〜プロローグ〜
大幅に変更しました。
静寂が支配する夜――――森の動物達も、街の住民達も夢の世界へといる時間帯だ。
そんな中、山の中を肺が潰れそうな感覚に陥りながら駆けていく“彼女”がいた。
“彼女”は若干ふらついており、手を当てている腹部は深紅に染まっていた。
少し鉄の臭いのする深紅の液体が、その腹部から落ちていた。
そんな“彼女”を嘲笑うかのように、夜空には不気味な満月が光を放っていた。
山の頂上まで来ると、そこにある一際大きな木に手をついて、呼吸を整えようとした。
しかし、そんな暇はなかった。
背筋が凍ついてしまいそうな気配を感じ取ると、“彼女”を追いかけていた“彼”がすぐそこまで迫っていた。
“彼”はずっと笑顔を絶やさず、かえって不気味だった。
“彼女”は意識が朦朧としかけている中、渾身の一撃とばかりに魔法を放った。
“彼”の上と前後左右を囲むように無数の氷の弾丸が現れ、“彼”を襲った。
しかし、“彼”に届くほんの少し手前で氷は砕け散った。
“彼女”は“彼”の圧倒的な魔力に届かないことに絶望した。
今の“彼女”では到底かなう相手ではなかった。
転移魔法を使っても、1秒もあればすぐに追いつかれるだろう。
この世界に、自分の逃げ場はないと確信した。
ならば、答えは一つだった。
“彼”の目的は、“彼女”以外の何者でもない。
それを、“彼女”は一番よく知っていた。
奥の手の魔法を放ち、“彼”の魔力を半分にまで削った。
それでも、“彼女”では到底“彼”に及ばない。
そこで発動した魔法が、“異世界へと渡る魔法”だ。
魔法書で一度見て、知識として頭の片隅に記憶していた魔法を使う時が来るとは、“彼女”も夢にも思っていなかった。
どこへ飛ばされるか分からないが、かえってそれが“彼”が追って来れないことへと繋がるのだ。
不安を抱えながらも、“彼女”は異世界へと向かって行った。
まだプロローグなのでなんじゃこりゃ?と思った方といるも思います。物語を進めていくうちにこのとき何が起こったのか、そして「彼女」「彼」の正体が誰なのか分かってきます。
最後まで読んでくださると嬉しいです。