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16.

 ルナは、長い木の枝を杖代わりにして足を引きずりながら帰ってきた息子の姿に仰天し、魔物に引き裂かれた左袖や左裾に滲む血液の量に息を飲み、右往左往する。


 頼りになるのは、冷静な二人のオートマタたち――ミーナとカリーナだった。


 ミーナが医者を呼んで治療をしてもらったが、藪医者だったらしく、フリードは傷口が膿んで全身に毒が回り、高熱に苦しんだ。


 カリーナは店番を手伝うので何度も中座したが、ミーナは彼につきっきりで額を冷やし、体の汗を拭いてやる。


「なあ、ミーナ。お前の手って冷たいけど、金属みたいな冷たさではなく、それよりはほんのり温かいのだな」


 額に触れたミーナの手に目をやったフリードは、弱々しい声でそう言った。


「前に腕をつかんだとき、お気づきになられませんでしたか?」


「痛いだけで、ここまで温かいとは気づかなかった」


 フリードが微笑むと、ミーナは首を傾げた。


「わたくしは魔力を動力にしておりますが、動くと中の熱が表面に伝わるのだと思います」


「理屈はいい。……でも、なんだかホッとする」


「どうしてでしょうか?」


「金属じゃなくて、冷たい手をした人間みたいだからさ」


「――?」


「この国の格言にもあるだろう? 『手の冷たい者は、心が温かい』と」


「そうおっしゃていただけると、とても嬉しいです」


 ミーナが微笑んだ。フリードは、それが一輪の花に思えた。


 心の中に熱い物が流れる。


 ジワッと涙が浮かぶ。


 フリードは、その涙を悟られないように目を閉じた。

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