21.
悪循環を断ち切るために店を畳むことを考えたフリードは、ミーナとカリーナを事務所の部屋に呼んだ。そうして、彼女たちを前に緊張の面持ちで口を開いた。
「今までご苦労様。その……なんだな……」
「「どうなされたのですか?」」
「同時に言うなよ。あのな……今まで一杯働いてくれたお返しをしたいんだが、何が欲しい?」
カリーナがミーナの方を向き、それに気づいたミーナがカリーナの方を向いて、互いに顔を見合わせたまま動かない。
「指輪か? ネックレスか?」
振り向いたミーナが首を横に振ってから、彼の目を見つめて答える。
「どうして、フリード様は品物で感謝を伝えようとなさるのですか?」
「いや、それが習わしだからだ」
「習わしでいただく物なら要りません。フリード様の感謝のお言葉だけで、他には何も要りません」
急に視界が滲んできた彼は、「……今までありがとう」と二人に伝えて頭を深く下げた。
カリーナも振り向く。
「それだけでございますか?」
「何、お前は品物が欲しいのか?」
「いえ、わたくしも習わしでいただく物なら要りません」
両肘を机に突いて組んだ手の上に額を乗せたフリードは、吐息を漏らす。
「お前たちの言葉を聞いていると、つくづく人間が物に執着していることがわかるよ。有形無形にかかわらず、相手が欲しいものを贈るべきだな。それが何かを知らない俺は、お前たちを知らないことになる。それを暴露したようなものだ」
ミーナが一歩前に出た。
「ご自分をそんなに責めないでくださいませ」
カリーナも一歩前に出た。
「そうでございます。わたくしたちには、物に対する執着がございません」
「いいって、いいって。店主のつまらない独り言だ、と聞き流してくれ。あっ、そうそう、カリーナ。さっき『それだけでございますか?』って言ったろ? どういう意味だ?」
「申し訳ございません。お客様を待たせておりますので、早く戻りたいのでございます」
「そういう意味か。わかった。用件は以上だ」
結局、閉店のことは伝えられなかった。




