episode.3 王都へ
少し修正と書き足しをしました。
「カレン·ヒジリです。よろしくお願いしますレナードさん。」
響きからして名前がレナードであると、カレンは推測した。
それと同時にこの世界では名前を先に、苗字を後に言うのであることが分かったので、それに合わせた。
自己紹介を終えるとニ人は王都のほうへ歩きだした。
「レナードでいいですよ。それから敬語でなくとも大丈夫ですから。」
「分かったわ、レナード。私のこともカレンでいいわ。あなたも無理をして少し大げさに紳士的な振る舞うのと敬語は使わなくて大丈夫よ。」
レナードは立ち止まり、一瞬目を見開いて驚いた。
「まいったな……初対面だから敬語はまだしも少し大げさに紳士的な振る舞いをしていたのが素でないことが分かっていたのか?」
「ええ、なんとなく。そういうことを見抜くのは得意なの。」
レナードは、思わす笑ってしまった。
一方、カレンはなぜレナードが笑っているのか分からずにいた。
さっきまでの少し大げな振る舞いはしなくなったが、どことなく優雅な雰囲気が漂っている。
素は、貴族というよりは平民に近いような感じた。
「いや、すまない。気にしないでくれ。それにしても“ヒジリ”なんて変わった響きの家名だな。お前の世界の家名は全てそういう響きなのか?」
「そうでもないわ。国ごとで言語が違うから、当然響きも違ってくるでしょう?」
「お前の世界は、国ごとで言葉が違うのか?」
意外なところで驚かれたので、カレンも驚いてしまった。
この世界では、国ごとで言葉が違うのが異様――――つまり、全ての国で共通の言語を使っているのだ。
「私としては、国ごとで言葉が違わないほうが不思議なのだけど。」
「もともとこの世界にあるすべての国は一つだったからな。その名残だ。」
レナードの話によるとこの世界の人間は先天的に魔力をもっており、魔法で人類は発展を遂げたという。
はるかなる昔、元々この世界すべてが一つの国だったらしいが、当然意見が合わなかったりいざこざがある為、複数の国に分離してしまったらしい。
その一つが、今カレンがいるコーンウォール王国だ。
「――というわけだが、お前の世界は違うのか?」
「私の世界では人類はある場所で生まれ、それから各地へ散らばってその場所で独自に国として発展したの。ざっと190ヵ国以上あるけど。」
「ひゃっ…190!!そんなにあるのか……この世界にある国は20ヶ国だぞ。」
「20ヶ国……その数だと昔みたいに一つの国にまとめたほうがいいんじゃないかしら。」
「何回かそういう話にもなったが、広いこの世界を一つの国としてまとめ上げるのは大変だという結論になったんだ。だが、文化こそ違うが国同士の結束は強いぞ。」
そんなこんなで話をしながら歩いていると、数分後に王都の外壁に着いた。
高さは20メートル、いやもっとあるかもしれない。
門の入り口には警備兵と思わしき人たちが立っている。
「彼女は私の連れです。通してもらっていいですね?」
「これはこれはレナード様、もちろんです。貴方様のお連れ様でしたら。」
警備兵はレナードに敬礼をすると、門を開かせた。
それから二人は王都の中へ足を踏み入れた。
王都はというと城壁近くには店がたくさんあり、賑わっていた。
もっとも、カレンはこの世界の字が読めないので、どれがなんの店だかさっぱり分からなかったが。
「王都には城壁近くと海辺近くに商業区、王城近くに貴族の屋敷が並ぶ貴族住宅街があり、その他は一般庶民の家が並んでいる。」
「へぇ、そうなの……」
まるでおとぎ話にでも出てきそうなヨーロッパ風の町並みに
カレンは目を奪われていた。
夜にも関わらず、昼のような活気を持つあたり、さすがは国の中心地といったところだろう。
「少し寄り道をするぞ。」
「?」
レナードが指を指した先は店、ということは分かるがカレンは字が読めないのでなんの店かは分からなかった。
中に入ると靴がたくさん置いてあったので靴屋だと分かった。
「さあ、好きなのを選んでくれ。いつまでも裸足のままはきついだろう。」
「あ……」
カレンはこの世界に飛ばされる前は部屋の中だったので、当然裸足だ。
色々ありすぎて、そこまで頭がまわらなかった。
たくさん種類がありすぎて迷ったカレンだったが、今着ているワンピースに似合いそうな先に青いバラがついている白の靴を選んだ。
「なんだかごめんなさい。靴まで買ってもらっちゃって。」
「いや、女の子にいつまでも裸足で歩かせては、紳士の名折れだからな。」
二人はそのまま進んでいき、たくさん屋敷が並んでいる住宅街までやってきた。
並んでいるのは、先程まであった庶民的な家とは格段に違う大豪邸だ。
「ここは貴族住宅街だ。俺もここに住んでいる。」
やはりレナードは貴族だった――――立ち振る舞いからして育ちがいいというのはカレンも分かっていたが。
「あ、それともう一つ聞きたいことがあるの。貴族住宅街に住んでるということは当然貴族なのだろうけど警備兵の人達にあれだけ優遇されてるってことは相当身分は上ということになるの?」
「ああ、実は父親が公爵で……お、着いたぞ。」