18.
その日の夕方、フリードはうなだれながら娯楽施設へ向かった。
今日はいつもの階層でがむしゃらに働き、金貨5枚を手にした。儲けた金貨の3枚を服の裏に隠して2枚を母親に見せたが、献上した金額を差し引いてもたんまりある。
それならウキウキして歩いていそうだが、借金返済をしたら今日は一切遊べない。なので、自然と足取りが重くなる。
「銀貨を何枚か隠して、あいつとあいつには『また今度な』と言おうか? ……いや、借金を返さずに遊んでいては、金を持っているとバレるよな」
そんな姑息な手段を考えながら建物の角を右に曲がると、前方に同じ方向を歩く五人の後ろ姿が見えてきた。
十日ぶりに会う仲間だ。フリードはギクッとして歩みを止めた。
彼らは何やら話が盛り上がっているらしく、時折笑い声を上げる。何がそんなに面白いのか、気になるフリードは忍び足で距離を詰めて聞き耳を立てた。
「そういえばよう、フリードの奴、ここんとこ来ねえな」
「魔獣にやられて寝ているって聞いたぜ」
「俺も聞いた。なんでも、死にかけたとか」
「おいおい、金づるに死なれちゃ困るぜ」
「そうだ。ただ酒が飲めなくなる」
「「「ハハハッ」」」
フリードの足は、道路に突き刺さった杭のように動かなくなった。
背筋が凍る。その直後、憤然として拳を固く握りしめた。
――ミーナの言う通りだった。
奴らは、仲間でも何でもない。自分がばらまく金やおごりにたかるハエのような連中だったのだ。
急に、遊びの熱が冷めた。でも、借金は返さないといけない。
「一気に返してやる。その分は持って来たからな」
フリードが娯楽施設の中に入ると、彼を発見した仲間たちが驚いたような顔をしたが、すぐに拍手をして復帰を祝福する。手招きして椅子を勧める。賭けを誘ってくる。
その全てが、空々しい。熱気すら、うすら寒く感じる。
フリードは、元仲間へ無愛想に借金を返済すると、無言で踵を返した。
その態度があからさまだったので、周囲の冷たい視線が体中を射るも、ドアを乱暴に閉めてそれらを強制的に遮断した。




