージである。
・・・ジャストミート?
そう言えば、これだけチョコバットを買い食べ続けてきたのに、ジャストミート=ホームランに当たった記憶は一度だけ。
ヒットを合わせても、片手に満たない。
チョコバット君、いや、こいつの打率はいくつなんだ?
プロ野球で三割と言えば、大きな数字である。
だから三割は、ないだろう。
だが、チョコバットと言う商品の顔を張るのだ。そんじょそこらの打率で得意満面な顔をされても困る。
が、いくら論じてみても、机上の空論、犬の遠吠えのようなもの。
実際に調べねばならない。
そこで一箱(六十本入り)を買ってきた。
一日一本を食べるとして二ヶ月、なんて幸せなんだ。いや、そんな話ではない。
これはあくまでも打率調査だ。
一日目
第一打席 アウト 一打数0安打
まあ、最初はこんなものだろう。
二日目
第二打席 アウト 二打数0安打
三日目・・・四日目・・・十日目・・・いい加減、ヒットくらい打てよ。
と、いいながら出続けるアウトに、だんだんと気持ち良さを感じてきてしまう。
チョコバットの美味さに、惑わされているのか!?
かくして結果は
六十二打数 一ヒット 一ホームラン
0割三分二厘二毛
そりゃないやろ!
会社の野球チームとしても、ひどすぎる。
こんな低成績でも頑張っているという、逆メッセージか?
しかし、会社の商品の顔が、こんな成績でいいはずがない!
いかん、感情的になってきた。
ここは冷静になろう。
仮にチョコバット君の努力が足りないとしても、ヤツに罪はないだろう。
アイツは頑張ってあの成績なのだ。
では罪は誰にあるのか。
チョコバットという、うまい駄菓子にあぐらをかき、一割すら打てん奴を商品の顔として使い続けている監督、即ち会社社長だ!
あんなヤツを使い続けるな!
罪はあんただ、社長!
誰か社長を首にしろ。
好き勝手な事を言ったところで、ふと、チョコバットの箱の絵に目がとまった。
チョコバット君がバットを構え、にへらっと笑っていた。
まるで、この商品を買う者をあざ笑うかのように。
・・・・
誰かこいつもクビにしろっ!